収益と益金、費用と損金
法人税の計算の仕組み
ケン:社長の会社は12月決算ですから、年が明けるといよいよ申告ですね。
あゆみ:そう言えばね、決算書の利益と法人税申告書の利益は違うんだよって、同業の社長やってる人が言ってた。
ケン:その通りです。
法人税の利益は課税所得と言い、課税所得は益金から損金を差し引いて算出されます。
この課税所得に法人税率を乗じて法人税額を計算しますが、決算書の利益とは違う場合がほとんどです。
決算書上は収益から費用を差し引いて利益を計算します。
一方、法人税法上は益金から損金を差し引いて課税所得を計算します。
あゆみ:決算書上は収益-費用=利益で、法人税は益金-損金=課税所得って言うってこと?
ケン:はい。この収益と益金、費用と損金はイコールではありません。
・決算書上は収益に計上したものが、法人税法上は益金にならないものがある
・決算書上は収益に計上していないものが、法人税法上は益金になるものがある
・決算書上は費用に計上したものが、法人税法上損金にならないものがある
・決算書上は費用に計上していないものが、法人税法上は損金になるものがある
このような違いがあります。
あゆみ:よく分からないけど、法人税のその課税所得とかを算出するときはどうするの?
ケン:法人税申告書の別表四で決算書の利益に
・決算書上は収益に計上していないが、法人税法上益金となるもの
・決算書上は費用に計上しているが、法人税法上は損金にならないもの
を加算し、
・決算書上は収益に計上しているが、法人税法上益金にならないもの
・決算書上は費用に計上していないが、法人税法上は損金になるもの
を減算して課税所得を計算する仕組みとなっています。
申告調整
あゆみ:決算書に計上しなくても、法人税の申告書で調整すればいいってことなの?
ケン:今までの話だと、そういう風に思われるかもしれませんが、例えば決算書に費用に計上しなければ法人税法上損金と認められないものがあります。
具体的には、
・減価償却資産の償却費
・繰延資産の償却費
・貸倒引当金繰入額
・少額の減価償却資産の取得価額
・少額の繰延資産の支出費用
・切捨債権以外の貸倒損失 など
です。
これらの項目は、決算書に費用として計上していなければ、仮に法人税申告書別表四で減算しても、それは認められないということになります。
あゆみ:気になるのが、決算書で経費に計上して法人税法上損金にならないものなんだけど。
ケン:法人税法上、損金にならないものが規定されています。
また、損金算入限度額が決められているものがあり、その限度額を超えて経費に計上している場合にはその超えた部分は損金不算入となります。
あゆみ:損金にならないものは?
ケン:租税公課関係で、
法人税、地方法人税、法人住民税、延滞税、加算税、過怠税、交通反則金などです。
あゆみ:消費税は損金になるの?
ケン:消費税の納付税額相当額が損金になります。
経理方法で損金にする方法は違いますが、税込経理でも税抜経理でも納付税額相当額が損金として処理されます。
あゆみ:限度額が決められているものは?
ケン:限度額が決められているものは
・減価償却資産の償却額
・貸倒引当金繰入額
・寄附金の損金算入限度額
・交際費の損金算入限度額
などです。
決算書において、これらの限度額を超えて経費に計上している場合には、別表四で加算調整しなければなりません。
あゆみ:ちなみになんだけど、決算書に収益に計上して、法人税法上益金にならないものってあるの?
ケン:損金不算入の法人税等の還付があった場合でその金額を雑収入に計上している場合は別表四で減算調整を行います。
また、配当を受け取った時の益金不算入制度、収用等があった場合の特別控除等も同じように別表四において減算調整ができます。
あゆみ:やっぱり、めったにあるものではないやつだね。(笑)
決算から申告までの流れ
あゆみ:今、もう決算日過ぎてるけど、これからの流れはどうなるの?
ケン:決算の流れとしては、決算調整をした上で決算書をまず作成をし、その決算書に基づき法人税申告書を作成するという流れになります。
あゆみ:そうすると、決算書を作成して、株主総会の決議を経て申告するって流れ?
ケン:その通りです。
申告書も「確定した決算に基づき」作成されることになっています。
この「確定した」という文言は株主総会での決議を言います。
ただ、通常は株主総会前に申告書まで作成し、その上で株主総会において決議される流れになっています。
あゆみ:申告の際はお世話になるからよろしくね。
ケン:はい、こちらこそよろしくお願い致します。