飲食店の「容器保証金」の経理処理
リエ「黒田さん教えて頂きたいことがあるのですが。」
黒田「どんなことですか。」
リエ「飲食店で経理事務を始めた友人から、酒屋さんの請求書に記載されている『容器保証金』について、どのように経理処理するのか分からないので教えてほしいと言われました。この『容器保証金』には消費税が賦課されていないとも言っていましたが、私もよくわからないので黒田さんに教えて頂こうと思いまして、そもそも『容器保証金』が何かもよくわからないので、そこから教えて頂けますか。」
黒田「飲食店が、お酒や清涼飲料などを仕入れる際、そのびん等の容器に対して『容器保証金』を支払うケースがあります。この『容器保証金』とは、あくまで容器等の返却を担保するために売主が買主からいったん『容器保証金』を預かり、容器が現実に返却された時に売主から買主に返還するものをいいます。」
リエ「ということは、お互いに保証金を預かったり、預けたりすることになるので、最初に支払う側は『預け金』や『差入保証金』の科目で処理することになるのですか。」
黒田「そうですね。どちらでも構わないと思いますが、支払ったときに『預け金』としたのであれば、容器を返却した時に受け取った金額も『預け金』で処理することになりますね。このような『容器保証金』は、一種の預り金としての性格を有することから、消費税においては不課税とされています。」
リエ「だから請求書に消費税が賦課されていないと言っていたのですね。ところで、びんが割れたり、紛失したりして容器を返却することができなくなった場合、『容器保証金』は返してもらえませんよね。その場合は何かの費用科目で『預け金』を減額させることになると思いますが、その場合の消費税はどのようになるのですか。」
黒田「その返還しないこととされた『容器保証金』について、当事者間でどのような取決めをしているかによって取扱いが異なります。返還されない『容器保証金』について、返却されなかった容器等を売却代金として処理すると決めているのであれば、消費税の課税対象取引になります。一方で返還されない『容器保証金』を借りているものを破損等を理由に返却しなかったことによる損害賠償金として処理すると決めているのであれば、消費税の課税対象外となります。」
リエ「同じ取引なのに取決め次第で消費税の取扱いが異なるのですね。」
黒田「そうですね。課税側としては、当事者間で同じ処理をしているのであれば基本的に課税上の弊害はないという判断でしょうね。」
リエ「なるほど、課税対象でも対象外でも売主と買主が同じ処理をしていれば、両者を合わせた消費税納付額は変わらないということですね。」
黒田「その通りです。」
リエ「どのように処理するかは、請求書はもちろんですが契約書等も確認したうえで判断する必要がありますね。さっそく友人に今のお話を伝えてあげます。」