営業方法や価格について考えよう1
報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。そして、AIの開発が進む中、近い将来、消えてなくなる職業として税理士も挙げられています。それが今、税理士の開業を取り巻く環境だと言っても過言ではありません。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。
起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載しています。今回から3回にわたって、営業方法や価格など、将来の事務所経営のキモとなる部分について解説していきます。それでは一緒に見ていきましょう。
■USPは何か
USPという言葉をご存知でしょうか?Unique Selling Propositionの略。「自社の商品・サービスのみが持つ、独特な強み」のことです。もっとわかりやすくいうと「なぜ、あなたから買う必要があるのか、他社ではダメなのか」です。買い手にとって、その強烈な動機があるかです。あなたが提供しようとしているサービスにはUSPはありますか?
サービスに際だった特徴がなく、買い手としては価格だけが唯一の基準となるようなものだったら、激しい価格競争に巻き込まれてしまいます。典型的な失敗パターンは図のようなケースです。
このようなことにならないように、自身の展開するサービスについてUSPを突き詰めて考えましょう。
■価格競争に巻き込まれずに買ってもらうには
何でも供給過多の時代。前述のとおり、税理士業界だって同じです。価格競争に苦しみ、普通にやっていたのでは職員に給料を払うこと、維持することさえ難しいということにもなりかねません。逆に、独自ノウハウによって付加価値を付けて他社と差別化できていれば、こうした価格競争に巻き込まれずに済みます。きっちりと利益を生んでいける強い事務所を作ることができるのです。
見込客が求めていたような魅力的なサービスであれば、こちらから営業して回らなくても買ってもらえるものです。いろいろな業界の人気店の行列を見ればわかりますよね。もとより、これだけ社会が成熟して、人々が新たに物やサービスを買う必要がない時代になると、見込み客がどんな商品・サービスを必要としているのか、よく研究しておく必要があります。これからの税理士業界の場合、税理士同士の争いに加えて、会計ソフト・アプリ、AIなど、機械も競合相手となります。
だとしたら、機械にできないものをどうあみだして提供するのか。人間ならではのサービスにはどんなことがあるのか。そこにお客様は何を求めているのか。いや、逆にその機械を味方につける方法には何があるのかなどなど。開業前にどこまでこの点をリサーチして準備しておくのかが勝敗に直結します 。もちろん、開業後も常に考えていなければならないことです。
■お客様の都合で価格は決まる
もし、商品・サービスがなかなか売れないとしたら、価格について十分に検証してみましょう。よくある失敗パターンとしては、売る側の都合だけで価格を決めてしまうことです。
例えば、いくらで売らなければ、
・元が取れない
・固定費を回収できない
・生活できない
などというものです。
購入するお客様からすれば、元が取れないとか、固定費を回収できないとか、そういうことは全く関係ありません。
・もっと安いところはないか比較したい
・要らないサービスもあるからもっと安くして欲しい
・良いサービスなのはわかるけど、予算的に買えない
など、お客様側の都合で検討されるものなのです。
この両者の都合に折り合いをつけるのが商売の基本だといっても過言ではないでしょう。税理士業だってビジネスなのですから当然です。先生業は例外だということは全くありません。
経営用語で「プライスポイント」というものがあります。その売価なら大多数(8割)の人が買いたいと思う値ごろ価格のことです。業界での最安値のことを言っているのではありません。自社が提供する商品・サービスのプライスポイントがどこにあるのか、もしくは、採算ライン以上を確保しつつ、プライスポイントで提供することができる商品・サービス設計は何か。じっくりと探りましょう。
■まとめ
いかがでしょうか?USP、付加価値、プライスポイントなど、いままで考えてもいなかったということもあったのではないでしょうか。今の時代、税理士は職人としての資質のほかに、商売人としての資質も求められているといっても過言ではありません。次回も続きを見ていきます。お楽しみに!