DX会計事務所の作り方 プロローグ「DX会計事務所とは」
「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」という言葉を目にする機会が増えています。DXとは『ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念です。
日本におけるDXは2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、『DXレポート』としてまとめられています。また2020年には新型コロナウイルスによる社会への影響を踏まえ「DXレポート2」がまとめられました。
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html
その中のDXの定義を抜粋すると、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、
データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に
製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、
競争上の優位性を確立すること」
と定義されています。
要約すると
1.デジタル技術を活用して【データ】を収集する
2.データを活用して顧客や社会の【ニーズ】をつかむ
3.ニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを【変革】する
の3点がDXの定義と言えます。
『ビジネスにおける価値創出の源泉はデジタルの領域に移行しつつある』とDXレポートでもまとめられており、顧問先のみならず会計事務所自身にもDXの必要性が迫られています。
では、会計事務所におけるDXとはどんな定義でしょうか。中小企業DX推進研究会では「DX会計事務所」を以下の様に定義しています。
【DX会計事務所とは情報加工業である】
会計事務所では、お客様が自計化で会計データを作成している場合も、記帳代行で会計データの入力を請け負っている場合でも、「会計ソフト」というデータの入れ物にデータを収集しています。そのデータを基に、税務申告書を作成したり経営計画を作成するわけですが、この収集に多くの時間を割いているのが従来型の会計事務所です。自計化により会計事務所で入力作業を行っていない場合でも、顧問先でのデータ入力・収集がタイムリーに共有出来ていない為、データ加工にかける時間が少ない場面も少なくありません。
DX会計事務所とは、このデータを基としたサービスに比重を大きく置けるよう、データの収集にかける時間をほぼ無くすためにデジタル技術を活用している事務所になります。
データ収集の時間を短縮するためには、FinTech・RPA・IoT・ERPといったデジタル技術の活用を会計事務所が行い、顧問先へも広げていかなければ成りません。新規で開業した会計事務所であれば、最初からデジタル技術を活用した業務フローの確立や顧問先指導も行いやすいでしょう。しかし、日々期日業務に追われる従来型会計事務所がDX事務所へシフトする事は一筋縄ではいきません。ではどのようなステップでDX事務所に変革出来るのでしょうか。中小企業DX推進研究会ではDX事務所になるためのステップとして5つの工程を提唱しています。
日々の業務に追われている中で、働き方の改革は一朝一夕で出来る事ではありませんが、一つ一つのステップに分けて進めていけば着実にDX会計事務所に近づいていきます。これからこのコラムでDX事務所になるためのステップを一緒に勉強していきましょう。