電子帳簿の保存ってできるの?
電子帳簿保存法の概要
あゆみ:最近ね、ちょっと思うんだけど、領収書とかっていつまで保存しなきゃいけないの?
ケン:消費税法上は7年保存しなければなりませんので、事実上7年ですが、法人税の欠損が生じた事業年度については10年の保存が求められています。
あゆみ:それでね、それって書類で保存しなきゃいけないのかな?って思って。
ケン:実は20年以上前から電子帳簿保存法という法律があり、この法律に基づいて電磁的記録による保存が認められています。
あゆみ:そんなに前から書類で保存しなくてよかったんだ。
ケン:はい、そうなんですが、使い勝手が悪く最近までは普及していませんでした。最近の改正により以前と比べると導入する法人が増えています。令和3年度改正により、税務署への届出が不要になるなど、要件がかなり緩和されましたので、今後も導入する法人が増えると見込まれます。
あゆみ:領収書以外にも書類じゃない保存ができるの?
ケン:対象となるものは、
①総勘定元帳などの自己がコンピュータを使用して作成する帳簿
②請求書、領収書などの自己がコンピュータを使用して作成して取引相手に交付する書類の写し
③インターネット取引などの電子取引です。
それぞれの書類で要件が定められています。
帳簿を電子保存する要件
あゆみ:「帳簿」を電子保存する保存する要件は?
ケン:「帳簿」については、「真実性」と「可視性」の確保が要件となっています。
「真実性の確保」については、
・訂正や削除の履歴が確認できること
・他の関連する帳簿との関連性が確認できること
「可視性の確保」については、税務調査の際、
・パソコンの画面上で明瞭に確認できること
・検索できることとされています。
会計ソフトが電子帳簿保存法に対応しているかどうかで判断できると思います。
書類の保存要件
あゆみ:領収等とかの保存要件は?
ケン:基本的には、スキャナで読み取った電子データの形式であれば要件を満たします。
解像度は200dpi以上、カラー画像での保存です。
この要件においては、スマホやデジカメで撮影されたものでもOKです。
この電子データにタイムスタンプを付すこととされています。
あゆみ:タイムスタンプって何?
ケン:電子データが変更されていないことを証明するスタンプです。
一般社団法人日本データ通信が認定するもので、一の入力単位ごとに付すこととなっており、以下の要件を満たすものです。
①電磁的記録が変更されていないことについて、保存期間を通じて確認することができる
②課税期間中の任意の期間を指定し、一括して検証することができる
あゆみ:タイムスタンプってことはいつまでに付さなきゃとかあるんじゃない?
ケン:仰る通りです。
現行、スキャンしてから3日以内が要件ですが、令和4年1月1日からは2か月以内となります。
電子取引を行った場合
あゆみ:今説明してくれた書類って、紙の請求書とか領収書の話でしょ?
インターネットで注文したものって、基本、紙ではないけど同じ扱い?
ケン:インターネットでの取引などを電子取引といい、「電子メールに請求書等が添付された場合」、「発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合」や「従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合」などもそれぞれの場合で保存方法と要件が定められています。
あゆみ:「電子メールに請求書等が添付された場合」の保存方法は?
ケン: 要件は2つです。
(1)請求書等が添付された電子メールそのものをサーバ等自社システムに保存する。
(2)添付された請求書等をサーバ等に保存する。
あゆみ:「発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合」の保存方法は?
ケン:PDFファイルで保存する場合とHTMLデータで保存する場合でそれぞれ要件が定められています。
(1)PDF等をダウンロードできる場合
① ウェブサイトに領収書等を保存する。
② ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する。
(2) HTMLデータで表示される場合
① ウェブサイト上に領収書を保存する。
② ウェブサイト上に表示される領収書を画面印刷(いわゆるハードコピー)し、サーバ等に保存する。
③ ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDFなど)し、サーバ等に保存する。
あゆみ:「従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合」の保存方法は?
ケン:従業員のスマートフォン等に表示される領収書データを電子メールにより送信させて、自社システムに保存します。なお、この場合にはいわゆる画面印刷、いわゆるハードコピーによる領収書の画像データでも構いません。
あゆみ:それぞれの保存要件は?
ケン:次の要件を満たすこととされています。
・見読可能装置の備付け等
・検索機能の確保
・次のいずれかの措置を行うこと
① タイムスタンプが付された後の授受
② 授受後遅滞なくタイムスタンプを付す
③ データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
④ 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
他にも、入力者等情報の確認や、適正事務所要件などがあります。
令和3年度改正
あゆみ:さっき、今年の改正で使い勝手よくなったって言ってたじゃない。
どういう風に使い勝手がよくなったの?
ケン:令和4年1月1日から税務署への事前届け出が不要となります。
令和3年12月31日までは、帳簿や書類ごとに事前申請が必要です。
そのほか、「帳簿」、「書類」と「電子取引」ごとに改正されています。
あゆみ:「帳簿」の改正項目は?
ケン:「真実性の確保」と「可視性の確保」の両方の要件を満たすと過少申告加算税が軽減されることとなりました。
これは、令和4年1月1日からはどちらか一方だけ満たすことが要件となるため、両方満たす場合の優遇措置が設けられた形となっています。
あゆみ:「書類」の改正項目は?
ケン:スキャンの検索要件等について、主に以下の3点が改正されています。
①タイムスタンプの付与期間が、3営業日以内から最長2か月へ
②入力者の確認要件について、請求書、領収書への自署が不要
③訂正や削除の履歴が確認できるときはタイムスタンプの付与に代わる
また、適正事務処理要件が廃止され、スキャナ保存に不正があった時は重加算税の加重措置が設けられました。
あゆみ:「電子取引」の改正項目は?
ケン:タイムスタンプ要件については、「書類」と同じです。
検索要件については、前々期の売上高が1,000万円以下の小規模事業者の検索要件は一定の条件を満たす場合に不要となります。
また、電子取引の場合の紙面印刷はできなくなります。
電子取引の電磁的記録に関して、仮装隠蔽があった場合は重加算税が10%加重されることとなりました。
あゆみ:今日はおなか一杯ね。
ケン:今日紹介したものは、一部なんです。お伝えしなきゃいけないことは実はまだあるのです。