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定期保険及び第三分野保険に係る保険料の税務上の取扱い改正

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リエ「法人向けの定期保険や第三分野保険の保険料に関して取扱いが改正されたと聞きましたが、その内容について教えてください。」

黒田「わかりました。定期保険及び第三分野保険(以下「定期保険等」という)に係る保険の取扱いに関する法人税基本通達の改正により、従来は保険商品の類型ごとに定められていた個別通達等が廃止され、最高解約返戻率を基準として支払保険料のうち資産計上すべき割合を定める『定期保険等の定期保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い等』が新設されました。この取扱いは、令和元年7月8日以後の契約に係る保険料について適用されます。」

リエ「保険商品の類型ごとに定められていた定期保険等の取扱いが、最高解約返戻率に焦点をあてて統一的な取扱いに改正されたんですね。」

黒田「はい。定期保険等の支払保険料は、原則として、期間の経過に応じて損金に算入されます。ただし、保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%を超える場合には、支払保険料のうち一定の割合を資産計上することとなります。」

リエ「保険期間が3年未満の定期保険等や最高解約返戻率が50%以下の定期保険等に係る保険料ついては、期間の経過に応じて損金に算入できるんですね。」

黒田「そうです。なお、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない又はごく少額の払戻金のある定期保険等で保険料の払込期間が保険期間より短いものについては、その事業年度に支払った一の被保険者に係るすべての保険料の合計額が30万円以下の場合、その支払日の属する事業年度の損金に算入することができます。この取扱いは、令和元年10月8日以後の契約に係る保険料について適用されますので、短期払いのがん保険等に係る保険料については、廃止前のがん保険通達(平成24年4月27日付課法2-5課審5-6『法人が支払うがん保険(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて』の(3)例外的取扱い)の取扱いの例によるため、支払日の属する事業年度の損金に算入することができます。」

リエ「適用開始日が違うので注意しなければなりませんね。では、今回改正で資産計上のルールは具体的にどのように見直されたのでしょうか。」

黒田「資産計上のルールは、まず最高解約返戻率が50%超70%以下の場合、保険期間の当初40%に相当する期間を資産計上期間として、支払保険料の40%相当額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、保険期間の75%に相当する期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間で均等に取り崩すことにより損金に算入されることになります。なお、最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の定期保険等の保険料については、資産計上する必要がなく、期間の経過に応じて損金に算入することとなります。ただし、一の被保険者が令和元年7月8日以後に2以上の定期保険等に加入した場合、その加入しているすべての定期保険等に係る年換算保険料相当額の合計額で判定することとなりますので、注意が必要です。」

リエ「1人の被保険者に対して定期保険等を追加で加入する場合などは、既契約の年換算保険料を確認して経理処理の変更が必要か注意しなければなりませんね。」

黒田「次に、最高解約返戻率が70%超85%以下の場合、保険期間の当初40%に相当する期間を資産計上期間として、支払保険料の60%相当額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、保険期間の75%に相当する期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間で均等に取崩すことにより損金に算入されることになります。」

リエ「資産計上期間の資産計上割合が40%から60%になることと年換算保険料相当額が30万円以下の場合の取扱いがないことが、最高解約返戻率が50%超70%以下の場合と異なる点ですね。」

黒田「そうなります。最後に最高解約返戻率が85%超の場合、原則として、保険期間の開始の日から『保険期間の各期間のうち解約返戻率が最高となる期間の終了の日』又は『保険期間の各期間における解約払戻金相当額の対前年増加額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合、その期間のうち最も遅い期間の終了の日』のいずれか遅い日までを資産計上期間として、支払保険料に、保険期間の当初10年間は最高解約返戻率の90%、それ以降は最高解約返戻率の70%を乗じた金額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間において、資産計上された金額を均等に取り崩すことにより損金に算入されることになります。なお、資産計上期間が5年未満の場合は保険期間の当初5年間が資産計上期間とされます。ただし、保険期間が10年未満である場合には、保険期間の当初50%に相当する期間が資産計上期間となります。」

リエ「資産計上期間のいつまでになるか注意が必要ですね。新たに保険の加入をする際は、経理処理について確認させていただきます。ありがとうございました。」

(注1)保険期間…保険契約に定められている契約日から満了日(終身の第三分野保険については、被保険者の年齢が116歳に達する日)までの期間
(注2)保険期間中の各期間…保険期間の開始日(契約日)以後1年ごとに区分した各期間
(注3)年換算保険料相当額…保険料の総額÷保険期間の年数
(注4)解約返戻率…保険契約時の解約返戻金相当額÷解約払戻金を受けることになるまでに支払う保険料の合計額
(注5)最高解約返戻率…保険期間のうち解約返戻率が最も高い割合となる期間の割合

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「法人向けの定期保険や第三分野保険の保険料に関して取扱いが改正されたと聞きましたが、その内容について教えてください。」黒田「わかりました。定期保険及び第三分野保険(以下「定期保険等」という)に係る保険の取扱いに関する法人税基本通達の改正により、従来は保険商品の類型ごとに定められていた個別通達等が廃止され、最高解約返戻率を基準として支払保険料のうち資産計上すべき割合を定める『定期保険等の定期保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い等』が新設されました。この取扱いは、令和元年7月8日以後の契約に係る保険料について適用されます。」リエ「保険商品の類型ごとに定められていた定期保険等の取扱いが、最高解約返戻率に焦点をあてて統一的な取扱いに改正されたんですね。」黒田「はい。定期保険等の支払保険料は、原則として、期間の経過に応じて損金に算入されます。ただし、保険期間が3年以上で最高解約返戻率が50%を超える場合には、支払保険料のうち一定の割合を資産計上することとなります。」リエ「保険期間が3年未満の定期保険等や最高解約返戻率が50%以下の定期保険等に係る保険料ついては、期間の経過に応じて損金に算入できるんですね。」黒田「そうです。なお、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない又はごく少額の払戻金のある定期保険等で保険料の払込期間が保険期間より短いものについては、その事業年度に支払った一の被保険者に係るすべての保険料の合計額が30万円以下の場合、その支払日の属する事業年度の損金に算入することができます。この取扱いは、令和元年10月8日以後の契約に係る保険料について適用されますので、短期払いのがん保険等に係る保険料については、廃止前のがん保険通達(平成24年4月27日付課法2-5課審5-6『法人が支払うがん保険(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて』の(3)例外的取扱い)の取扱いの例によるため、支払日の属する事業年度の損金に算入することができます。」リエ「適用開始日が違うので注意しなければなりませんね。では、今回改正で資産計上のルールは具体的にどのように見直されたのでしょうか。」黒田「資産計上のルールは、まず最高解約返戻率が50%超70%以下の場合、保険期間の当初40%に相当する期間を資産計上期間として、支払保険料の40%相当額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、保険期間の75%に相当する期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間で均等に取り崩すことにより損金に算入されることになります。なお、最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の定期保険等の保険料については、資産計上する必要がなく、期間の経過に応じて損金に算入することとなります。ただし、一の被保険者が令和元年7月8日以後に2以上の定期保険等に加入した場合、その加入しているすべての定期保険等に係る年換算保険料相当額の合計額で判定することとなりますので、注意が必要です。」リエ「1人の被保険者に対して定期保険等を追加で加入する場合などは、既契約の年換算保険料を確認して経理処理の変更が必要か注意しなければなりませんね。」黒田「次に、最高解約返戻率が70%超85%以下の場合、保険期間の当初40%に相当する期間を資産計上期間として、支払保険料の60%相当額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、保険期間の75%に相当する期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間で均等に取崩すことにより損金に算入されることになります。」リエ「資産計上期間の資産計上割合が40%から60%になることと年換算保険料相当額が30万円以下の場合の取扱いがないことが、最高解約返戻率が50%超70%以下の場合と異なる点ですね。」黒田「そうなります。最後に最高解約返戻率が85%超の場合、原則として、保険期間の開始の日から『保険期間の各期間のうち解約返戻率が最高となる期間の終了の日』又は『保険期間の各期間における解約払戻金相当額の対前年増加額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合、その期間のうち最も遅い期間の終了の日』のいずれか遅い日までを資産計上期間として、支払保険料に、保険期間の当初10年間は最高解約返戻率の90%、それ以降は最高解約返戻率の70%を乗じた金額を資産計上し、残額が損金に算入されます。資産計上期間を経過した後は、支払保険料を保険期間の経過に応じて損金に算入するとともに、資産計上された金額については、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間を経過した後から保険期間の終了の日までの取崩期間において、資産計上された金額を均等に取り崩すことにより損金に算入されることになります。なお、資産計上期間が5年未満の場合は保険期間の当初5年間が資産計上期間とされます。ただし、保険期間が10年未満である場合には、保険期間の当初50%に相当する期間が資産計上期間となります。」リエ「資産計上期間のいつまでになるか注意が必要ですね。新たに保険の加入をする際は、経理処理について確認させていただきます。ありがとうございました。」(注1)保険期間…保険契約に定められている契約日から満了日(終身の第三分野保険については、被保険者の年齢が116歳に達する日)までの期間(注2)保険期間中の各期間…保険期間の開始日(契約日)以後1年ごとに区分した各期間(注3)年換算保険料相当額…保険料の総額÷保険期間の年数(注4)解約返戻率…保険契約時の解約返戻金相当額÷解約払戻金を受けることになるまでに支払う保険料の合計額(注5)最高解約返戻率…保険期間のうち解約返戻率が最も高い割合となる期間の割合
2019.09.20 16:13:29