HOME コラム一覧 所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の見直し

所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の見直し

post_visual

リエ「黒田さん、こんにちは。ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか。」

黒田「リエちゃん、こんにちは。何でしょうか。」

リエ「所有者が不明となっている土地や建物に係る固定資産税の課税上の課題への対応として、税制改正が行われたと聞きましたが、その内容について教えてください。」

黒田「わかりました。近年、人口の減少や高齢化に伴い、全国的に所有者が不明となっている土地等が増加し、生活環境や土地等の利活用など様々な問題が生じています。また、固定資産税の賦課徴収についても、現所有者の特定に係る市町村の負担の増加や現所有者が不明なことで固定資産税を課税できないなどの問題が生じていることから、このような問題に対応するため、固定資産税に関し、所有者を特定するための現所有者の申告が制度化され、さらに、所有者が特定できない場合に使用者を所有者とみなして課税ができる制度が拡大されました。」

リエ「具体的には、どのような内容の制度でしょうか。」

黒田「まず、現所有者の申告の制度ですが、土地又は建物について、登記簿等に登記等されている所有者が死亡した場合、市町村は条例により、その土地又は建物の現所有者に対して、現所有者であることを知った日の翌日から3月を経過した日以後の日までに、その現所有者の氏名、住所その他の固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができるとされました。相続の発生後、相続財産に土地や建物がある場合には、通常、不動産登記を行いますが、不動産登記は義務化されておらず、登記手続きも煩雑であることから、不動産登記が行われない場合も少なくなく、市区町村において、その所有者の特定に多大な時間と労力を要するなどの問題があったことから、現所有者の申告の制度が義務化されました。」

リエ「確かに、相続後に不動産登記をしていないケースもよく聞きますね。仮に、申告しなかった場合には、どうなるのでしょうか。」

黒田「正当な事由がなく申告しなかった場合、市町村は条例により、10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができることとなっています。この現所有者の申告の制度は、令和2年4月1日以後の条例の施行日以後に現所有者であることを知った者について適用されます。」

リエ「申告しなかった場合には、過料が科されることもあるんですね。土地や建物の相続登記が行われない場合にも、現所有者の申告の制度化によって、今まで以上に土地や建物の所有者の情報を把握できそうですね。」

黒田「そうなると思います。次に使用者を所有者とみなす制度ですが、改正前は、災害等の事由によって固定資産の所有者が不明の場合にのみ、その固定資産の使用者を所有者とみなして、固定資産税を課することができるとされていましたが、改正後は、市町村が調査を尽くしても固定資産の所有者が1人も明らかとならない場合においても、その固定資産の使用者を所有者とみなして、固定資産税を課すことができるとされました。ここでいう調査とは、住民基本台帳、戸籍簿等の調査、使用者と思われる者その他の関係者への質問などをいいます。」

リエ「なぜ、そのような取扱いになったのでしょうか。」

黒田「土地や建物を賃借していた人が、その所有者の死亡後、相続人が分からないため、賃料を払うことなく使用しているケースなど、その土地や建物を使用している者がいるにもかかわらず、市区町村が調査を尽くしても所有者を特定できない場合があり、このような場合には、固定資産税を誰にも課することができず、課税の公平性の面から問題があるため、使用者を所有者とみなす制度が拡大されました。この制度は、令和3年度以後の年分の固定資産税から適用されます。」

リエ「所有者が不明となってしまっている不動産を使用している人は、令和3年度から固定資産税が課される可能性があるので、注意が必要ですね。ありがとうございました。」

監修

profile_photo

税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

OLリエちゃんの経理奮闘記

記事の一覧を見る

関連リンク

マイナポイントについて教えてください!

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2020/img/thumbnail/img_07_s.jpg
リエ「黒田さん、こんにちは。ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか。」黒田「リエちゃん、こんにちは。何でしょうか。」リエ「所有者が不明となっている土地や建物に係る固定資産税の課税上の課題への対応として、税制改正が行われたと聞きましたが、その内容について教えてください。」黒田「わかりました。近年、人口の減少や高齢化に伴い、全国的に所有者が不明となっている土地等が増加し、生活環境や土地等の利活用など様々な問題が生じています。また、固定資産税の賦課徴収についても、現所有者の特定に係る市町村の負担の増加や現所有者が不明なことで固定資産税を課税できないなどの問題が生じていることから、このような問題に対応するため、固定資産税に関し、所有者を特定するための現所有者の申告が制度化され、さらに、所有者が特定できない場合に使用者を所有者とみなして課税ができる制度が拡大されました。」リエ「具体的には、どのような内容の制度でしょうか。」黒田「まず、現所有者の申告の制度ですが、土地又は建物について、登記簿等に登記等されている所有者が死亡した場合、市町村は条例により、その土地又は建物の現所有者に対して、現所有者であることを知った日の翌日から3月を経過した日以後の日までに、その現所有者の氏名、住所その他の固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができるとされました。相続の発生後、相続財産に土地や建物がある場合には、通常、不動産登記を行いますが、不動産登記は義務化されておらず、登記手続きも煩雑であることから、不動産登記が行われない場合も少なくなく、市区町村において、その所有者の特定に多大な時間と労力を要するなどの問題があったことから、現所有者の申告の制度が義務化されました。」リエ「確かに、相続後に不動産登記をしていないケースもよく聞きますね。仮に、申告しなかった場合には、どうなるのでしょうか。」黒田「正当な事由がなく申告しなかった場合、市町村は条例により、10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができることとなっています。この現所有者の申告の制度は、令和2年4月1日以後の条例の施行日以後に現所有者であることを知った者について適用されます。」リエ「申告しなかった場合には、過料が科されることもあるんですね。土地や建物の相続登記が行われない場合にも、現所有者の申告の制度化によって、今まで以上に土地や建物の所有者の情報を把握できそうですね。」黒田「そうなると思います。次に使用者を所有者とみなす制度ですが、改正前は、災害等の事由によって固定資産の所有者が不明の場合にのみ、その固定資産の使用者を所有者とみなして、固定資産税を課することができるとされていましたが、改正後は、市町村が調査を尽くしても固定資産の所有者が1人も明らかとならない場合においても、その固定資産の使用者を所有者とみなして、固定資産税を課すことができるとされました。ここでいう調査とは、住民基本台帳、戸籍簿等の調査、使用者と思われる者その他の関係者への質問などをいいます。」リエ「なぜ、そのような取扱いになったのでしょうか。」黒田「土地や建物を賃借していた人が、その所有者の死亡後、相続人が分からないため、賃料を払うことなく使用しているケースなど、その土地や建物を使用している者がいるにもかかわらず、市区町村が調査を尽くしても所有者を特定できない場合があり、このような場合には、固定資産税を誰にも課することができず、課税の公平性の面から問題があるため、使用者を所有者とみなす制度が拡大されました。この制度は、令和3年度以後の年分の固定資産税から適用されます。」リエ「所有者が不明となってしまっている不動産を使用している人は、令和3年度から固定資産税が課される可能性があるので、注意が必要ですね。ありがとうございました。」
2020.08.31 16:58:21