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DX会計事務所の作り方 その1 「DX会計事務所になるための準備・・・IT専任担当を作る」

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中小企業DX推進研究会ではDX会計事務所になるためのステップとして5つの工程を提唱しています。今回は、そのステップ1を一緒に学んでいきましょう。

【DXの準備】

 DX会計事務所になるために最初に行う準備が「IT専任担当を作る」事です。DXを推進するためにはITの活用を徹底する必要がありますが、期日のある通常業務を抱える会計の担当者が同時にDXを推進することは、適正のあるなしでは無く割ける時間が無い点において厳しいと言えます。その為、DX会計事務所へ変革するためには、IT専任担当を事務所の中に作る事を最初に行います。しかし会計担当者の育成や採用には経験はあってもIT担当に関しては、どういった人材を育成すれば良いのか、もしくは採用すれば良いのか検討がつかないという事務所が多いのではないでしょうか。
 一口にIT担当と言っても、税理士にも得意分野があるように、分類がいくつかあります。まずは、IT担当者の種類を把握して、自事務所において一番優先すべき分類を認識して育成・採用を進めていきましょう。

【IT担当の種類】

 IT担当もいくつかの種類があります。会計事務所におけるIT業務としては大きく以下の様に分類することが出来ます。
1.サポート業務
主に市販されている機器やソフトウエアの運用に関するサポートを行う業務になります。DXの推進においては市販されているITツールや機器の活用が重要ですので、一番最初に求められる部分になります。更に細か区分すれば、ハードウエア(危機のトラブル対応)とソフトウエア(会計ソフトやExcel、クラウドソフトなどの使い方対応)に分類することが出来ます。
2.インフラ整備
パソコンや複合機等の機器の導入・設置・設定を行ったり、ネットワークの導入・設置・設定を行う業務になります。外部の業者に委託する事でも対応可能ですが、規模が大きくなるにつれて内製化出来た方が効率が上がります。
3.開発
業務効率を上げるために、業務で使うツールを開発するプログラム業務になります。通常は市販されているソフトやツールを使用しますが、より自社の業務にあったツールを作成することで業務効率を上げることが可能になります。顧問先用にツールを開発することで新しい売上を作る事も出来ます。
4.WEBエンジニア
自社のホームページの作成や、上記開発とも一部被りますが専用のWEBツールの作成を行う業務になります。ホームページは外注することも多いと思いますが、内製化することでタイムリーな情報発信が可能となり、マーケティングが強力になります。
5.全体設計
上記の1〜4までに関して幅広く知識を持つことで、どのようなシステムを導入してどう運用するか、全体の設計を出来る様になります。一般的にはシステムエンジニアと呼ばれるシステム全体を見られる人材です。顧問先向けにもITコンサルティングが出来るなど、DX人材としての最終形とも言えます。一番欲しいタイプの人材ですが、最初から見つけることが一番難しい分類でもあるので、見つかればラッキーというぐらいで、まずは1〜4の分類で自事務所に必要な人材を育成・採用していく事になります。

【IT担当者の採用】

 では、IT担当者をどのように採用すれば良いのでしょうか。
 一番最初に考えるのは、現在の職員の中からITが得意な人をIT専任担当に任命することです。IT担当の分類にあったサポート業務を最初のステップに、既存の職員から登用するのが一番の近道になります。ただし、その場合は既存の会計業務とは完全に分離してあげる必要があります。担当件数を0件にして、新しく任せるIT業務にだけ専念する形をとります。
 新たに採用する場合は、IT業界からの転職者を探すことになります。IT系の人材の採用には、Indeedやビズリーチなど、クラウドの求人ツールを活用する方が、ハローワークを利用するよりもIT系の人材が見つけやすい傾向があります。この際も、IT担当の業務分類を意識して、必要な人材像を記載しておく必要があります。
 IT業界からの転職採用は人件費が希望と合わない場合もあります。その場合は新卒で採用して育成する事も視野に入れて下さい。即戦力とはいかないとは思いますが、最初からIT担当として採用することで、会計業務と兼務するよりも早くIT担当として育成ができます。

【IT担当者の育成】

 IT担当者を採用したら即戦力となれば良いですが、ITの知識を学んだり場合によっては会計の知識を学ばなければならない事も多いと思います。まずは、IT担当には会計業務をさせない事を意識して下さい。会計業務をしている方からするとIT担当の業務は「何をしているか分からない」と言われる事があります。業務種類が異なるので、一見すると何の仕事をしているかわかりにくく、「手が空いているなら会計業務の手伝いを」と考えてしまい、他の職員と同じ業務を依頼してしまいそうになります。その時は、あえてIT担当に同じ会計業務をさせるのでは無く、IT担当としての業務に注力させてあげる必要があります。ここがIT担当を採用した際に一番最初に気をつける点です。
 次に、IT業界から転職者や新卒での採用の場合、会計に関しての知識や業務に関する知識が少ないことが考えられます。IT担当者は、会計の実務が分かっている人とチームを組むことで、足りない会計や業務の知識を補うことが出来ます。1人放置するのでは無く、『実務が分かる人とチームを組む』事が重要です。また、このときに経営者も一緒に関わり、『経営・実務・IT』の3人チームで取り組むようにすると、『お金の判断・業務の判断・システムの判断』を適切に分担することが出来る様になるので理想的です。
 最後にIT専任担当を採用した際は、業務種類が違うので繁忙期も異なることを社内で意識できるようにします。会計事務所にとっての閑散期はIT担当とすれば繁忙期です。会計業務の閑散期にシステム導入を進めることで会計事務所の繁忙期の業務を効率よく進められる準備を行います。また、システムの導入や設定は利用者がいない時間帯に行う事も少なくありません。勤務時間の柔軟な対応等も必要となってきます。その為、同じ社内でも業務種類が違えば繁忙期が違うことを社員同士が認識し、「こっちは忙しいのに!」という感情を互いが持たずに尊重し合える体制を気づくことが大切になります。

以上、今回はDX会計事務所になるための最初のステップとして「DX会計事務所になるための準備・・・IT専任担当を作る」をお届けしました。IT専任担当を作って、DX会計事務所になるための準備を進めましょう!!

執筆者情報

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山口 高志

中小企業DX推進研究会
会長

2005年アイクスグループ (現 セブンセンスグループ) 入社。システムありきではなく「運用すること」を重視し、現場にマッチした仕組みを提案・構築し、高い存在感を示している。シンクライアントシステム、ペーパーレスシステムなどのシステム構築と運用に携わるとともに、会計事務所のシステム導入サポート、コンサルティングも行っている。
【中小企業DX推進研究会とは】
中小企業の課題解決と経営革新に役立つDXの推進のための、会計事 務所を中心とする研究会。
すべての中小企業でのDX実現のために、その成功事例や推進手法を研究し、会計事務所を通じてその情報を発信し続けます。

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