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質問検査権に基づいた調査と行政指導の違い

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Q、
 国税当局の職員が納税者等に接触するときは、ほぼ税務調査と思っていましたが、行政指導もあると聞きました。それぞれの違いについて教えてください。


A、
 事務運営指針には「納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行うこと」とされています。
では、税務調査と行政指導の違いですが、
税務調査は、国税通則法に明記された「当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権」から「当該職員の航空機燃料税等に関する調査に係る質問検査権」までに掲げる税目について、納税者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で税務職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)とされています。つまり、更正決定等を目的とする一連の行為です。このほか、再調査の請求や申請等の審査のために行う一連の行為も含まれます。
 一方で、行政指導は、簡単に言ってしまえば「調査に該当しない行為」。税務調査と違い、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないもの(とどまるもの)とされています。
また、これらの行為のみに起因して修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は源泉徴収に係る所得税の自主納付があった場合には、当該修正申告書等の提出等は更正若しくは決定又は納税の告知があるべきことを予知してなされたものには当たらないとされています。
具体的には、
(1) 提出された納税申告書の自発的な見直しを要請する行為で、次に掲げるもの。
  イ 提出された納税申告書に法令により添付すべきものとされている書類が添付されていない場合において、納税義務者に対して当該書類の自発的な提出を要請する行為。
  ロ 当該職員が保有している情報又は提出された納税申告書の検算その他の形式的な審査の結果に照らして、提出された納税申告書に計算誤り、転記誤り又は記載漏れ等があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。
(2) 提出された納税申告書の記載事項の審査の結果に照らして、当該記載事項につき税法の適用誤りがあるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して、適用誤りの有無を確認するために必要な基礎的情報の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。
(3) 納税申告書の提出がないため納税申告書の提出義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(事業活動の有無等)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて納税申告書の自発的な提出を要請する行為。
(4) 当該職員が保有している情報又は提出された所得税徴収高計算書の記載事項の確認の結果に照らして、源泉徴収税額の納税額に過不足徴収額があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して源泉徴収額の自主納付等を要請する行為。
(5) 源泉徴収に係る所得税に関して源泉徴収義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(源泉徴収の対象となる所得の支払の有無)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて源泉徴収税額の自主納付を要請する行為。

 税務調査か行政指導なのかの違いは、納税義務者の権利義務、即ち、法定化された調査手続及び申告又は納付義務違反に対して課される加算税等とも密接に係る重要な区分です。国税当局の行為が「調査」なのか「行政指導」なのか、いずれに該当するのか意識して対応していくことは重要です。そのため、国税当局から電話があった場合、必ず「調査ですか」「行政指導ですか」と確認しましょう。

執筆者情報

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執筆:一般社団法人租税調査研究会
監修:代表理事 武田恒男税理士

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Q、 国税当局の職員が納税者等に接触するときは、ほぼ税務調査と思っていましたが、行政指導もあると聞きました。それぞれの違いについて教えてください。A、 事務運営指針には「納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行うこと」とされています。では、税務調査と行政指導の違いですが、税務調査は、国税通則法に明記された「当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権」から「当該職員の航空機燃料税等に関する調査に係る質問検査権」までに掲げる税目について、納税者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で税務職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)とされています。つまり、更正決定等を目的とする一連の行為です。このほか、再調査の請求や申請等の審査のために行う一連の行為も含まれます。 一方で、行政指導は、簡単に言ってしまえば「調査に該当しない行為」。税務調査と違い、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないもの(とどまるもの)とされています。また、これらの行為のみに起因して修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は源泉徴収に係る所得税の自主納付があった場合には、当該修正申告書等の提出等は更正若しくは決定又は納税の告知があるべきことを予知してなされたものには当たらないとされています。具体的には、(1) 提出された納税申告書の自発的な見直しを要請する行為で、次に掲げるもの。  イ 提出された納税申告書に法令により添付すべきものとされている書類が添付されていない場合において、納税義務者に対して当該書類の自発的な提出を要請する行為。  ロ 当該職員が保有している情報又は提出された納税申告書の検算その他の形式的な審査の結果に照らして、提出された納税申告書に計算誤り、転記誤り又は記載漏れ等があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。(2) 提出された納税申告書の記載事項の審査の結果に照らして、当該記載事項につき税法の適用誤りがあるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して、適用誤りの有無を確認するために必要な基礎的情報の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。(3) 納税申告書の提出がないため納税申告書の提出義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(事業活動の有無等)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて納税申告書の自発的な提出を要請する行為。(4) 当該職員が保有している情報又は提出された所得税徴収高計算書の記載事項の確認の結果に照らして、源泉徴収税額の納税額に過不足徴収額があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して源泉徴収額の自主納付等を要請する行為。(5) 源泉徴収に係る所得税に関して源泉徴収義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(源泉徴収の対象となる所得の支払の有無)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて源泉徴収税額の自主納付を要請する行為。 税務調査か行政指導なのかの違いは、納税義務者の権利義務、即ち、法定化された調査手続及び申告又は納付義務違反に対して課される加算税等とも密接に係る重要な区分です。国税当局の行為が「調査」なのか「行政指導」なのか、いずれに該当するのか意識して対応していくことは重要です。そのため、国税当局から電話があった場合、必ず「調査ですか」「行政指導ですか」と確認しましょう。
2021.09.09 16:25:10