高齢者の確定申告(確定申告不要制度)
【Q】
私は年金収入だけで生活しているのですが、一定額以下の公的年金だけの収入である場合は、確定申告不要制度が設けられていると聞きました。具体的には、どのような制度なのでしょうか。
【A】
●公的年金等の収入金額が400万円以下で一定の方の場合は、確定申告不要制度があります。
●所得税の還付を受けるためには、確定申告書を提出する必要があります。
[解説]
確定申告不要制度とは
公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で一定の方の場合は、年金受給者の方の申告手続きの負担を減らすために、確定申告不要制度が設けられています。
ただし、無年金者の方が確定申告または住民税申告をしていないときは、住民税未申告者の扱いとなり、不利な取扱いがありますので注意が必要です。
公的年金等の収入金額が400万円以下の方が対象
公的年金等の収入金額が400万円以下(複数から受給されている場合は、その合計額です。)で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、所得税及び復興特別所得税の確定申告をする必要はありません。
還付を受けるためには申告が必要
この場合であっても、所得税及び復興特別所得税の還付を受けるためには、確定申告書を提出する必要があります。
公的年金等に係る雑所得以外の所得があり、その所得金額が20万円以下で所得税及び復興特別所得税の確定申告の必要がない場合であっても、公的年金等に係る雑所得以外の所得があれば、20万円以下でも住民税の申告が必要です。
なお、一定の公的年金だけの収入で確定申告が不要な方でも、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金税額控除、配偶者特別控除、社会保険料控除(公的年金から引かれていない分)等については、公的年金の源泉徴収計算には反映されていませんので、確定申告をすることによってそれらの所得控除を申告し、源泉徴収されている所得税の還付を受けることができることもあります。
※ 公的年金等について所得税が源泉徴収されていない場合に、所得税の申告を行うと所得税が納税となるケースもあります。その場合、所得税の確定申告不要制度を利用し、住民税だけの申告にすることもできます。
[設例]
●令和2年分(70歳)
・公的年金等の年収:160万円(公的年金等に係る雑所得:所得税50万円、住民税40万円)
・源泉徴収税額 : 0円
・その他の雑所得 : 20万円
・医療費控除額 : 7万円
・社会保険料控除額: 10万円(うち、公的年金から控除されていない金額5万円)
|
所得税 |
住民税 |
|
---|---|---|---|
申告なし |
申告あり |
||
公的年金(雑所得) |
50万円 |
40万円 |
40万円 |
その他の雑所得 |
20万円 |
20万円 |
20万円 |
所得金額 |
70万円 |
60万円 |
60万円 |
医療費控除 |
7万円 |
|
7万円 |
社会保険料控除 |
10万円 |
5万円 |
10万円 |
基礎控除 |
48万円 |
33万円 |
33万円 |
所得控除額合計 |
65万円 |
38万円 |
50万円 |
納付税額 |
2,500円 |
22,000円 |
10,000円 |
以上の設例の場合には、所得税の確定申告は不要制度を選択し、住民税の申告だけを行うことが有利になります。
このコンテンツの内容は、令和3年1月1日現在の法令等によっています。