フリーランス等が交通費等を立替払いした場合の源泉徴収
リエ「先月、企画・デザイン制作担当者が退職してしまいましたので、代わりにフリーランスのAさんと業務委託契約を交わしました。先日Aさんから請求書を受け取ったのですが、その請求書にホテル代と交通機関の領収書が入っていました。出張した際、旅費・交通費等を立替払いしたものだと思います。この立替払いの旅費・交通費等を精算した場合には、報酬・料金と同様に源泉徴収する必要があるのでしょうか。」
黒田「個人事業主として事業を行っている弁護士、税理士や、セミナーの講師、デザイーなどのフリーランスとして働く人々などに支払う旅費・交通費等に対する源泉徴収の有無については、謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われるものも報酬・料金の性質を有するものとして、源泉徴収の対象になると規定されています。
ただし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合には、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。」
リエ「お話を聞く限りでは、会社は交通機関等に直接支払っていませんので、フリーランスのAさんが立替払いを行った旅費・交通費等を精算した場合、報酬・料金に含めて源泉徴収することになりますね。」
黒田「それだけで判断できません。」
リエ「それはどういうことですか。」
黒田「フリーランスのAさんが交通機関やホテル等に立替払いを行った際、『領収書の宛名』の記載がどのようになっているかで、源泉徴収をするかどうか判断することになります。例えば、交通機関やホテル等から『会社宛ての領収書』を受け取って精算する場合は、会社が交通機関等に直接支払いをしていませんが、実態として会社が直接支払う場合と同視できるものとして、源泉徴収しなくても問題ないそうです。
一方で、立替払いでも、『個人宛ての領収書』を受け取って精算する場合は、宛名が会社ではなく、会社が直接交通機関等に支払っているとはいえないので、報酬・料金に含めて源泉徴収することになります。
以上のことから、フリーランスのAさんが提示した領収書の宛名がポイントとなります。宛名は『会社宛て』ですか、『フリーランスのAさん宛て』ですか。」
リエ「確か領収書に弊社の名前が記載されていたような気がします。そうすると、フリーランスのAさんの立替払いの旅費・交通費は源泉徴収しなくても問題ないということになりますね。」
黒田「そういうことになります。会社側は、会社の費用であり源泉徴収の有無も関わるため、Aさんから受領した『会社宛ての領収書』を保存することと、Aさん自身の必要経費にできない旨を伝えておく必要がありますね。」
リエ「分かりました、フリーランスのAさんにお伝えしておきます。」