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支払調書って何?

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支払調書とは?

あゆみ:税務署からまた大きな封筒が届きました。

ケン:前回は年末調整の封筒でしたから今回は法定調書の封筒ですね。
来年の1月31日までに税務署や市区町村に提出するものです。

あゆみ:何を提出するの?

ケン:簡単に言えば、費用などを誰にいくら支払ったか、についての書類です。法律により提出が義務付けられていて、様式も決まっています。
具体的には
①給与所得の源泉徴収票
②退職所得の源泉徴収票
③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
④不動産の使用料の支払調書
⑤不動産の譲受けの対価の支払調書
⑥不動産の売買の貸付けのあっせん手数料の支払調書
です。
これらのものを法定調書と言います。
税務署に提出する際はこれらの法定調書の枚数を記載した「法定調書合計表」にこれらの法定調書を添付して提出します。

あゆみ:どうして提出することになったの?

ケン:はい。支払った方から調書を提出してもらうことによって、その支払先は記載金額の収入があることになります。税務当局は支払調書をその支払先の方がきちんと収入として計上しているかどうかの資料にする意味があります。

給与所得の源泉徴収票

あゆみ:「給与所得の源泉徴収票」って年末調整後に本人に渡すものよね。これって税務署にも提出するの?

ケン:はい、提出するものとしないものがあります。税務署に提出するものは範囲が決められています。
年末調整をしたものについては、
・役員:150万円を超えるもの
・弁護士等:250万円を超えるもの
・そのほかの方:500万円を超えるもの
年末調整をしなかったものについては、
・退職者など:250万円をこえるもの(うち役員:50万円を超えるもの)
・年間の給与が2,000万円をこえるもの
・乙欄(または丙欄)適用者:50万円を超えるもの
と決められています。
この範囲外のものについては税務署に提出する必要はありませんが、全員の給与支払報告書をその人が住んでいる市区町村に提出します。給与支払報告書の記載内容は源泉徴収票と同じです。

あゆみ:わかったわ。結構面倒ね。

退職所得の源泉徴収票

あゆみ:「退職所得の源泉徴収票」は退職した人がいなければ提出する必要はなし?

ケン:必要ありません。
「退職所得の源泉徴収票」は、退職し退職手当等を支払った方に作成し交付することになっていますので、退職した方がいなければ提出する必要はありません。
ちなみにですが、税務署に提出するものは役員のものです。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

あゆみ:報酬とかの支払調書って誰に払ったものが該当するの?

ケン:これが一番ややこしいかもしれません。
それぞれにおいて提出範囲が決められています。
・外交員、集金人、電力量計の検針人やプロボクサー等、ホステス等、広告宣伝のための賞金:50万円を超えるもの
・馬主へ支払う賞金:1回につき75万円を超えるもの
・プロ野球選手に支払う年棒、契約金:1人につき5万円を超えるもの
・弁護士や税理士等に対する報酬、作家への原稿料、画家への画料、講演料等:5万円を超えるもの
などとなっています。
これらの金額については消費税抜きの金額で判断してもよいこととなっています。

不動産の使用料等の支払調書

あゆみ:「不動産の使用料等の支払調書」って、例えばこの店を賃借している大家さんと賃料を記載すればいいの?

ケン:その通りです。
大家さんが個人であれば、今年1年の合計賃料を記載します。権利金や更新料も記載してください。その金額が15万円を超えるものを提出します。
支払先が法人の場合には、権利金や更新料のみの記載でよく、これらの支払がなく、家賃の支払いのみの場合には提出する必要はありません。
また、一時的な賃借料や部分的な賃借料、借地権や借家権について支払ったときの名義書換料などは記載の対象となります。

あゆみ:わかったわ。

不動産等の譲受けの対価の支払調書

あゆみ:「不動産等の譲受けの対価の支払調書」って何?

ケン:不動産を買ったときに提出する支払調書です。
提出するものは、支払金額が100万円を超えるものです。
不動産を買ったときだけでなく、交換、競売、現物出資などの場合にもこの「譲受け」に含まれます。

あゆみ:「譲受け」ってそういう意味ね。

不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

あゆみ:「あっせん手数料」の支払調書ってどういうときに提出するの?

ケン:不動産を売ったり買ったりときに仲介してもらった不動産業者の支払った仲介手数料について、15万円を超えるものがあれば提出します。
この支払調書は「不動産の使用料等の支払調書」と「不動産の譲受けの対価の支払調書」のそれぞれの「あっせんをした者」欄に記載して提出した場合には、提出する必要はありません。

マイナンバーまたは法人番号の記載

あゆみ:いろいろ教えてくれてありがとう。他に注意することある?

ケン:これらの支払調書には、支払先が個人の場合にはマイナンバー、法人の場合には法人番号を記載することになっています。個人の方には連絡を取りマイナンバーを聞く必要があります。その際は個人情報の取り扱いについては十分ご注意ください。法人番号は法人番号検索サイトで番号を検索できます。

あゆみ:1月はいつもの仕事にこの仕事がプラスされるのね。忙しいわ。

ケン:実はこれだけではありません。償却資産申告書もありますので、次回また。

執筆者情報

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清水 透

清水透税理士事務所 所長 税理士(登録番号104689)

平成18年2月税理士登録
大手税理士事務所に勤務しつつ、平成25年4月~平成28年1月の間みずほ銀行に出向。
平成28年2月独立開業
法人税・消費税・所得税・相続税の申告業務の中でも、法人オーナーに対する相続税約1億円を節税する株式承継の提案や個人の不動産オーナーに対する相続税約5,000万円を節税する提案などの経験。
また税制改正や事業承継の全国でのセミナー、全国のお客様に対し法人の株式承継対策や個人の方々の相続税対策の提案に毎日奔走中。
「気がつけばあなたも相続税?」2011.9(共著)出版
協力:株式会社実務経営サービス
https://www.jkeiei.co.jp/

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あゆみ:税務署からまた大きな封筒が届きました。ケン:前回は年末調整の封筒でしたから今回は法定調書の封筒ですね。来年の1月31日までに税務署や市区町村に提出するものです。あゆみ:何を提出するの?ケン:簡単に言えば、費用などを誰にいくら支払ったか、についての書類です。法律により提出が義務付けられていて、様式も決まっています。具体的には①給与所得の源泉徴収票②退職所得の源泉徴収票③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書④不動産の使用料の支払調書⑤不動産の譲受けの対価の支払調書⑥不動産の売買の貸付けのあっせん手数料の支払調書です。これらのものを法定調書と言います。税務署に提出する際はこれらの法定調書の枚数を記載した「法定調書合計表」にこれらの法定調書を添付して提出します。あゆみ:どうして提出することになったの?ケン:はい。支払った方から調書を提出してもらうことによって、その支払先は記載金額の収入があることになります。税務当局は支払調書をその支払先の方がきちんと収入として計上しているかどうかの資料にする意味があります。
2019.11.19 16:33:13