電子取引データの保存について教えて下さい!
リエ「黒田さん、以前電子帳簿保存法の改正について伺った際に、電子取引に係る取引情報を電子データで入手した場合は、紙に印刷して保管する方法が認められなくなるとおっしゃっていましたよね。」
黒田「はい、令和4年1月1日以降に行った電子取引に係るものから電子データでの保管が必須となります。」
リエ「その関係でいくつか伺いたいことがあります。まず当社で行われている電子取引の状況を調査したところ、ネットショップでの備品等の購入、メール添付の請求書を受領することがたまにあるということでした。ただ当社はネットバンクを利用していますので、入出金明細や振込の控えは現状紙に印刷して保管しています。このネットバンクに関する書類も電子取引に係る取引情報になるのでしょうか。」
黒田「ネットバンクは銀行とのEDI取引に該当するそうですので、振込の控は電子取引に係る取引情報になると思います。また紙の通帳がない場合は入出金明細も同様でしょう。」
リエ「当社は全ての口座で紙の通帳はありますので、入出金明細は気にしなくてもよさそうですが、ネットバンクによる取引先への振込は日常的に行っています。これらについてはどうしたらいいのでしょうか。」
黒田「ネットバンクによる振込の控等の取引情報については現在公開されている情報にも見当たらないため、推測での話になります。その点はご了承ください。」
リエ「わかりました。」
黒田「先ほど申し上げたようにネットバンクは銀行とのEDI取引になりますので、銀行のネットバンクサイトで(1)取引情報が原則7年間保存されていること、(2)そのネットバンクサイト内の情報を訂正・削除することが不可能であること、(3)そのネットバンクシステムの概要情報が紙又はサイト上で備え付けられていること、(4)保存期間中いつでも取引情報をモニターへ表示及びプリンターへ印刷できること、(5)一課税期間(原則一事業年度)単位で『取引年月日』、『取引先』、『取引金額』で検索できること、といった条件が満たされているのであれば、現状のままで問題はありません。しかし保存期間や照会期間については各銀行によって異なるようで、7年もの間それが可能なネットバンクはあまり見たことがありません。」
リエ「そうですね、当社が利用しているものでも振込の控を7年間も表示・印刷できるものはなかったと思います。」
黒田「そうなるとやはり自社で独自の方法で保存するしかないと思います。具体的には振込の控をPDFファイルにして、ファイル名に『取引年月日』、『取引先』、『取引金額』を付けて会社内のファイルサーバー等に保存しておくといった作業が必要になるのではないでしょうか。」
リエ「なるほど、○○銀行振込控といったフォルダを作って、さらに事業年度ごとのフォルダも作ってそこにPDFファイルを保存すれば検索はできますね。」
黒田「はい、ただこの方法だと訂正・削除が可能になってしまうので、『電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程』が必要になります。」
リエ「その点についても伺いたかったんです。当社でタイムスタンプや訂正・削除が不可能なシステムを利用するのは現状難しいので、その規程の作成と運用をもって電子取引データの保存をすることにしようということになったのですが、ひな型みたいなものはありませんか。」
黒田「それなら国税庁のホームページにあります。『https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm』で法人用と個人事業者用のひな型が用意されています。ただ実務的にはこの規程以外にも、どの場所に、どのようなファイル形式で保存するのか、先ほど申しましたようにファイル名のルール等に関する規程も必要だと思います。」
リエ「そうなんですよね~、フォルダの体系も考えないといけませんし、思っていたよりも大変そうなので困っているんです。」
黒田「わかります。ただあくまで個人的な見解ですが、あまり完璧を求めなくてもいいと思います。まず今まで通り紙で保管しておいたうえで、データ保存のほうはとりあえずやってみて、運用上不都合なことがあればその都度対応していくといったスタンスでいいのではないでしょうか。」
リエ「でも税務調査で何か問題があったら大事になってしまいます。」
黒田「その点について保証できるわけではありませんが、法律で決まったことに全く取り組まないのは問題外ですが、真面目に取り組んでいる中で多少の不都合があったという程度で、会社にとって大きな損失となる厳しい罰則を適用するようなことは当面考え難いと思っています。」
リエ「だといいんですが……。まあとにかくやるしかないので、また相談させてください。」
黒田「引き続き情報収集をしていきますので、何かあったらお伝えします。」
リエ「よろしくお願いします。」