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特別寄与料制度の創設に伴う税務上の取扱い

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リエ「令和元年7月1日より施行された特別寄与料制度とは、どのようなものでしょうか。」

黒田「特別寄与料制度とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始後、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭を請求することができるというもので、平成30年度民法改正により創設されました。」

リエ「なぜこのような制度が創設されたのでしょうか。」

黒田「もともと民法には寄与分という規定があり、相続人が被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、その寄与分を相続分に加えることができるというものです。しかし、寄与分は相続人が対象となりますので、例えば被相続人の息子の妻などの相続人以外の人が被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持に貢献した場合であっても、相続人でないことから寄与分を主張することができませんでした。このように療養看護を一切行わなかった相続人が遺産を取得できるのに対し、療養看護をした相続人以外の者が何ら遺産を取得できないのは不公平であるといった意見もあり、相続人以外の人の貢献を考慮するための方策として特別寄与料制度が創設されました。」

リエ「なるほど。確かにこの制度によって、相続人以外の人の介護などによる貢献に対して金銭的に報いることができますね。特別寄与料を請求できる人とはどのような人でしょうか。」

黒田「特別寄与料を請求できる人を特別寄与者といいますが、特別寄与者になる資格を有する人は被相続人の親族であり、相続人、相続放棄者、欠格又は廃除により相続権を失った者は対象となりません。親族の範囲は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。」

リエ「特別寄与料は税務上、どのような取扱いになりますでしょうか。」

黒田「特別寄与料は、被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課せられます。一方、特別寄与料を支払う相続人は、その相続人が相続又は遺贈により取得した財産から特別寄与料を控除することができます。なお、相続人ではない特別寄与者は原則として相続税額の2割加算の適用対象となり、相続税の納税総額が増加する点や特別寄与者が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続税の計算上、相続税の課税価格にその贈与財産の加算とその贈与財産について納付した贈与税額の控除の適用があることに留意する必要があります。」

リエ「特別寄与料の支払がある場合には、相続税の納税総額が増加するんですね。ほかに注意する点はありますでしょうか。」

黒田「特別寄与料は原則として金銭による支払とされています。相続人が特別寄与料を金銭での支払に代えて不動産や有価証券などの資産を移転した場合、その相続人が代物弁済したものとして取り扱われることが考えられます。代物弁済は税務上、その代物弁済により移転する不動産や有価証券等の資産を、その代物弁済により消滅する債務の額で譲渡したものとして取り扱われますので、特別寄与料を金銭以外の資産で給付する場合には相続税のほか、譲渡所得に対する課税リスクも考慮する必要がありますので注意が必要です。」

リエ「わかりました。ありがとうございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「令和元年7月1日より施行された特別寄与料制度とは、どのようなものでしょうか。」黒田「特別寄与料制度とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始後、相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭を請求することができるというもので、平成30年度民法改正により創設されました。」リエ「なぜこのような制度が創設されたのでしょうか。」黒田「もともと民法には寄与分という規定があり、相続人が被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、その寄与分を相続分に加えることができるというものです。しかし、寄与分は相続人が対象となりますので、例えば被相続人の息子の妻などの相続人以外の人が被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持に貢献した場合であっても、相続人でないことから寄与分を主張することができませんでした。このように療養看護を一切行わなかった相続人が遺産を取得できるのに対し、療養看護をした相続人以外の者が何ら遺産を取得できないのは不公平であるといった意見もあり、相続人以外の人の貢献を考慮するための方策として特別寄与料制度が創設されました。」リエ「なるほど。確かにこの制度によって、相続人以外の人の介護などによる貢献に対して金銭的に報いることができますね。特別寄与料を請求できる人とはどのような人でしょうか。」黒田「特別寄与料を請求できる人を特別寄与者といいますが、特別寄与者になる資格を有する人は被相続人の親族であり、相続人、相続放棄者、欠格又は廃除により相続権を失った者は対象となりません。親族の範囲は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。」リエ「特別寄与料は税務上、どのような取扱いになりますでしょうか。」黒田「特別寄与料は、被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課せられます。一方、特別寄与料を支払う相続人は、その相続人が相続又は遺贈により取得した財産から特別寄与料を控除することができます。なお、相続人ではない特別寄与者は原則として相続税額の2割加算の適用対象となり、相続税の納税総額が増加する点や特別寄与者が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、相続税の計算上、相続税の課税価格にその贈与財産の加算とその贈与財産について納付した贈与税額の控除の適用があることに留意する必要があります。」リエ「特別寄与料の支払がある場合には、相続税の納税総額が増加するんですね。ほかに注意する点はありますでしょうか。」黒田「特別寄与料は原則として金銭による支払とされています。相続人が特別寄与料を金銭での支払に代えて不動産や有価証券などの資産を移転した場合、その相続人が代物弁済したものとして取り扱われることが考えられます。代物弁済は税務上、その代物弁済により移転する不動産や有価証券等の資産を、その代物弁済により消滅する債務の額で譲渡したものとして取り扱われますので、特別寄与料を金銭以外の資産で給付する場合には相続税のほか、譲渡所得に対する課税リスクも考慮する必要がありますので注意が必要です。」リエ「わかりました。ありがとうございました。」
2019.12.09 16:32:40