医療費から差引き不要の「がん診断給付金」
リエ「黒田さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
黒田「はい、リエちゃん。何かありましたか?」
リエ「私の伯父が健康診断で異常がみつかって再検査を受けたところ、がんと診断されたんです。」
黒田「えっ、がんですか。それは心配ですね。」
リエ「幸いなことに初期のがんだったので、先日手術を受けて無事退院しました。伯父はがん保険に入っていて、今回の診断でがん診断給付金100万円と、がん入院給付金10万円を受け取ったそうです。今回の入院・手術で25万円の医療費がかかったんですけど、この場合、医療費控除って受けられますか?」
黒田「はい、医療費控除は受けられますよ。医療費控除は所得税法73条1項で、その年中に支払った医療費の金額から、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額を差し引くことと規定されています。この『保険金、損害賠償金その他これらに類するもの』とは、所得税基本通達73-8で『損害保険契約又は生命保険契約(これらに類する共済契約を含む。)に基づき医療費の補填を目的として支払を受ける傷害費用保険金、医療保険金又は入院費給付金等(これらに類する共済金を含む。)』としています。今回受け取ったがん入院給付金10万円は医療費を補填する保険金に該当しますが、がん診断給付金100万円は、がんと診断されたことにより給付される保険金で、入院や手術の医療費等の補填を目的として給付されたものではないので、医療費から差し引く必要はありません。ですから、今回の入院・手術でかかった25万円の医療費から、がん入院給付金10万円を差し引いた15万円が医療費控除対象額となります。」
リエ「がん診断給付金の100万円は医療費から差し引かなくていいんですね。」
黒田「ちなみに、損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金は、所得税法施行令第30条で非課税と規定されています。」
リエ「今回の給付金に所得税はかからないんですね。よかった~。病気にかかるとお金がかかるから、私もそろそろがん保険入ろうかな。」
黒田「保険は契約すると長い付き合いになりますので、契約する場合は、保障内容を慎重に検討してくださいね。」