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開業の場所を考えよう

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 起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた著者がその経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについて語るこのコラム。前回はどのようなサービスを提供するかについて検討しました。今回は、その続きとして、「どこに事務所を構えるか」について考えていきましょう!

事務所を構える場所にはどんなものがあるか

ご存知のように税理士として開業するには、事務所を構えて、税理士会に登録する必要があります。他の士業も同様の制度があったりしますが、税理士は割合、厳しめの規制があるといえます。事務所をきっちりと決めて届け出を出すことが義務づけられています。開業準備全体の中では、具体的にどこに事務所を構えるかについて、開業6ヶ月前~3カ月前くらいには構想だけでも固めておく必要があります。まずはどんなスタイルのオフィスを構えるのか検討しましょう。

考えられるのが、
①自宅
②レンタルオフィスやシェアオフィス
③賃貸オフィス
などでしょう。

これらについて、順にみていきます。
①自宅
自宅で開業するスタイルです。実は著者も開業して10ヶ月間程度は自宅で開業していました。自宅での開業のメリットは何といっても、お金がかからないこと、開業準備が楽なことです。パソコンやプリンタなどはもともと持っている方が多いのではないでしょうか。それらは、いつでも使えるようにすでに設置しているはずです。そして、すでにある自宅(持ち家戸建てなど)をそのまま使うわけですから、新たな家賃や敷金、保証金などは掛かりません。そうした意味で、開業資金は少なく済むはずです。

ただし、持ち家の分譲マンションや賃貸マンションなどの場合は、注意が必要です。管理規約の規定や大家さんとの賃貸借契約書において、許されるのはあくまで住宅使用であって、不特定多数の来客があるような事業目的の使用は禁止している可能性があります。このあたりは事前によく調べておきましょう。場合によっては、大家さんは管理組合の理事長などに確認をとる必要もあります。

自宅開業でのデメリットも認識しておきましょう。代表的なものとしてはお客様や業者などとの打ち合わせで来訪していただくことをしにくいということです。「では近所の喫茶店で」というのも、機密情報を扱う業種としては、なかなか難しい可能性もあるのです。信用面もあるでしょう。そういったことを考えると、自宅での開業の場合、事務所の体を成すようにして十分な打ち合わせスペースを設ける、あるいはこちらから訪問する営業スタイルを採用するなど、工夫が必要だといえます。

さらなるデメリットとしては、家族との関係です。電話の最中に掃除機を掛けてしまう、子どもが部屋に入ってきて叫ぶといったことも起きかねません。お互いにストレスが溜まるといったことにもなりえます。十分に話し合いをしておきましょう。

時間の使い方も難しくなります。通勤がなくなるというメリットがある一方、出社、退社という時間管理がなくなるため、朝起きてから夜寝るまでがんばってしまう、またその逆に、趣味などの時間との区別がつけにくくて集中できない、ということも起こりえます。このあたりは性格にもよります。事前によく考えておきましょう。

②レンタルオフィスやシェアオフィス
自宅での開業ではなく、やはり外でオフィスを借りたい。でも、そんなにお金は掛けたくない、そんなときに選択肢として挙がってくるのが、レンタルオフィスやシェアオフィスです。レンタルオフィス、シェアオフィスといっても、提供される部屋やスペースや利用可能時間、会議室の有無や利用形態などは千差万別です。なにより税理士会の規定にきちんと当てはまっているか、自分が想定した利用方法が可能なのかなど、事前によく確認することが必要です。

価格帯や実際に掛かるオプション料金、契約期間などもよく確認しておかないと思わぬ落とし穴にハマることになりますので、ご注意ください。逆に、うまく活用できれば、入居している他の企業からの
依頼を受けやすいという営業上のメリットもありえます。

③賃貸オフィス
この際、きちんと賃貸物件を借りて営業しようという考え方です。著者の場合は、前述のように10ヶ月間ほどは自宅で営業していましたが、やはり必要に迫られることになり、賃貸マンションの一室を借りて事務所を移しました。

賃貸オフィスの場合、どんな物件にするか検討する際、一番大きな懸念は、賃料や初期費用の負担感です。物件の情報を一度検索してみて、イメージを考えてみましょう。

物件には大きく分けて2種類があります。ひとつは、事務所使用OKの賃貸マンション(ワンルームなど)を借りるパターン。もうひとつは賃貸オフィスの構造をした物件を借りることです。当然、前者のほうがスペースが狭いこと、お風呂など不要な設備がついてきてしまうことが多く、家賃も安いという特徴があります。一方、後者の場合は、十分な広さがある一方で、家賃は高めです。両者には家賃の差がある場合が多く、エリアや立地によってはどちらかの形態の物件が極端に少ないことも多いです。物件探しにも時間がかかるので早めに動くことをお勧めします。

【まとめ】
いかがでしたしょうか?税理士として開業する際の事務所選びは、人員計画など、将来を見通して決めることも重要です。一方で見栄を張れば、いくらでもお金を掛けられてしまうという世界です。限られた開業資金の中で、どんな形で始めるのか、じっくりと考えてみましょう。

執筆者情報

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代表者 中野 裕哲

起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士・社労士・行政書士法人V-Spirits

起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引主任者

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。
多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。
「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

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2020.12.10 09:24:04