設備機器、ソフトウェア、情報セキュリティを考えよう
起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてお伝えするこのコラム。今回は開業への準備の中で、重要なのに疎かになりがちな必要な機器やソフトウェアの準備、情報セキュリティの対策について考えて参ります。
必要な機器、ソフトウェア、セキュリティについて検討する(3ヶ月前~1ヶ月前)
提供するサービスの内容はどんなものなのか、どこにどんな形態の事務所を構えるのかが具体的に見えてきたら、次にどんな機器やソフトウェアが必要で、どれを選定して導入するのかを検討していきましょう。
まずは、オフィス家具やパソコンを新たに購入するのか、それとも今までどこかで使っていたものをそのまま利用するのかも検討する必要があります。また会計ソフトや給与計算ソフトなど、どんなものを導入するのか。クラウド会計ソフトを利用するのかもしくはインストール型を選択するのか、あるいはクライアントの要望に合わせてどんなソフトウェアまで対応できるようにするのか、もしくは、クライアントに自社が提供するソフトウェアをクライアント側にお薦めしてこちらのやり方に合わせてもらうスタイルなのかなどを検討する必要があります。
税務申告や税務に関する届出書関係はどんなソフトウェアを使用するのかといったこともあるでしょう。電子申請や電子申告についてもどこまで実施するのかを検討する必要があります。会計ソフトの提供企業が用意している税理士向けのサポートプログラムの導入や、保守契約についても検討しましょう。
このあたりは、業務を間違いなく行うかといった視点のほかに、予算をどれだけ掛けられるか、幅広く対応できるようにして、マーケティング上の戦略で有利に運ぶかといったことにも関係します。いずれにしても、いままで修行してきた中で培ってきたやり方をそのまま踏襲するのか、開業を機にやり方を変えるなり、パワーアップするなり、新たなことを始めるのといった問題でもあります。各社の提供する商品・サービスをこの際、じっくりと検討してみることをお勧めします。
また、税理士の仕事では欠かせないコピー、プリンタ、ファックス、スキャナーのことも考える必要があります。上記同様、予算との兼ね合いで複合機の導入をするかどうかも決める必要があります。とりあえずインクジェットプリンターで済ませるのか、本格的な複合機を最初から導入するのか、さらには、購入するのか、リースにするのか、保守契約はどうするのか、紙やトナーの供給体制はどんなものを選ぶのかなど、考えるべきことはたくさんあります。
さらに、忘れがちなのが情報セキュリティです。税理士はお客様の大切なデータを預かる責任の重い仕事です。開業する以上は、セキュリティを最初からしっかりと意識しましょう。最初に考えておくべき基本的なこととしては、業務で使用するサーバーやパソコンのウイルス対策を行っているかどうかです。さらには、万が一、パソコンがクラッシュしてデータが飛んでしまったときのことを考えて、どういう手段や頻度で、バックアップを取るのかも必ず考えておきしょう。このあたりは、お客様の大切なデータを預かっている責任のある職業ですから、当然、考えなければならないことです。
さらにはクライアントとどんな手段で連絡を取るのかも検討する必要があります。従来からの固定電話、携帯電話、メール、FAXといった連絡手段のほかに、チャットワーク、LINE、Facebookメッセンジャー、Slackなど、クライアントのニーズがさまざまです。どこまで対応するのか決めるとともに、それぞれの通信手段を採用した際に、誤送信対策やスパム対策などを十分に考えておく必要があります。また、通信手段を拡げすぎるばかりに、見逃しが生じてしまう恐れもあります。対策を考えておきましょう。
さらには仕事で関わる人との間のセキュリティに関する対策をどうするのかといったことも考える必要があります。例えば、従業員と守秘義務契約を交わすのか、重要情報の授受を伴う委託先との契約書には秘密保持条項を規定しているのか、関係者以外の事務所への立ち入りを制限するか、機密情報の保管について施錠管理をするか、機器・媒体の盗難防止措置を講じるか、業務で使用するサーバー・パソコンは利用者認証機能を設定するかなどです。このあたりは、修業時代では自分以外の誰かが担っていて、全く考えていなかったということもあるでしょう。ただ、独立する以上、今後は自分で考え、しっかりと対応する必要があるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?設備機器やソフトウェア、セキュリティのことを考えるにしても見落としていた視点もあったのではないでしょうか。やるべきことは山のようにありますが、全て大事なことです。まだ時間があるいまのうちに一つひとつ着実に進めていきましょう。