役員報酬減額の場合の注意点
旭課長「黒田さんこんにちは。役員報酬について確認したいのだけどよろしいですか。」
黒田「こんにちは。どんな内容ですか。」
旭課長「弊社も外出自粛の影響を受けて、受注がストップしたタイミングがあったんだ。徐々に回復する部分もあるけれど、元通りになるには当分かかると思う。資金繰りも考えると、決算期末を待たずに役員報酬の減額をしよう、という話になっていてね。」
リエ「以前、年度の途中で役員報酬を変更した場合には、損金算入が認められなくなると伺いました。今回のようなケースはどうなるか教えてください。」
黒田:「なるほど。長期的に業績が回復しない見通しのための役員報酬の減額は、業績悪化改定事由に該当するため、定期同額給与として損金算入が可能です。」
旭課長「業績悪化改定事由というのは聞いたことがあるな。たしか経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情がある場合は、期中に減額をしても定期同額給与として認められるとか。」
リエ「体感では経営状況が著しく悪化したんですが、何か明確な基準や証明が必要だったりしますか。」
黒田「国税庁のホームページで『新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係』が紹介されています。その中に、御社のように新型コロナウイルス感染症対策によって売上が大幅に減少し、役員報酬を減額する例もあります。具体的な減少率や証明書等は求められていませんが、説明はできるようにしましょう。」
リエ「何か注意点はありますか。」
黒田「御社の場合、仮に想定より早期に業績が回復したとしても、役員報酬を増額させた場合には定期同額給与としての損金算入は認められなくなります。」
旭課長「数ヵ月減額して、業績の回復に合わせて当初金額に戻す、というのは損金算入が認められないんだね。」
リエ「期の途中での増額はどんな理由でも認められない、ということなんですか。」
黒田「そうとは限りません。営業活動の自粛や店舗の休業など、職務の執行を理由に役員報酬を減額させた場合は、職務執行が可能になった時点で役員報酬を増額、当初金額に戻しても定期同額給与として損金算入できます。臨時改定事由といって、職務内容の重要な変更や職制上の地位の変更に合わせた役員報酬の改定が認められるためです。」
旭課長「なるほど。うちは職務に合わせた役員報酬ではないし、減額理由も業績の悪化によるものだから、役員報酬を減額したら期中に戻すわけにはいかないんだね。」
黒田「そうですね。そこまで加味して減額の検討を行っていただくのがよいと思います。」
リエ「期中に役員報酬を増額したくなるほどの業績回復ができるといいですね。」