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先駆者の強みを生かしてテレワーク移行を支援 コロナショック下の働き方改革を支えるセブンセンスグループ

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新型コロナウイルス感染症(COVID -19)拡大の影響で、会計事務所のテレワーク(在宅勤務)やモバイルワークを容認する動きが見られるなか、14年前からペーパーレス化を推進してきたセブンセンスグループ(静岡県静岡市/東京都港区)では、いち早く会計事務所のテレワーク体制を構築し、ピンチをチャンスに変えている。同グループは、会計業界のIT化を牽引してきたアイクスグループと、多言語対応でグローバルなニーズに応えてきた東京税経センターグループが、昨年(令和元年)統合して生まれた、全国に10拠点を展開する大型会計グループである。グループ代表の小長谷 康氏と徐 瑛義氏、BPO支援部部長の山口高志氏に、統合の経緯やテレワークを中心とした新しい取り組みについて伺った。(写真は、ウェブ会議サービスを使って行われた取材の様子。聞き手は、株式会社実務経営サービス代表取締役会長の中井 誠)

トップ同士の親交から実現したグループ統合

―― セブンセンスグループは昨年11月、2つの士業グループの経営統合により誕生しました。
 一方のアイクスグループは、静岡を中心に国内6拠点を展開し、50年の歴史を持つ老舗グループです。製販分離システムやペーパーストックレス化といった独自のビジネスモデルを構築し、生産性の150%向上を実現しています。弊誌では、2019年10月号でその取り組みを取材しました。
 もう一方の東京税経センターグループは東京・千葉を拠点に、外資系企業や外国人起業者への多言語サービスを展開し、急成長を遂げた新進気鋭の事務所です。対応言語は欧米・アジアの9カ国にわたります。
 統合にあわせて、それぞれの税理士事務所と社会保険労務士事務所、行政書士事務所の商号が「セブンセンス」に変更され、国内10拠点、総勢200名規模、7法人から構成される大型士業グループとなりました。新生グループの代表には、旧アイクスグループ代表の小長谷 康先生と旧東京税経センターグループ代表の徐 瑛義先生が就任しています。
 本日は統合の経緯と、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大にどのような対応策を取っているか、そして会計業界でも突出してITに強い同グループの「テレワーク」の取り組みについて、小長谷先生と徐先生、セブンセンスグループBPO支援部の山口高志部長に伺います。
 はじめに、統合の経緯からお聞かせください。
小長谷 もともと、徐先生とはプライベートでお付き合いがあり、今回の統合の話はそのなかから生まれたものです。
 急激に進む二極化や、若手の先生が率いる大規模事務所の台頭といった昨今の会計業界の変化に対し、旧アイクスグループでは時代の流れに取り残されないために、大都市圏にも進出しました。しかし、これまでの地方の営業戦略とは勝手が違い、思ったほど業績が伸びませんでした。
 試行錯誤を続けるなか、ふとしたときに、徐先生との間で一緒になろうかという話が出ました。創業から50年、組織の老化も鑑みて、大都市圏の拡大戦略は徐先生にお任せし、若い力を借りてわれわれも成長していこうという思いで、統合に踏み切ることにしました。

―― 統合の決断までにどれくらいの期間を要しましたか。
小長谷 社内合意には2~3カ月かかりましたが、私と徐先生との間ではほぼ即断即決でした。

―― すると、徐先生も決断に際して不安はなかったのでしょうか。
徐 一切ありませんでした。小長谷先生とは10年来、個人的にも親しくさせていただいていましたし、ずっと尊敬していましたから。
 そもそも、統合の話を持ち出したのは私のほうです。小長谷先生から東京圏での協業を提案され、それなら一緒になりませんかと持ち掛けたところ、快諾していただきました。ですから、不安などあろうはずもありません。

―― 徐先生が今回の統合を提案された理由をお聞かせください。
徐 冒頭で「急成長を遂げた」と紹介していただきましたが、私自身は急成長とは思っていません。広告宣伝にほとんどコストをかけず、増客数も年70~80件の、どちらかといえば地道に、しかし着実に成長してきたという認識です。ただ、だからこそ時代を乗り越える底力はあると思っています。
 一方、努力や工夫だけではなかなか解決できない問題として、昨今は人材の確保が難しいことが挙げられます。これが、今回の統合を後押しした理由のひとつです。

―― つまり規模のメリットですね。
徐 仰るとおりです。旧東京税経センターは50人規模の事務所で、そこから300人規模に成長する青写真もありました。しかし少子高齢化が進むなか、そこにたどり着くまでには数十年かかるかもしれません。また、30年かけて300人になったとして、何をするかという問題もあります。
 統合のアイデアが浮かんだのは、そのようなことを考えていたときでした。無意識のうちに、一気に目標に近づくための時間を買おうという判断が働いたのかもしれません。しかも、信頼する小長谷先生がパートナーですから、何かに導かれたという感覚はありました。

―― ちなみに、「セブンセンス」という名称には、どのような思いが込められているのでしょうか。
徐 当グループの理念を表すキーワードです。一般に視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を指す五感、それを超える感知能力を表す第六感に加え、「ユーモアのセンス」を第七感(7th sense)と定義しました。

テレワークへの移行の鍵となるペーパーレス環境

―― 旧アイクスグループといえば、税務・労務のBPOサービスで有名でしたが、旧東京税経センターもこのサービスを活用し、営業活動に集中する体制を構築していたそうですね。
徐 はい。6年ほど前から毎月、当社のITスタッフを静岡へ研修に行かせていました。おかげで業務面のIT化、デジタル化も進み、アナログ営業でも年間70~80件の顧問先を増やしていくことができました。
 それに伴い、スポット業務も増えていったのですが、スタッフがなかなか増えず、依頼をお断りするケースも出始めていました。
 それが今回の統合により、処理業務で悩むことがなくなり、営業に全力投球できるようになりました。われわれは東京圏での営業に特化し、処理は静岡の本社にお願いするという、まさに理想的な体制を築いています。

―― 統合により一気に大所帯となった今、拠点間での意思の疎通や意思決定はどのように行われているのでしょうか。
小長谷 社内コミュニケーションではITをフル活用しています。例えば、Zoomミーティングで週に1回、グループ会社の役員会を行っています。

―― 新型コロナ禍によってテレワークが注目を集めていますが、グループの10拠点をつなげる仕組みについて、お聞かせください。
小長谷 テレワークに必要な環境としては、情報を共有するためのシステムと、打ち合わせや会議を行うためのシステムの2つがあると思います。いずれも技術の進歩によって、大変やりやすい環境になっています。
 旧アイクスグループでは、平成18年からサーバー側で大半の処理を行い、クライアント端末では必要最低限の処理しか行わない「シンクライアントシステム」と、「DocuWorks」(富士ゼロックス)を活用し、徹底したペーパーレス化を進めてきました。データエントリー業務を中国で行う仕組みを構築し、資料は全てデータでやりとりしていました。つまり、テレワークの環境は14年前からあったわけです。
 テレワークといっても税理士法の守秘義務上、紙の資料を自宅に持ち帰るのは問題があります。旧アイクスグループにおいてペーパーレス環境が整っていたことが、テレワークへのスムーズな移行を可能にしました。
 現在、データセンターは中国から石垣島に移しましたが、石垣島のスタッフもすぐに在宅勤務に切り替えることができています。

―― テレワークの問題点や課題はありますか。
小長谷 ほとんどありませんが、思いのほか、自宅の通信環境に差があることが分かりました。椅子や机がオフィスの環境と違うため、体が慣れるまでに多少の時間がかかったようです。
 また、通勤がなくなったことで、いっそう業務に集中できるようになったという声が多く聞こえてきます。集中し過ぎて、気付いたら残業になっていたというケースも散見され、逆にそちらのほうが心配なほどです。集中し過ぎて時間のコントロールができなくなるという問題は、在宅勤務に移行して初めて表面化した課題です。

ウェブ会議でも顧問先からの信頼は十分に得られる

―― 小長谷先生は、以前から製販分離による業務効率化を推進してこられました。テレワークへの移行は、さらなる効率化につながっているのでしょうか。
小長谷 仰るとおり、在宅勤務にしてからエントリー数は確実に増えています。まだ検証はしていませんが、生産量で見ると20%ほど上がっているかもしれません。
 ですから、新型コロナウイルス感染症の拡大収束後も、希望者には在宅勤務を認めるつもりです。むしろ、効率が上がったというスタッフのほうが多いので、在宅勤務を奨励していきたいと考えています。

―― 今のお話は製販分離の「製」についてですが、「販」のほうはいかがですか。
小長谷 販はこれまで「訪問」が基本でしたから、製に比べてテレワークに移行しにくいのは確かです。しかし、現在のツールをもってすれば、「訪問」を「ウェブ会議」に置き換えることも簡単です。セブンセンスグループでは現在、原則として訪問を禁止にしていますが、ウェブ会議のほうが双方の都合を合わせやすく、時間もきちんと区切ることができるので効率的です。
 われわれとお客様の両方にメリットがあるので、お客様への対応の仕方を変える好機と捉え、積極的にウェブ会議を推進しています。

―― 顧問先のウェブ会議に対する反応はいかがでしょうか。
小長谷 若い経営者の場合、抵抗感はほとんど見られません。年配の経営者も、このような状況下ですから、大半の方にご理解いただけています。とはいえ、なかなかITになじめず、「コロナが落ち着いたら来てほしい」と仰る方も3割ほどいらっしゃいます。そのようなお客様には、丁寧にご説明、ご指導していきたいと思います。
 この3割のお客様を切り替えていくための仕組みをもう少しルール化する必要はありますが、ウェブ会議でも十分にお客様の信頼を得られるという感触を得ています。

ウェブ会議の導入により生産性も大きく向上

―― 「毎月来られないなら顧問料を下げてほしい」という声も出ているようです。こうした現状をどうお考えですか。
徐 最近、Zoom面接でスタッフを何人か採用して感じたのは、必ずしも訪問して会うことがマストではないということです。
 当社では、外国人向けのフェイスブックや動画を作成・配信しています。ここ1カ月ほどは、そちらからお問い合わせをいただき、Zoomで打ち合わせをして契約するといった事例も増えています。
 私は、訪問回数が減ったからといって減額を求められたり、解約されたりするのは、本末転倒な話だと思います。税理士業務の本来の価値は、訪問ではないはずです。
 もともと、私たちには「巡回監査」という概念はありませんし、実際に半数以上のお客様にご来所いただいています。そこにウェブ会議が導入されたことで、生産性が上がっています。

―― どのくらい生産性が上がったのでしょうか。
徐 例えば、東京から横浜のお客様を訪問する場合、面談に1時間、往復の移動に2時間で合計3時間かかります。これをウェブ会議に置き換えることで、打ち合わせの効率アップも計算に入れると30~40分になり、2時間半も削減できます。担当者が2人であれば、2倍の5時間を別の業務に割り当てられるわけです。
 もちろん、どうしても「来てほしい」と仰るお客様もいますが、ほんの一握りです。ですから、お客様が減るという状況には陥っていません。新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、訪問が当たり前ではない時代になりつつあります。これは、われわれにとっては追い風です。

―― まさにエポックの到来といえますね。
徐 そもそも、税理士法における一身専属性とは徴税の観点から生まれた概念です。社会状況も、税理士の働き方も変わってきた今、時代にそぐわないものになりつつあります。テレワークが当たり前の時代に、法律が追いついていないといえます。
 今回の新型コロナ禍をきっかけに、法律も改正されていくでしょうし、大規模事務所へのシフトも加速していくでしょう。有利不利の問題ではなく、この先、ある程度の規模がなければ対応できなくなるだろうと思います。

中小企業支援に向けたDX研究会を設立

―― セブンセンスグループでは、新時代に対応するためどのような取り組みをされているのでしょうか。
徐 このたび、デジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマにした、中小企業支援のための研究会を立ち上げました。テレワークに移行したくてもできない中小企業は数多くあります。会計事務所も、その7割がテレワークを実施していないと聞きます。そこで、当グループでは本格的なDX支援に乗り出すことにしました。
小長谷 現在、DXのノウハウの体系化を進めているところです。研究会にご参加いただいた先生方に、それらのノウハウをご提供していきます。

―― この研究会について、山口部長から詳しく説明していただけますか。
山口 デジタルの力を駆使すれば、業務効率を上げ、本業に集中できるようになります。しかし、システム専任者を持たない多くの中小企業や会計事務所では、なかなかそれを実行に移すことはできません。
 現在、新型コロナ禍によって会計事務所も在宅勤務に移行せざるを得ない状況下にあります。テレワークにはペーパーレス環境が必須ですから、その構築をご支援していこうという趣旨で、この研究会を立ち上げました。
 われわれの十数年に及ぶデジタル化の歴史は、言い換えれば失敗の歴史でもあります。研究会の会員の皆様には、その数々の失敗事例から学びながら、効率的にデジタル化、ペーパーレス化を実現していただきたいと考えています。

―― 会計事務所や中小企業の経営者の高齢化が進むなか、デジタル化を推進するのは容易ではないと思いますが、いかがでしょうか。
山口 キーワードはデジタルとアナログの「ハイブリッド」です。これは、小長谷が日頃口にしている言葉で、全てをデジタル化するのではないという意味です。
 ペーパーレスは当グループの強みのひとつですが、冒頭で仰っていただいたとおり、社内では「ペーパーストックレス」と呼んでいます。紙で保管しないという意味です。
 全てをデジタル化しようとすると、抵抗感を持つ方もいらっしゃいます。そこで、デジタルの業務とアナログの業務の線引きを明確にし、アナログのほうがやりやすい業務はそのまま残します。そうすれば、効率的にDXが進行していきます。研究会では、そういったポイントもお伝えしていきます。

「ハーフ革命」でさらなる拡大を目指す

―― 最後に、今後のセブンセンスグループの展望について伺います。
徐 小長谷先生と話し合って最初に決めたのは、「とにかく楽しくやろう」でした。これを前提として、「全て2倍にする」という中期目標を掲げています。3年をめどに生産性、売上、人を2倍にするというものです。
 小長谷先生はこれを「ハーフ革命」という言葉で提唱しています。現在の業務を半分の時間でこなせるようになれば、おのずとあらゆるものが2倍になるというわけです。
 長期的には、そのまま拡大を目指すことになるでしょう。「大きければよい」とは言いませんが、「大は小を兼ねる」で、大きければやりたいこと、やれることが増えると思うからです。
 とはいえ、拡大が目的ではないので、最終目標は定めていません。信じる道を実直に歩んでいけば、今回の統合がそうであったように、おのずと成長・拡大へ導かれていくと思います。
 セブンセンスグループの圧倒的な強みは、旧アイクスグループが築き上げたシステムと知見にあります。IT、DXをさらに推進することで、社会に貢献していきたいと思っています。
小長谷 昨年11月のグループ統合から6カ月が経ちましたが、その半分の期間は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けてきました。しかし、われわれはこの苦境こそ士業としてお客様に貢献し、信頼を得る最大のチャンスと捉えています。
 特に、統合によって情報収集力が格段に上がったことは、クライアントに大きなメリットをもたらしていると思います。刻々と変わる助成金や補助金、協力金などのルールに加え、東京の情報がいち早く得られるようになりました。人が増えたことで、共有スペースにアップされる情報が増えています。まさに規模のメリットです。
 また、同席している2人がそうであるように、同じ志、同じ感性を持った人たち、組織が一緒になったことで、お互いがよいところを吸収し合うという相乗効果も実感しています。
 セブンセンスグループは、徐先生を中心に動いていきます。今後、当グループのITコンサルティングを受けたり、DXの研究会に参加されたりする会計事務所さんの指針となれるような組織づくりを進めたいと考えています。

―― セブンセンスグループの今後のさらなるご躍進に期待しています。本日はありがとうございました。



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株式会社実務経営サービス

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新型コロナウイルス感染症(COVID -19)拡大の影響で、会計事務所のテレワーク(在宅勤務)やモバイルワークを容認する動きが見られるなか、14年前からペーパーレス化を推進してきたセブンセンスグループ(静岡県静岡市/東京都港区)では、いち早く会計事務所のテレワーク体制を構築し、ピンチをチャンスに変えている。同グループは、会計業界のIT化を牽引してきたアイクスグループと、多言語対応でグローバルなニーズに応えてきた東京税経センターグループが、昨年(令和元年)統合して生まれた、全国に10拠点を展開する大型会計グループである。グループ代表の小長谷 康氏と徐 瑛義氏、BPO支援部部長の山口高志氏に、統合の経緯やテレワークを中心とした新しい取り組みについて伺った。(写真は、ウェブ会議サービスを使って行われた取材の様子。聞き手は、株式会社実務経営サービス代表取締役会長の中井 誠)
2020.07.28 16:39:08