従業員に対する社宅の賃貸料の注意点
リエ「黒田さん、こんにちは。会社の福利厚生として従業員に対する社宅制度を考えています。ほかから借りて貸与するいわゆる借上げ社宅形式なのですが、会社が家賃の全額を負担した場合には税務上どのような扱いになるでしょうか?」
黒田「はい。その場合には、一定の算式で計算される”賃貸料相当額”※を給与とみなして従業員に給与課税をしなければなりません。」
リエ「経済的利益の供与として現物給与になるということですね。」
黒田「はい。ただし、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、経済的利益の供与はないとされ、給与として課税されません。そのため従業員から徴収する家賃は、最低でも賃貸料相当額の50%以上として設定をすることをお勧めします。」
リエ「そのように考えてみます。ほかに何か気を付ける点があれば教えて下さい。」
黒田「はい。複数の従業員にそれぞれ社宅を用意するなどの場合で、それぞれの社宅ごとに賃貸料相当額の50%以上を徴収していなかったとしても、それら全体(計算が困難な場合には、1ヵ所又は数ヵ所の事業所ごと)を一つとして計算した際に、全体として賃貸料相当額の50%以上が徴収されていれば、給与課税はされません。マンションと古い戸建てのように複数の社宅がある場合で、それぞれの賃貸料相当額に著しい差が生じる結果、従業員から徴収する賃料に不合理が生じてしまうときは、この計算方法を採用してみて下さい。」
リエ「ありがとうございます。」
黒田「いえいえ。その他の注意点として、住宅手当として現金支給する場合や従業員が直接契約している住宅の家賃を会社が負担する場合では、社宅の貸与としては認められず給与課税扱いになりますので注意して下さいね。」
※賃貸料相当額は次の1)から3)の合計額です。
1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))
3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%