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年末調整電子化

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年末調整電子化

あゆみ:今年も保険会社から控除証明書が届いたわ。ということはもう年末調整の準備をする時期ね。

ケン:そうですね。もうそういう時期になりましたね。
   ところで、年末調整は昨年から紙媒体ではなく、データで従業員から提出してもらうと検算が不要など会社側にとってもメリットがある「電子化」が始まっているのです。

あゆみ:何それ?ちょっと詳しく教えて。

ケン:年末調整は、
①従業員に「扶養控除申告書」、「保険料控除申告書」と「基礎控除申告書」等を紙で渡し、従業員はそれに必要事項を記入して会社に提出する
②会社はその紙で提出された申告書を手打ちで給与ソフト等に入力する
という方法で行っていました。
年末調整の電子化とは、
  ①従業員は、会社から送られた「扶養控除申告書」と「基礎控除申告書」等のデータに必要事項を入力し、保険会社や金融機関のホームページからダウンロードした控除証明書の電子データを会社に提出
  ②会社は従業員から提出された電子データを「年末調整ソフト」等にアップロードして年末調整を行う
ことを言います。

あゆみ:この「年末調整の電子化」は必ずしなきゃいけないの?

ケン:いいえ、この「年末調整の電子化」はその会社の任意です。今まで通り書面でのやり取りでも構いません。

従業員の準備

あゆみ:ということは、会社が単にそれに合わせたソフトを入手すればいいだけじゃなくて従業員もそれに合わせたソフトを入手しなきゃいけないってことよね?

ケン:おっしゃる通りです。
ですから従業員への周知が必要となります。

あゆみ:従業員は具体的にどうすればいいの?

ケン:従業員がすることは次の2つです。
  ①保険会社や金融機関のホームページにある「お客様ページ」にアクセスして控除証明書をダウンロードします。保険会社や金融機関が複数ある場合は複数回行います。
  ②年末調整ソフト等を入手して、「扶養控除申告書」や「基礎控除申告書」などのデータを入力して、控除証明書のデータとともに会社に提出します。

あゆみ:保険会社や金融機関が複数ある場合は何回もやらなきゃいけないから面倒ね。

ケン:マイナポータル連携を利用すれば一括取得ができます。
   マイナンバーカードの読み込みが必要ですから、マイナンバーカードの他にICカードリーダライタを用意いただかなければなりません。また、マイナポータルの開設も必要です。

あゆみ:最初に手間をかけるか、あとに手間をかけるか、どっちかってことね。

ケン:そうですね。どちらかの手間はかかります。また、ICカードリーダライタの入手にはお金もかかりますので、どちらがいいかはご自身で判断いただくことになります。

会社の準備

あゆみ:会社側は年末調整のソフトが電子化に対応できていればいいのかな?

ケン:それだけではありません。
   会社側の対応は
    ①「年末調整の電子化」に対応した給与システムのバージョンアップ
    ②「年末調整の電子化」の実施方法の検討
    ③従業員への周知
   が必要です。
   ①については、国税庁のホームページから「年末調整ソフト」という無料ソフトがダウンロードできるようになっています。もちろん、今ご利用の給与ソフトを改修してご使用いただいても結構です。従業員は「年末調整ソフト」を利用してもらい、会社側は給与ソフトを利用する場合には、その給与ソフトが「年末調整ソフト」の出力データに対応している必要がありますので、ご注意ください。
   ②については、電子化後の年末調整について、事務手順の見直しをする必要があります。
   ③については、従業員がどのような手続きで控除証明書等を入手できるのかなど、知っておく必要があります。場合によっては、そのための研修会などを開催することが必要となるかもしれません。

あゆみ:会社の方はこちらで決めるからいいとして、とにかく従業員の手続きよね。
家にPCがないとか、ICカードリーダライタがないとかいろいろありそう。

ケン:そうですね。例えば、会社に年末調整用のPCを1台用意して、従業員にはそれを利用して電子データを取得して会社にメールにて提出してもらう方法も考えられます。マイナポータルを利用する場合も同様です。ICカードリーダライタを会社で用意すれば従業員本人は用意する必要はありません。ただし、マイナポータルを利用する際にIDとパスワードを残さない、などのセキュリティにはご注意ください。

年末調整の電子化のメリット・デメリット

あゆみ:「年末調整の電子化」をするメリットって何?

ケン:従業員側のメリットは、
    ①「扶養控除申告書」などを手書きしなくてよい
    ②「保険料控除証明書」の控除額の計算をしなくてよい
    ③電子データをメールで送信する場合には、書類を印刷しなくてよい
などがあります。
   会社側のメリットは、
    ①控除額の検算が不要
    ②控除証明書の確認が不要
    ③書類の保管が不要
などがあります。

あゆみ:そうか、会社側は書類の保管も不要になるわけね。
    デメリットはあるの?

ケン:デメリットは、
①導入する初年度に従業員への周知に手間がかかる
②マイナポータルを利用する場合にICカードリーダライタを準備しなければならない
ことが挙げられます。
メリットの方が大きいと思われますので、是非導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

執筆者情報

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清水 透

清水透税理士事務所 所長 税理士(登録番号104689)

平成18年2月税理士登録
大手税理士事務所に勤務しつつ、平成25年4月~平成28年1月の間みずほ銀行に出向。
平成28年2月独立開業
法人税・消費税・所得税・相続税の申告業務の中でも、法人オーナーに対する相続税約1億円を節税する株式承継の提案や個人の不動産オーナーに対する相続税約5,000万円を節税する提案などの経験。
また税制改正や事業承継の全国でのセミナー、全国のお客様に対し法人の株式承継対策や個人の方々の相続税対策の提案に毎日奔走中。
「気がつけばあなたも相続税?」2011.9(共著)出版
協力:株式会社実務経営サービス
https://www.jkeiei.co.jp/

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あゆみ:今年も保険会社から控除証明書が届いたわ。ということはもう年末調整の準備をする時期ね。ケン:そうですね。もうそういう時期になりましたね。   ところで、年末調整は昨年から紙媒体ではなく、データで従業員から提出してもらうと検算が不要など会社側にとってもメリットがある「電子化」が始まっているのです。あゆみ:何それ?ちょっと詳しく教えて。ケン:年末調整は、①従業員に「扶養控除申告書」、「保険料控除申告書」と「基礎控除申告書」等を紙で渡し、従業員はそれに必要事項を記入して会社に提出する②会社はその紙で提出された申告書を手打ちで給与ソフト等に入力するという方法で行っていました。年末調整の電子化とは、  ①従業員は、会社から送られた「扶養控除申告書」と「基礎控除申告書」等のデータに必要事項を入力し、保険会社や金融機関のホームページからダウンロードした控除証明書の電子データを会社に提出  ②会社は従業員から提出された電子データを「年末調整ソフト」等にアップロードして年末調整を行うことを言います。あゆみ:この「年末調整の電子化」は必ずしなきゃいけないの?ケン:いいえ、この「年末調整の電子化」はその会社の任意です。今まで通り書面でのやり取りでも構いません。
2021.10.19 16:41:32