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標準報酬月額の特例改定に注意!!

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今日は守田社労士の訪問日です。

リエ「守田先生、こんにちは。ようやく算定基礎届の提出が終わったところですが、今年は、休業手当の支給もあってわかりにくかったです。」

守田「今年は、すべてにおいて新型コロナウイルス感染症の影響が及んでいますね。それによる特例や変更も多いので、いつもと同じと思っても、情報を確認することが大切ですよ。」

リエ「そうですね、気をつけます。」

守田「早速、情報をひとつお知らせします。『標準報酬月額の特例改定』、簡単に言うと『コロナ特例の月額変更』ができることになりました。」

リエ「どういうことですか。通常の月額変更は、固定給の変動があってから3ヵ月間の給与の平均額が、従前の等級から2等級以上の差が生じたとき、ですよね。」

守田「その通りです。今回の特例改定は、令和2年4月から7月までの間の1ヵ月の報酬が、新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、従前の報酬月額と比べて2等級以上下がった場合に、その翌月に改定できるというものです。固定給の変動は必要ありません。」

リエ「えっ、1ヵ月の給与だけで翌月には改定できるのですか。」

守田「そうなんです。例えば、休業が発生して、減額された休業手当の支給があったため、5月の支給給与の総額が、従前の報酬月額よりも2等級以上下がった場合は6月の月額変更に該当します。この『減額された』というところが大事です。休業手当は平均賃金の60%以上を支給しなければいけないのですが、休業手当が100%支給された場合は、残業代が減って2等級以上下がったとしても今回の特例改定の対象ではありませんよ。」

リエ「そういう意味なのですね。該当した場合、保険料は翌月控除していますから、7月の給与からの控除額が減額されるのですね。」

守田「そういうことになります。一番早い4月の給与減額での5月の月額変更を届け出た場合は、6月給与から保険料が減額になりますので、定時決定による10月給与からの変更に比べると、4ヵ月早く保険料が下がることになります。ひとつ注意が必要なのですが、特例改定後に『休業が回復した場合』は、通常の月額変更の届け出を行うことになっています。5月、6月の月額変更は算定基礎届による定時決定を届け出ることで、特例改定の効果は終了となりますが、7月、8月の月額変更を提出した場合は、定時決定が行われませんので、特例改定を提出した後、『休業が回復した場合』に月額変更の届け出が必要です。つまり、特例改定で標準報酬月額を下げたままではいけません、ということのようです。」

リエ「『休業が回復した場合』って、休業が行われなくなったってことですか。」

守田「そうではなくてですね、特例改定を届け出た以降の継続する3ヵ月間の報酬の平均額が、特例改定で決定した標準報酬月額に比べて最初に2等級以上上昇した場合、ということになっています。例えば、6月給与の減額で7月の月額変更を届け出た場合、そのとき標準報酬月額が5等級下がったとします。7月給与以降は、休業日数が少しずつ減ってきて、7月~9月の3ヵ月間は該当しなかったけど、8月~10月の3ヵ月間では2等級の上昇が確認できたとすると、11月の月額変更に該当するということになります。当初の等級よりは3等級下がっていますが、特例改定の効果は終了となります。」

リエ「では、特例改定を提出したら、翌月以降、3ヵ月ごとの報酬の平均額が2等級以上上昇するまで確認し続けないといけないのですね。」

守田「確かに、作業の負担はありますが、コロナの影響による経済的な負担を軽減することは大切だと思いますよ。そしてもうひとつのデメリットも忘れてはいけません。」

リエ「給付金ですか。」

守田「そうですね。傷病手当金、出産手当金は標準報酬月額に基づいて算出されますので、保険料が減額されるということは、給付額も減額されてしまいます。なので、給付金を受給する予定がある方は今回の特例改定は注意してください。そして、将来もらえる年金額にも少しですが影響が出てきます。」

リエ「手放しでは喜べないですね。」

守田「それぞれの状況や考え方もありますよね。少しでも手取り額を増やしたいと考える方や、保険料額が多少高くても将来に残したいと考える方、一律に決められるものではありませんので、今回の特例は対象者の同意が必要となっています。」

リエ「そういうことですね。少しほっとしました、勝手には決められませんから。」

守田「日本年金機構のホームページに同意書の参考様式が掲載されていますので、希望される方の同意書をもらって保管をお願いしますね。同意書そのものは提出の必要はありませんが、全員の同意をもらったという会社の申立書の提出が必要です。」

リエ「なるほど、会社が責任を持って確認するということですね。」

守田「特例用の月額変更届も会社の申立書も日本年金機構のホームページにフォーマットが掲載されていますので、専用様式で提出してくださいね。提出先は事務センターではなく、管轄の年金事務所ですので間違えないようにしてください。遡及の申請も可能ですが、令和3年2月1日までの受付ですので、決まったら早めに対応されるといいと思います。それともうひとつ、この特例改定は一人1回しか届を出すことができません。5月で届け出たけれど6月にさらに減額したからといって、もう一度届け出ることもできませんし、変更することもできません。いつ、どのタイミングで届け出るのかもご注意ください。最後にもうひとつ、被保険者資格取得後3ヵ月未満の方は対象外となっています。」

リエ「わかりました。対象者全員に説明して対応したいと思います。ありがとうございました。」

※詳細は、日本年金機構ホームページをご確認ください。

日本年金機構 標準報酬月額の特例改定について

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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今日は守田社労士の訪問日です。リエ「守田先生、こんにちは。ようやく算定基礎届の提出が終わったところですが、今年は、休業手当の支給もあってわかりにくかったです。」守田「今年は、すべてにおいて新型コロナウイルス感染症の影響が及んでいますね。それによる特例や変更も多いので、いつもと同じと思っても、情報を確認することが大切ですよ。」リエ「そうですね、気をつけます。」守田「早速、情報をひとつお知らせします。『標準報酬月額の特例改定』、簡単に言うと『コロナ特例の月額変更』ができることになりました。」リエ「どういうことですか。通常の月額変更は、固定給の変動があってから3ヵ月間の給与の平均額が、従前の等級から2等級以上の差が生じたとき、ですよね。」守田「その通りです。今回の特例改定は、令和2年4月から7月までの間の1ヵ月の報酬が、新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、従前の報酬月額と比べて2等級以上下がった場合に、その翌月に改定できるというものです。固定給の変動は必要ありません。」リエ「えっ、1ヵ月の給与だけで翌月には改定できるのですか。」守田「そうなんです。例えば、休業が発生して、減額された休業手当の支給があったため、5月の支給給与の総額が、従前の報酬月額よりも2等級以上下がった場合は6月の月額変更に該当します。この『減額された』というところが大事です。休業手当は平均賃金の60%以上を支給しなければいけないのですが、休業手当が100%支給された場合は、残業代が減って2等級以上下がったとしても今回の特例改定の対象ではありませんよ。」リエ「そういう意味なのですね。該当した場合、保険料は翌月控除していますから、7月の給与からの控除額が減額されるのですね。」守田「そういうことになります。一番早い4月の給与減額での5月の月額変更を届け出た場合は、6月給与から保険料が減額になりますので、定時決定による10月給与からの変更に比べると、4ヵ月早く保険料が下がることになります。ひとつ注意が必要なのですが、特例改定後に『休業が回復した場合』は、通常の月額変更の届け出を行うことになっています。5月、6月の月額変更は算定基礎届による定時決定を届け出ることで、特例改定の効果は終了となりますが、7月、8月の月額変更を提出した場合は、定時決定が行われませんので、特例改定を提出した後、『休業が回復した場合』に月額変更の届け出が必要です。つまり、特例改定で標準報酬月額を下げたままではいけません、ということのようです。」リエ「『休業が回復した場合』って、休業が行われなくなったってことですか。」守田「そうではなくてですね、特例改定を届け出た以降の継続する3ヵ月間の報酬の平均額が、特例改定で決定した標準報酬月額に比べて最初に2等級以上上昇した場合、ということになっています。例えば、6月給与の減額で7月の月額変更を届け出た場合、そのとき標準報酬月額が5等級下がったとします。7月給与以降は、休業日数が少しずつ減ってきて、7月~9月の3ヵ月間は該当しなかったけど、8月~10月の3ヵ月間では2等級の上昇が確認できたとすると、11月の月額変更に該当するということになります。当初の等級よりは3等級下がっていますが、特例改定の効果は終了となります。」リエ「では、特例改定を提出したら、翌月以降、3ヵ月ごとの報酬の平均額が2等級以上上昇するまで確認し続けないといけないのですね。」守田「確かに、作業の負担はありますが、コロナの影響による経済的な負担を軽減することは大切だと思いますよ。そしてもうひとつのデメリットも忘れてはいけません。」リエ「給付金ですか。」守田「そうですね。傷病手当金、出産手当金は標準報酬月額に基づいて算出されますので、保険料が減額されるということは、給付額も減額されてしまいます。なので、給付金を受給する予定がある方は今回の特例改定は注意してください。そして、将来もらえる年金額にも少しですが影響が出てきます。」リエ「手放しでは喜べないですね。」守田「それぞれの状況や考え方もありますよね。少しでも手取り額を増やしたいと考える方や、保険料額が多少高くても将来に残したいと考える方、一律に決められるものではありませんので、今回の特例は対象者の同意が必要となっています。」リエ「そういうことですね。少しほっとしました、勝手には決められませんから。」守田「日本年金機構のホームページに同意書の参考様式が掲載されていますので、希望される方の同意書をもらって保管をお願いしますね。同意書そのものは提出の必要はありませんが、全員の同意をもらったという会社の申立書の提出が必要です。」リエ「なるほど、会社が責任を持って確認するということですね。」守田「特例用の月額変更届も会社の申立書も日本年金機構のホームページにフォーマットが掲載されていますので、専用様式で提出してくださいね。提出先は事務センターではなく、管轄の年金事務所ですので間違えないようにしてください。遡及の申請も可能ですが、令和3年2月1日までの受付ですので、決まったら早めに対応されるといいと思います。それともうひとつ、この特例改定は一人1回しか届を出すことができません。5月で届け出たけれど6月にさらに減額したからといって、もう一度届け出ることもできませんし、変更することもできません。いつ、どのタイミングで届け出るのかもご注意ください。最後にもうひとつ、被保険者資格取得後3ヵ月未満の方は対象外となっています。」リエ「わかりました。対象者全員に説明して対応したいと思います。ありがとうございました。」※詳細は、日本年金機構ホームページをご確認ください。
2020.07.20 17:42:55