目標規模、コンフォートゾーンについて
報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。そこで、起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載しています。このコラムが少しでも役に立ち、安定した事務所経営ができるようになる礎となれば、うれしいです。今回は、事務所の目標規模やコンフォートゾーンといわれることについて考えてみたいと思います。
1)目標とする経営の規模について考えておこう
税理士事務所、税理士法人とひと言でいっても、その規模には相当な幅があります。これから開業する、あるいは開業したばかりという税理士にとっては、どんな規模の事務所を目指すのかは、最初から考えておくべきことです。なぜなら、人生は短いから。例えば、確定申告シーズンが終わって、気がついたらまた次の確定申告シーズンがやってくる。これを繰り返しているうち、あっという間に5年10年という年月が経っているものです。いざ開業してみるとそんな風に忙しさに負けて惰性で進めばあっという間なのです。
以下、なんとなくですが、世の中の税理士事務所、税理士法人を規模別に分けてみました。あなたの目標としては、どこを目指しますか?
・一人経営の事務所
・小会計事務所(スタッフ数5名以下)
・中会計事務所(スタッフ数6~15名)
・中堅会計事務所(スタッフ数15名~50名)
・大規模会計事務所(スタッフ数51名~100名)
・超大規模会計事務所(スタッフ数100名以上)
どれが正解というものはありません。例えば、寿司屋で考えてみましょう。誰もが知る銀座の高級店、街の寿司屋、独特な名物ネタやパフォーマンスで有名な個性店、どこにでもある回転寿司チェーン店などなど、寿司屋とひと言でいってもたくさんの形態があります。どれが良くて、どれがダメということもありません。あくまで選ぶのはお客様。予算、クオリティ、手軽さ、場所など、さまざまな要素の中で選択しているのです。
税理士事務所、税理士法人だって同じです。大きければ絶対に良いというものでもなく、小さいほうが絶対に良いというものでもありません。お客様がそれぞれのニーズや価値観によって選ぶものです。
2)規模別にお客様から規模の大きさ別のメリット、デメリット
では、お客様から見て、小さい事務所、大きい事務所のメリット、デメリットを考えてみましょう。規模別に必ずこうなるということではありません。一般論として見てください。
・小さい場合のメリット、デメリット
小さな事務所の場合、所長との深い人付き合いを元にしたきめ細やかな対応をしてもらえるというイメージがあります。一方で、万が一、所長が体調を壊したときなど、どこまでリカバーが効くのかなど、マンパワーで心配な要素もでてきます。
・大きい場合のメリット、デメリット
大きな事務所の場合、広い専門分野をカバーし、トータルで相談に乗ってもらえるというイメージがあります。マンパワーも十分なため、万が一のときも十分やリカバー体制があり安心感があります。一方で、担当者との限定したやりとりに終始し、所長とは希薄なつきあいになる、担当者がしょっちゅう入れ替わってしまうというようなイメージがあります。
他にもいろいろあるでしょう。私自身、複数の税理士や会計士、社会保険労務士などのお客様側を長く経験していることから、お客様側の気持ちを客観的に感じることができます。
3)税理士から見た規模の大きさ別のメリット、デメリット
逆に税理士側からみたときどうなるかを見てみましょう。
・小さい場合のメリット、デメリット
採用や離職防止など、組織のことを考えず事務所経営がラクである(特に一人事務所の場合)、紹介を中心とした集客で特段、大規模なWebマーケティングなどは考えなくて良いというメリットがあります。逆に、所長自身やることが多い、小さな事務所として信用を得にくい場合があるなどのデメリットがあります。
・大きい場合のメリット、デメリット
大きな事務所として信用を得やすい、広い専門分野の相乗効果で集客がしやすいなどのメリットがあります。一方で、採用や組織化など人に関する苦労が多い、多額の人件費を捻出するためにも本格的なマーケティングや営業が必要になるなどのデメリットがあります。
4)限りない成長か、コンフォートゾーンか
もうひとつ分けるとすれば、成長に関する考え方です。規模を追求するなら、限りない成長に対する挑戦が必要になってきます。一方で、ある程度のところで満足し、あとは安定やクオリティを追求していくという考え方もあります。ある程度の売上、利益、規模で満足して、快適な生活を満喫したいという考え方もあるでしょう。この状態を「コンフォートゾーン」と言ったりします。
5)まとめ
いかがでしたか?ひとつ言えるのは、前述したとおりで、どれが正解というものはないということです。この段階で自分がどこを目指すのか、イメージだけでも決めておきましょう。それにより、今後の行動が変わってくるはずです。では、次回に続きます。