英会話の費用は個人事業の必要経費になりますか?
リエ「黒田さんは英語ができますよね。」
黒田「簡単な単語を使って話すことはできますが。」
リエ「先日、駅で外国人に突然話しかけられ、頭が真っ白になり冷や汗をかきました。」
黒田「その気持ちわかります。」
リエ「片言の英語とジェスチャーを繰り出して、相手に通じたかどうか分かりませんが、何とかその場をしのぎました。」
黒田「それは大変でしたね。日本を訪れる外国人観光客も年々増えてきていますので、これから英語を使う機会が多くなるでしょうね。」
リエ「英語を話せるようになりたいですね。私の従兄も最近英会話教室に通っていると言っていました。従兄は家族で民宿を営んでいる個人事業者ですが、ここのところ外国人の利用客が増え英語での応対に費やす時間が多くなり、思い切って英会話レッスンを受けることにしたそうです。この英会話教室の費用は個人事業の経費になりますか。」
黒田「そうですね。税務上、技能の習得又は研修等のために支出した費用については、所得税法基本通達37-24で『業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。』と規定されていますので、それに照らして判断することになります。外国人の利用客がほとんどで、英会話ができると接客業務の効率も向上し売上の貢献につながるのであれば、直接に要した費用として必要経費として認められるでしょう。
ただし、年間を通してごくわずかの利用客であれば、その経費に私費も含まれていると判断され家事関連費とみなされてしまいます。」
リエ「なるほど、たしか観光シーズンになると外国人利用者の数が増えるそうですが、普段の日はそうでもないと言っていましたので、家事関連費に該当するのではないかと思われます。その場合の経費は、税務上どのような取扱いになるのですか。」
黒田「家事関連費として政令で定めるものは必要経費になりませんが、それ以外の経費については要件を満たしている場合には、必要経費にすることができます。
その要件は、家事上の経費に関連する経費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合と、青色申告者であれば、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことを明らかにできるのであれば、その金額については必要経費に算入して差し支えないとされています。」
リエ「明確に区分できない場合は経費として認めてもらえないのですね。」
黒田「そうことになります。英会話教室の費用については、取引記録に基づき客観的に合理的な判断基準で事業に必要であった部分を計算した上で、必要経費に計上したほうが良いと思われます。個人の業務においては、家事上と業務上の両方にかかわりがある費用が多くありますので、経費にする場合は必要な部分を区分し説明ができるようにしておくことが必要です。」
リエ「分かりました。早速、従兄に説明してあげます。」