HOME コラム一覧 営業方法や価格について考えよう2

営業方法や価格について考えよう2

post_visual

報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。そして、AIの開発が進む中、近い将来、消えてなくなる職業として税理士も挙げられています。それが今、税理士の開業を取り巻く環境だと言っても過言ではありません。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。

起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載しています。前回から3回にわたって、営業方法や価格など、将来の事務所経営のキモとなる部分について解説しています。では、続きを一緒に見ていきましょう。

■無料オファ、フロントエンド商品、バックエンド商品の考え方

よくある失敗としては、いきなり顧問契約など高い価格のサービスを売ろうとすることです。相手から見れば、そこからはじめて購入するというのは、リスクもあるし、とても怖いものです。開業したばかりの事務所が提供しているサービスだとしたら、なおさらでしょう。

そこで知っておきたいのは、フロントエンド商品、バックエンド商品、無料オファという考え方です。この考え方は、マーケティングにおいて極めて重要な考え方ですから、必ず身につけておきましょう。

・フロントエンド商品とは
フロントエンド商品とは、「集客商品」です。買ってもらいやすい価格に設定してなんとか一度買ってもらう。お客様を呼び込む、お客様と接点を作るための商品です。

・バックエンドとは
バックエンド商品とは「本命商品」です。最終的に買ってもらいたい利幅の大きい本命の商品です。バックエンド商品を買ってもらうことによって利益を確保することができ、会社の存続を図ることができます。

・無料オファとは
無料オファとは、無料で提供、体験してもらえるような商品・サービスです。お客様を呼び込む、接点を作るために、フロントエンド商品よりも、さらに踏み込んで無料に設定する商品・サービスです。

例えば、
・居酒屋…ランチがフロントエンド商品で、夜の飲み会はバックエンド商品
・通販化粧品…お試しセットがフロントエンド商品、定期購入がバックエンド商品
・ピアノ教室…無料体験レッスンが無料オファ、1回のみのレッスンがフロントエンド商品、月謝制のレッスンがバックエンド商品
という関係です。

税理士事務所の経営に当てはめてみましょう。会社向けに税務の顧問契約を提供しようと考えているとします。

・無料オファ…税務に関して無料相談に乗る(ZOOM、電話、飲み会でなど)
・フロントエンド…決算駆け込みサービスで年に1回だけの決算申告を提供
・バックエンド…毎月の税務顧問契約から決算申告まで一括で提供

こんな感じのイメージですね。
業界的には、無料相談を提供するという手法が一般化したので、意外とこういったマーケティング手法は自然に浸透しているのかもしれません。

近頃のマーケティングでは無料オファや、フロントエンド商品の購入の際にお客様との接点を作ることが重視されています。その際、顧客情報を得てバックエンド商品の告知をしていくこともできます。

これを機に、本丸であるバックエンド商品を売るために、その前に置くべきフロントエンド商品は何に設定するか。さらには、フロントエンド商品を買うまでの心理的な壁を取り除くための無料オファを何か置くのか、検討してみましょう。

■アップセル、ダウンセル、クロスセル、パッケージセルの考え方

さらに知っておきたいのが、アップセル、ダウンセル、クロスセル、パッケージセルの考え方です。

①アップセルできる要素はある?
アップセルとは、ある商品・サービスを購入しようとしている顧客に対し、それよりも上位の価格帯の商品・サービスを売ること。予算のある顧客向けに付加価値の高い商品・サービスを用意しておくなど。
例)ハンバーガーを発注しようとしているお客様に、季節限定のスペシャルバーガーをおすすめして発注してもらう

②ダウンセルできる要素はある?
ダウンセルとは、ある商品・サービスを購入しようとしている顧客に対し、それよりも下位の価格帯の商品・サービスを売ること。特に予算オーバーの顧客への対応として想定しておく。
例)通常60万円のフルオーダーのホームページ作成では予算オーバーのお客様には、決まったフォームから選んでもらう簡易作成の20万円の低価格版をオススメできるようにしておく。

③クロスセルできる要素はある?
クロスセルとは、ある商品・サービスを購入しようとしている顧客に対し、別の商品・サービスも売ること
例)ハンバーガーを発注しているお客様にポテトとドリンクも一緒にオーダーしないか聞いておすすめする。

④パッケージセルできる要素はある?
ある用品・サービスを購入しようとしている顧客に対し、それと関連する商品・サービスもまとめてセット購入してもらうこと。パッケージ商品として設定しておくことが必須。
例)ハンバーガー、ポテト、ドリンクとナゲット、それぞれ4人分をセットにしたファミリーセットを提供する。


税理士の仕事に当てはめて考えてみましょう。自身が提供するサービスについても、アップセル、ダウンセル、クロスセル、パッケージセルの要素を加えること、できますよね。

■まとめ

いかがでしょうか?今日お話ししたことは、マーケティングの基本のキのような部分です。ただ、業界的にはまだまだ取り入れていない可能性もあるのではないでしょうか。ぜひ、考えてみてください。次回も続きます。お楽しみに!

執筆者情報

profile_photo

代表者 中野 裕哲

起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士・社労士・行政書士法人V-Spirits

起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引主任者

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。
多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。
「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

起業コンサルタントが教える失敗しない税理士開業のコツ

記事の一覧を見る

関連リンク

営業方法や価格について考えよう1

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2021/img/thumbnail/img_54_s.jpg
報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。そして、AIの開発が進む中、近い将来、消えてなくなる職業として税理士も挙げられています。それが今、税理士の開業を取り巻く環境だと言っても過言ではありません。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載しています。前回から3回にわたって、営業方法や価格など、将来の事務所経営のキモとなる部分について解説しています。では、続きを一緒に見ていきましょう。
2021.02.10 10:28:53