役員退職金を活用して売り手も買い手もハッピー!
従業員5人の製造業を同業に売却
実際にアドバイザーとして関わらせて頂いた実例をもとに、少しデフォルメしてお伝えします。
埼玉県にある従業員5人の製造業の会社(資本金1,000万円)を、100%株主兼社長であるAさんが、ネットマッチングを使ってアドバイザーのコンサルのもと、承継候補先を探し、同業の会社に売却されました。
売却価格は、売り手及び買い手ともに納得で、4,000万円でした。
売り手の会社には、Aさんの他に奥様やお子様が役員に入っていて、経理や経営面でいくらかお手伝いを頂いていたようです。
個人売却税は約2割
100%株主であるAさんが買い手に、会社を株式譲渡で売り渡すと、売り手のAさんには売却益に対して約2割の所得税及び住民税がかかります。
具体的には下記となります。
(売却価格4,000万円-資本金1,000万円)× 約20% = 税金600万円
また一方、実は上記の売却価格4,000万円の条件として、社長貸付金(会社からみると社長借入金)500万円は放棄するとなっていました。
つまり、売却会社においては、「債務免除益」という収入が計上され、課税対象となってしまいます。
退職金を活用すると税金0円!
このケースを下記に変更すると、結論、売り手の払う税金が600万円から0円になります。
株式売却額 4,000万円
⇒売り手税金 600万円(社長手残り3,400万円)
↓
株式売却額 1,000万円
社長借入金返済 500万円
社長退職金 1,500万円
妻退職金 500万円
子退職金 500万円
⇒売り手税金 0円(社長一家手残り4,000万円)
もちろん売却価格のある程度の妥当性や退職金の税務上の取扱いを細かく計算する必要がありますが、詳細は割愛しますが、今回のケースでは上記が結論となり、売り手である社長さん一家も喜んでおられました。
買い手もハッピー
実は、上記の処理を行うと、買い手もハッピーになるのがお分かりになるでしょうか。
株の売買は、基本的に売却対象会社には影響が生じません。
単に、オーナーが変わっただけだからです。
しかし、最初のスキームであると、債務免除益500万円という名目上の収入が計上されて承継となるので、500万円×35%(概算実効税率)= 175万円の余分な税金を買い手は後日負担することになります。
これが後者のスキームであると、なくなります。
更に、退職金と言うのは、会計上も税務上も費用ですので、1,500万円+500万円+500万円=2,500万円の費用が計上された状態での承継となり、買い手にとっては、2,500万円×35%(概算実効税率)= 875万円の節税効果ともいえます。
つまり、M&Aにおいては、退職金等を活用できれば売り手も買い手もハッピーになることが多いということを知っておいてください。
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