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テクノロジーの進歩で会計業界を明るい未来へ導くサン共同税理士法人の取り組み

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RPA導入事務所の先駆けとして、「EzRobot」を使った大幅な業務効率化、売上拡大を実現したサン共同税理士法人(東京都港区)は、その成功体験を活かし、昨年から全国会計事務所に向けたRPA普及活動に取り組むため、会計事務所RPA研究会株式会社(東京都渋谷区)を立ち上げた。現在、サン共同税理士法人におけるRPA稼働状況がじかに見られるオフィス見学会、およびRPA体験会を会計人向けに毎月開催しているが、全て満員御礼となるなど、RPAに対する会計業界の注目度の高さがうかがえる。会計事務所へのRPAの普及は確実に、そして急速に進んでいるようだ。そこで今回は、サン共同税理士法人の代表社員である朝倉 歩氏、レッドスターコンサルティング株式会社代表取締役社長の大野 晃氏、そしてサン共同税理士法人のサポートを受け、ペーパーレス化および、RPAの導入に取り組んでいる田山公認会計士事務所(東京都中央区)所長の田山 毅氏に、会計事務所におけるRPAの導入と運用、そして、目指すべき会計事務所像についてお話を伺った。(写真撮影 大山美穂)

会計事務所へのRPA導入を全面バックアップ

―― サン共同税理士法人は、積極的なIT化戦略で急成長を遂げている事務所です。昨年には、会計事務所におけるRPAの普及を目的に、サン共同RPAコンサルティング株式会社を立ち上げられました。そこで本日は、その取り組みと、サン共同税理士法人が目指す新しい会計事務所像について、朝倉代表と大野取締役、そして、昨年からRPA導入に取り組んでいる田山公認会計士事務所の田山先生にお話を伺います。まずは、サン共同RPAコンサルティングの事業内容についてご紹介ください。
朝倉 ご紹介いただきましたように、サン共同RPAコンサルティングの事業目的は、会計業界にRPAを普及させることです。RPAといってもさまざまなソフトがありますが、そのなかから、最も会計事務所が使いやすいソフトとしてわれわれが選んだ「EzRobot」を使って、各事務所の業務内容や環境に合ったロボットを作製し、導入後のロボット運用についてもご支援させていただいています。
―― RPAは具体的にどのように導入していくのでしょうか。
朝倉 まずはRPAが動きやすいようなIT環境を整備するところからスタートします。必要があれば、現行のソフトを他の会計税務ソフトに変更していただくこともあります。あるいは、エクセルと顧客管理ソフトをつないだり、ロボットを使わずにシステムで完結できるクラウド型システムなどいろいろありますので、まずはそれを導入していただきます。
 また、ロボットを働かせるには、全ての情報がデジタルデータでなければなりませんので、所内のペーパーレス化も同時並行で進めていきます。それらはリモートで進めていきますが、サーバー環境を仮想化していくとデータで遠隔で対応できますので、ペーパーレス化のメリットが生かせます。
―― サーバー環境を仮想化する理由について教えてください。
朝倉 仮想環境とは、パソコンやサーバー内で創り出されたバーチャルな世界をいいますが、サーバー環境を仮想環境にすることで、RPAが稼働する環境を無限に用意することが可能です。通常はロボットの数だけPCを購入する必要がありますが、仮想環境にすることで、全従業員のPCに複数のロボットを導入することが理論上可能になります。
―― そういった環境を整備することが、RPA導入には必要なのですね。
朝倉 必須ではありませんがうまく活用するためにRPA導入だけではなく全体的な整備が必要と考えます。顧客管理ツールシステム、ペーパーレス化、仮想化に取り組みながら、RPAを導入していくことになります。サーバー環境を仮想化するところから始めたり、電子帳票から始めたり、ペーパーレス化から始めたりと、事務所によってさまざまですが、順序でいうと、全体的な構成を検討してからのRPA導入になると思います。

オフィス見学会&RPA体験見学会

―― サン共同税理士法人では、「オフィス見学会&RPA体験見学会」を実施し、田山先生も参加されたそうですが、その後の状況はいかがですか。
田山 昨年10月の事務所見学会・体験会に参加させていただきました。そこから、まさに環境整備に取りかかりましたので、まだまだRPAを使いこなしているというレベルではありません。
朝倉 田山先生の事務所は10月に見学会に参加し、11月中旬からスタートして、次々とシステムを導入されました。これからRPAの導入という流れになっています。
―― 見学会に参加された理由と、感想をお聞かせください。
田山 これまで田山公認会計士事務所は、全て紙で管理している、完全なアナログ事務所でした。ITを取り入れて業務効率化を図らなければならないと思っていたところ、サン共同税理士法人さんから案内が送られてきて、「これだ」と思ったのです。
 実際、見学会でロボットによる経理業務の自動化の様子を目の当たりにして、衝撃を受けました。これから確定申告の時期を迎えるなかで、RPA導入の成果がどう出るのか、とても楽しみにしています。
―― 見学会の概要をご説明ください。
朝倉 見学会は1グループ6~8名のワークショップ形式で行われ、午前の部、お昼の部、午後の部の3部構成となっています。
 午前の部では、サン共同税理士法人の集客、採用、マネジメントなどのノウハウを公開します。お昼の部では、サン共同税理士法人におけるRPAの稼働状況、3画面モニターによる電子調書作成状況、サーバー環境仮想化などを見学していただきます。午後の部では、ロボットの操作方法の説明、ロボットを使いこなすためのエクセル研修などを行い、ロボット作製講習では実際に体験していただきます。
 また、当社では現在、サン共同RPAコンサルティングを中心に、IT、RPA関連の各会計事務所の成功事例が集まってきていますので、それらの情報を見学会に参加された先生方も含め、共有していきたいと考えています。
―― 見学会は定期的に開催されているのでしょうか。
朝倉 見学会は昨年10月からスタートし、毎月開催しています。現在、4月までの日程が決まっています。業界は今が繁忙期ですから、開催するかどうか悩みましたが、RPAの普及は急速に進んでいて、一日も早く導入したいという会計事務所側のニーズを感じましたので、繁忙期にかかわらず定期的に実施していくことにしました。
 当社は規模的にも歴史的にもまだまだ若い組織ですから、IT化を進めやすかった面はありますが、今後、IT体制への取り組みは会計事務所が生き残るための絶対条件になっていくと思いますので、ぜひ、参考にしていただきたいと思っています。

RPA活用による業務効率化の後に何を始めるかが重要

―― RPAを使った会計事務所の新しい働き方について、まずは大野先生からお考えを聞かせてください。
大野 RPAを使うといっても、会計事務所の全ての業務を自動化できるわけではありません。というより、すべき業務とすべきでない業務があります。おおむね、間接業務を自動化して、業務効率化によって生まれた余剰時間を新たな顧客サービスに充てていくという進め方が、基本になると思います。RPA導入によって生まれた余剰時間で何をするかが重要になるということです。
 陥りやすいのが「業務効率化のための自動化」です。大企業でもそれで失敗しているところは少なくありません。業務効率化に投資するわけですから、それを回収していかなければ意味がないのです。
 どのような形で回収するのかというと、まずは売上です。例えば、2人分の単純作業をRPAに任せてその分の労働力を顧客サービスに回すことができれば、売上アップにつながります。
 また、単純に時間が短縮できるだけでなく、マニュアル作りや教育などのマネジメントコストもなくなっていくでしょう。
―― 業務効率化の後に何を始めるかが大事だということですね。田山先生はいかがですか。
田山 単調な作業を減らして、クリエイティブな業務に移行していきたいと考えています。ロボットを使えばそれが可能になるのではということで、私はRPA導入を即断しました。
 まさに、大野先生が仰(おっしゃ)るように、業務効率化の後に何を始めるかが重要で、私としては当然、効率化によって生まれた時間を顧客サービスの充実に充てていきたいと考えています。
 そこでまずは、これまでお客様に対して十分ではなかったことは何か、お客様にとって何が一番よいのかということについて、スタッフ全員で考える時間を用意していきたいと思います。
 1年前にはその言葉すら知らなかったわけですが、RPAに出会えたことはとても幸運だと思っています。
―― 朝倉先生が考える、会計事務所におけるRPAの有効的な活用法についてお聞かせください。
朝倉 RPAの最大の出番は、やはり繁忙期だと思います。繁忙期をできるだけ負担をなくして乗り切る。その準備のために閑散期にRPAを進めているといっても過言ではありません。
 また、確定申告のセットアップや、3月16日以降に残った雑務が意外と大きな負担になりますので、そういったところを自動化していくことで、大幅に負担を減らすことができます。
 その結果、例えば、週休3日体制も可能になるかもしれません。あるいは、1人当たりの売上がアップするかもしれません。さらなる売上の確保、時間の確保につなげていくことが、RPA活用のポイントになるのではないかと思います。

人手不足問題の解決策としてのRPA

―― 人手不足が叫ばれるなか、会計事務所経営も厳しさを増していますが、これからの会計事務所マネジメントについて、意見を伺いたいと思います。
大野 今年、税理士資格の受験者数が3万人を割ったそうです。全国の会計事務所数が約3万とすると、単純に割って1事務所1人という計算になります。しかし、大手が相当数を確保すると考えれば、1人も採れない事務所が少なからず出てくることは想像に難くありません。それどころか、大規模事務所でも十分な人が採れず、「1科目合格者でもいいからきてほしい」という声も聞かれます。それだけ人材不足が深刻化しているのです。
 とはいえ、現在もリーマンショック級のリストラがさまざまな企業で敢行されています。今後、大企業からあぶれた人材が中小企業に流れてくると予想されます。そういった人材を会計事務所が採らない手はありません。何も、会計人材ばかりが会計事務所にとっての人材ではありません。一般企業からの人材も会計事務所の即戦力になり得ると思います。むしろ、営業慣れした、対顧客のコミュニケーションがしっかりとれる人材を確保していくことが大事になってくるのではないでしょうか。
 そもそも、AIやRPAは、コミュニケーション能力を必要とする仕事には不向きですから、対人業務に苦手意識の強いとされる会計業務志望の人材より、一般企業系の人材のほうが売上に貢献してくれるのではないかと思います。
―― サン共同税理士法人では、他業界からも人材を採っていますね。
大野 人材不足といいますが、会計人材に固執しなければ、人材不足などではないと思っています。あまり会計業界の人材、資格の有無ばかりに重点を置かず、未経験者、他業界の経験者などに広く人材を求めていくべきではないでしょうか。
―― 田山先生は、経営者としてどのような点を重視されていますか。
田山 私はとにかく、職員に楽しく仕事をしてもらうことを、常に心がけています。なぜなら、職員が楽しく、また充実感を持って仕事をしていなければ、お客様によいサービスを提供できないと思うからです。ですから、職員一人ひとりに気を配って、働きやすい環境をつくっていくことが、所長である私の役割だと考えています。
 職員の誕生月にケーキを皆で食べる。それだけのことでも雰囲気は変わるものです。楽しそうな皆の顔を見ていると、私もうれしくなります。こういうことは続けていきたいですね。
 今回、RPA導入に踏み切ったのも、最終的な目的はそこにあります。今まで手書きでやっていたものをロボットがやるようになって、仕事が楽になりました。そんな職員さんたちの声を聞いて、私の判断に間違いはなかったと思っています。
―― 朝倉先生はいかがですか。
朝倉 私は、新年初日の挨(あい)拶(さつ)で、一人ひとりが目標を持ってほしいという話をしました。仕事もプライベートも「なんとなく」では充実感が得られません。社員の充実、イコール会社の充実だと思いますので、職場ではもちろん、プライベートでも充実した時間を過ごしてほしいと思います。受験者なら合格を目指す、育児をしているなら子供との時間を増やすなどです。もちろん、そのための環境を整えていくのは私の役割ですから、事業拡大や強固な体制づくりだけでなく、効率化による仕事環境のさらなる改善にも取り組んでいきたいと考えています。
 先ほども話にありましたように、受験者数もここ15年でピークの半分近くまで減少し、2万人も割りそうな勢いですが、税理士法人の数は倍増、かつ大規模化が進んでいます。大手に人材が集中する一方で、中小の事務所は人手不足で、従業員が疲弊している。この構図は当分続くでしょう。
 当事務所は、RPAをはじめとするITや、在宅会計スタッフさんの力を借りて、人手不足問題に対応していくと同時に、ブランド力を上げることで、人手不足に陥らないようなマネジメントに取り組んでいきます。

テクノロジーの進歩とともに歩む、会計業界の明るい未来

―― 最後に、本誌の読者である会計人、これからこの業界を目指される方々に向け、メッセージをお願いします。
田山 今、会計業界は大変革期にありますが、それはまた、大きなチャンスでもあると思います。私がもう10歳、20歳若ければ、もっといろいろなことにチャレンジしていたでしょう。それぐらい、会計業界の未来は再び明るさを取り戻してきたと思います。
 ですから、若い方々には、既成概念にとらわれず、自らが新しい業界をつくっていくんだというくらいの気概を持って仕事に取り組んでいただきたいと思います。
大野 私はかつて、社会保険料なし、月給16万の事務所に勤めたことがあります。仕事は領収書の束を前にひたすら入力です。もしその当時、クラウド会計、RPA、AI記帳などの自動化ツールがあったら、もっと有意義な時間を過ごせたでしょう。
 今は、テクノロジーの進歩によって、経営計画やMAS監査といったコンサルティング領域での仕事が容易になってきました。単純作業などやらなくてもいいし、クリエイティブな仕事に集中できる時代になってきています。とてもうらやましいですね。ですから、これから会計業界を目指そうという方たちには、希望を持っていただきたいと思います。この業界はこれからもっと明るくなっていくはずですからね。
朝倉 その理由を私なりに分析してみます。私が受験生だった当時、受験者数は5万人、税理士の資格を取れば将来安泰といわれていた時代でした。仕事量(中小企業数)が、税理士数を大きく上回っていたのです。
 ところが現在、その需給バランスは逆転し、そのために受験者は激減してしまいました。なぜ、逆転してしまったのでしょうか。中小企業の数が減ったことも一因ですが、テクノロジーの進歩により税理士1人当たりの仕事量が増えたことも大きな要因だと思います。
 しかし、見方を変えれば、会計業界はテクノロジーの進歩によって変革が起きやすい業界だといえます。テクノロジーの進歩に対応できれば生き残れるでしょうが、できなければ淘(とう)汰(た)されていくでしょう。そうやって業界自体が進化していくことができれば、会計業界の明るい未来は、そこにあるのではないでしょうか。むしろ、全く淘汰のない、テクノロジーに関係ない業界こそ、未来はないのではないかと思います。
―― 発想の転換ですね。
朝倉 テクノロジーを活用して、IT×会計税務という路線を進んでいけば、さらに魅力的な業界になっていくと思います。
 受験生の中にはもちろん、法律家としての士業に憧れて税理士を目指している方もたくさんいると思います。ドクターが患者さんから感謝される職業であるのと同様に、税理士もまた、節税やリスク管理などのアドバイスや経営サポートを提供して、会社の社長さんから感謝してもらえる、とてもやりがいのある職業です。努力すればするほど、自分に力がついて、それに伴い、顧客満足度も上がっていく。そのようなやりがいのある仕事ですから、受験生の方々にはぜひ、希望と期待を胸にこの業界に入ってきていただきたいと思います。
―― 大変貴重なお話をありがとうございました。会計業界がますます発展していくことを祈念しています。

執筆者情報

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株式会社実務経営サービス

株式会社実務経営サービスは、会計事務所の成長や発展をご支援している会社です。税理士の先生方を対象とする勉強会「実務経営研究会」の運営、各種セミナー・カンファレンスの企画、会計事務所経営専門誌「月刊実務経営ニュース」の発行を事業の柱としています。おかげさまで2018年に、創業20周年を迎えることができました。

「月刊実務経営ニュース」は、成長の著しい会計事務所、優れた顧問先支援を実践している税理士を取材・紹介し、会計業界の発展に貢献することを目指しています。おもな読者は全国の会計事務所の所長や職員の皆様で、全国に約3万件あるといわれている会計事務所の約1割にご購読いただいています。最新号を無償で読むことができる「Web版実務経営ニュース」もありますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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RPA導入事務所の先駆けとして、「EzRobot」を使った大幅な業務効率化、売上拡大を実現したサン共同税理士法人(東京都港区)は、その成功体験を活かし、昨年から全国会計事務所に向けたRPA普及活動に取り組むため、会計事務所RPA研究会株式会社(東京都渋谷区)を立ち上げた。現在、サン共同税理士法人におけるRPA稼働状況がじかに見られるオフィス見学会、およびRPA体験会を会計人向けに毎月開催しているが、全て満員御礼となるなど、RPAに対する会計業界の注目度の高さがうかがえる。会計事務所へのRPAの普及は確実に、そして急速に進んでいるようだ。そこで今回は、サン共同税理士法人の代表社員である朝倉 歩氏、レッドスターコンサルティング株式会社代表取締役社長の大野 晃氏、そしてサン共同税理士法人のサポートを受け、ペーパーレス化および、RPAの導入に取り組んでいる田山公認会計士事務所(東京都中央区)所長の田山 毅氏に、会計事務所におけるRPAの導入と運用、そして、目指すべき会計事務所像についてお話を伺った。(写真撮影 大山美穂)
2020.03.26 15:24:41