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正社員の個人事業主化で公庫融資支援はどんな影響を受ける?

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元公庫職員VTuberのみつきです。

先週、電通が一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として勤務する制度を運用することを発表しました。
このトピックを見たときに健康機器大手のタニタを思い出される方もいらっしゃるかと思います。
今回は「正社員の個人事業主化」によって公庫融資支援がどのような影響を受けるのかについてご紹介していきます。

ご存じの通り、日本政策金融公庫(国民生活事業)は中小企業や個人事業主向けの融資を取り扱っていますので、電通の正社員から個人事業主へと切り替わった方も融資対象者となります。
ただ今回の電通における正社員の個人事業主化では、電通時代の給与を基にした固定報酬+インセンティブという設計になっているようで、これまでの給与がある程度保証されているところを見ると電通との業務委託による資金需要はほぼ生まれないと感じます。
「それでは公庫融資支援には特段影響がないのか?」と結論付けるのは少し早く、電通は他社との業務委託契約を締結することを許可(※協業他社との業務は禁止)しており、個人事業主へと切り替わったことを契機としてより幅広い分野への進出を図る方が一定数出てくるのではないかと感じます。
この他事業への展開の際にある程度の資金需要が発生し、日本政策金融公庫からの資金調達ニーズに繋がるかと思います。
当然、ここから公庫融資支援のニーズもある程度生まれることが想定できますが、気をつけたいことは資金使途が明確かどうかです。
日本政策金融公庫だけではなく、金融機関は資金使途が何かということを事業者側が思っている以上に重要視しています。
個人事業主として日本政策金融公庫から融資を受けることができることを鵜呑みにして、「とにかく融資を受けておくべき!」と、日本政策金融公庫から融資を受けるという手段が目的となってしまい、担当者に明確に説明ができない資金使途でとにかく融資を申込む個人事業主が増えることになると、みつき個人として予想しています。
このような資金使途が不明確な案件ばかり公庫に紹介すると、公庫融資支援事業としてこれまで築いてきた支店との信頼が崩れかねません。

ぜひ公庫融資支援をされている方は、事業者が「その融資がなぜ必要なのか?本当に必要なものなのか?」を明確にできるようコンサルティングを行うようにすると、公庫の担当者も非常に助かり、支店との関係性もさらに強固なものになるはずです。

執筆者情報

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みつき

VTuber。日本政策金融公庫にて様々な業種の融資審査・債権回収に従事。この経験を活かし、YouTubeチャンネル「公庫融資のエッセンス」にて中小企業や個人事業主が日本政策金融公庫から融資を受けるときに知っておきたいことについて発信を行う。

経営融資相談士研究協会ホームぺージ
https://keieiyushi.zeimukeiei.jp/
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公庫融資のエッセンス
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2020.11.16 16:17:29