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会社の清算と消費税

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1 清算中の会社でも消費税の納税義務はある

 消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡および貸付けならびに役務の提供に対して課税する税金です。したがって、すでに営業活動を停止して清算事務のみを行っている会社であれば、反復・継続することが前提となる「事業として」には該当せず、消費税の納税義務はないのではないかという考え方もあるようですが、消費税法には清算会社に関する規定があり、納税義務があるとする考え方が採用されていることから、清算中の会社であっても基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、消費税の申告と納税の義務があるものと解されます。
 また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、その事業年度の前事業年度開始の日から6か月間(以下、「特定期間」といいます)の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その課税期間は納税義務があることとされますので注意が必要です。
 なお、納税義務者の選択により、特定期間における納税義務の有無の判定は、課税売上高に代えて給与等の支払合計額が1,000万円を超えているかどうかにより判定することができます。
 この特定期間ですが、1年決算法人の場合、直前期が7か月以下のときには特定期間による判定は不要となりますので、解散事業年度が7か月以下であれば、解散事業年度の翌事業年度における納税義務の判定は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかのみで判定を行います。
 さらに消費税法における中間申告の規定は、法人税法と異なり、清算中の会社においても適用されることに注意が必要です。解散によって営業活動を縮小すると、課税売上高が大幅に減少することも想定されますので、仮決算による中間申告の納税も検討しておきたいところです。

2 みなし課税期間における納税義務の判定に注意

 消費税の課税期間は、法人税法上のみなし事業年度の規定が準用されますが、清算中の会社において特に気をつけたいのは、基準期間がそのみなし事業年度に該当した場合です。
 みなし事業年度は、通常、1年未満となりますから、消費税の納税義務や簡易課税制度の選択適用の可否を判定する場合には、基準期間における課税売上高を月数按分により調整計算する必要があります。

このコンテンツの内容は、令和2年9月1日現在の法律等に基づいています。

資料提供(書誌出典)

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書名:五訂版/最新!会社清算の実務70問70答

発行日:2020年10月6日
発行元:株式会社 清文社
規格:B5判312頁
著者:ひかりアドバイザーグループ 編
ひかり監査法人 共著
ひかり税理士法人 共著
ひかり司法書士法人 共著
ひかり社会保険労務士法人 共著
ひかり戦略会計株式会社 共著

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 消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡および貸付けならびに役務の提供に対して課税する税金です。したがって、すでに営業活動を停止して清算事務のみを行っている会社であれば、反復・継続することが前提となる「事業として」には該当せず、消費税の納税義務はないのではないかという考え方もあるようですが、消費税法には清算会社に関する規定があり、納税義務があるとする考え方が採用されていることから、清算中の会社であっても基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、消費税の申告と納税の義務があるものと解されます。 また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、その事業年度の前事業年度開始の日から6か月間(以下、「特定期間」といいます)の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その課税期間は納税義務があることとされますので注意が必要です。 なお、納税義務者の選択により、特定期間における納税義務の有無の判定は、課税売上高に代えて給与等の支払合計額が1,000万円を超えているかどうかにより判定することができます。 この特定期間ですが、1年決算法人の場合、直前期が7か月以下のときには特定期間による判定は不要となりますので、解散事業年度が7か月以下であれば、解散事業年度の翌事業年度における納税義務の判定は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかのみで判定を行います。 さらに消費税法における中間申告の規定は、法人税法と異なり、清算中の会社においても適用されることに注意が必要です。解散によって営業活動を縮小すると、課税売上高が大幅に減少することも想定されますので、仮決算による中間申告の納税も検討しておきたいところです。
2021.05.18 16:58:38