開業資金や生活資金について考えよう
税理士として開業するとき、一番心配なのがお金のことではないでしょうか?開業準備にいくらかかるかという問題もありますが、それとリンクしてくるのが開業後の生活費がまかなえるかどうかです。冷静に頭を整理しておくには、そもそも開業にはいくらかかって、その後、毎月いくら入ってきそうか、毎月いくら出て行きそうかを予測しておく必要があります。今回は、このあたりを解説していきます。
1.事業全体で掛かるお金を計算してみよう
まずは2つのアプローチから考えてみましょう。
(1)単純に積み上げていった場合、想定する事業全体でかかるお金や当面の生活費はいくらか
(2)事業に掛けられるお金(自己資金+人から集めるお金)はいくら用意できるか
(1)単純に積み上げていった場合、想定する事業全体でかかるお金や当面の生活費はいくらか
まずは、単純に積み上げて、事業全体で掛かるお金を算出してみましょう。大きく分けて、運転資金と設備資金に分けて考えます。
・設備資金…設備など金額の大きい初期投資にかかる資金
例)パソコン、ソフトウェア、Webサイト、内装工事、机、イス、オフィスの敷金・保証金など
・運転資金…毎月の運営上必要になるようなコスト
例)交通費、通信費、家賃、従業員の給料、交際費、会議費、各種手数料、会費など
【事業全体でかかるお金】
設備資金+運転資金×3ヶ月分=事業全体でかかるお金
という計算で、事業全体でかかるお金をざっくりと把握できます。
もし、不明な金額があれば、Webで調べたり、必要があれば業者に見積書を依頼したりと、情報収集をします。
最初は従業員も雇わず、個人の税理士事務所を構えるということであれば、そんなにお金は掛からないはずです。ただ、揃える機器やソフトウェア、どんなオフィスを構えるかなどによる違いはあるかもしれません。
上記とは別に、生活費として毎月いくら必要かも把握しましょう。住宅ローンの支払なども含みます。当面の生活費としては3~6ヶ月分くらいは確保しておきたいところです。
(2)事業に掛けられるお金(自己資金+他から集めるお金)はいくら用意できるか
事業全体でかかるお金がだいたい把握できたら、それを自己資金だけでまかなうことができるかを考えてみましょう。自己資金とは自分の手持ち資金のうち、事業に掛けられるお金です。
自己資金は、普通預金、定期預金、株やFX、仮想通貨等の売却金額、生命保険の解約返戻金などから捻出します。
事業全体でかかるお金や当面の生活費を自己資金でまかなえない部分があるとすれば、他の方法で工面することを考えます。
例えば、
・日本政策金融公庫など公的な創業融資を利用する
・家族や親戚などに頼る
などです。
2.公的な創業融資制度の基本をマスターする
自己資金でまかなえない部分は、公的な創業融資制度で借りるのが一般的な方法です。
創業時の公的な創業融資には、主に以下の2つがあります。
・日本政策金融公庫(以下、公庫)の新創業融資制度
・都道府県、市区町村などの制度融資(創業融資)
創業融資制度を使ってお金を借りるときには、必ず融資審査があります。その審査の基準をまずは十分に理解してください。
(1)自己資金
融資制度により異なりますが、自己資金割合が一定以上ないと、融資審査に不利になります。必要資金全体のうち、自己資金が1/3~1/2程度用意できるような形で借入希望額を決めましょう。
【自己資金割合の計算式】
自己資金
――――――――― ×100 = 自己資金割合
事業全体でかかるお金
もし、満たすことが難しい場合、2つの対応策が考えられます。一つは自己資金そのものを増やす方法です。これには上記のように家族や親戚などに出してもらうことも含みます。(借りてくるのはダメ)
もう一つは、事業そのものをスケールダウンすることです。つまり、前の項目で算出した必要資金がより少なくて済むように、スケールダウンする、つまり最初は我慢するのは何かを決めることです。
(2)経験、能力
業界での職務経験は最重要なことです。3年~6年あることが理想とされ、最低でも1年以上が必要です。業界で密度の濃い経験をしてきたこと、前職などで認められ重要な仕事を任されていたこと、良い業績を上げ貢献してきたことなどが審査されます。
能力という点では、特に代表者の信用が審査されます。個人信用情報での事故情報などです。
(3)返済可能性
融資ですから、事業から上がる利益で返済していく必要があります。事業計画書では、まずは「形式的な返済可能性」を満たすような予測損益を示す必要があります
さらには、「実質的な返済可能性」として、しっかりと売上、利益をあげられるという説得力が必要です。その売上を上げるために行う施策は何か。その売上予測には説得力があるか。客観的な根拠は何か、経験から来る根拠は何か、両面で語りましょう。
【形式的な返済可能性(事業計画書)】
税引後利益+減価償却費>年間の返済額
【実質的な返済可能性】
事業計画書上の売上、利益の予想は、本当に説得力あるものか
※過去の職歴や今後の可能性などから判断
3.まとめ
いかがでしたでしょうか?開業するにはいくらかかって、その後、毎月いくら入ってきて、いくら出て行くのか。頭の整理のためにも事業計画書を書いてみることをお薦めします。特に、事業が安定するまでの半年ほどをどう食いつなぐか、このあたりが肝となり、安心材料にもなるでしょう。融資の他にも受給できそうな補助金があれば検討しましょう。このあたりも含めて、不安な方はぜひ、個別に無料相談にお申し込みください。これからの業界を創っていくみなさまへの支援は惜しみません。