特定同族会社事業用宅地等の適用条件
リエ「黒田さん、こんにちは。今年の梅雨はしっかり雨が降りますね。」
黒田「リエちゃん、こんにちは。この時期に降らないと夏になってから水不足になってしまうから、適度な雨量は我慢しないといけませんね。」
リエ「お天気のせいか暗い話題になってしまうのですが、ご近所の八百屋さんのおばあさんが最近亡くなってしまったんです。おばあさんの自宅がお店の二階だったこともあって、よく店先でおしゃべりしていたんですよ。」
黒田「それは寂しいですね。お店の営業は続けられるのでしょうか。」
リエ「お店は以前から息子さんが経営を引き継いでいたので大丈夫だと思います。ただ、おばあさんは資産家だったようで、相続税について困っていましたね。」
黒田「息子さんが相続するのでしょうね。特定居住用宅地等に該当すれば、小規模宅地等の特例を使って土地の評価額を80%減額することができます。息子さんとおばあさんは同居していたんでしょうか。」
リエ「いいえ、奥さんの実家に住んでいるという話でした。自分の親とは日中一緒にいるし、お店の家賃という形で生活の援助もしているから、奥さんの両親と同居するのだと言っていました。」
黒田「なるほど、両家のご両親とも大事にしているんですね。となると、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用するのは難しそうですね。家賃を払っていたということであれば貸付事業用宅地等に該当するでしょうから、50%減額はできるかもしれません。また特定同族会社事業用宅地等に該当するようであれば80%減額できますよ。」
リエ「それも小規模宅地等の特例ですよね。貸付事業用宅地等は以前教わったような気がします。特定同族会社事業用宅地等にはどんな条件があるんですか。」
黒田「まず特定同族会社事業用宅地等というのは、被相続人が所有する土地で、被相続人や被相続人の家族がオーナーとして経営している会社が事業(貸付事業を除く)を行うために使用している土地のことをいいます。この場合その土地は自宅の敷地と同様に今後の生活のために必要不可欠なものといえることから、特定居住用宅地等と同じ80%減額の特例が適用できることになっています。そして、この特例を適用するためのポイントは二点です。(1)相続開始直前において被相続人及び被相続人の親族等がその会社の発行済株式の総数又は出資額の総額の50%超を有していること、(2)相続税の申告期限においてその会社の役員であること、です。土地の保有継続要件(相続税の申告期限まで有していること)もありますが、お店の営業を続けるのであれば大丈夫でしょう。」
リエ「なるほど。株式の状況はわかりませんが、息子さんが社長と言っていたので、適用要件を満たせそうです。」
黒田「ただ減額できるのは一階の店舗部分のみなので、土地全体から店舗使用分を按分計算した部分のみが減額対象となります。」
リエ「それでも80%減額は大きいですよね。今度アドバイスしてみようと思います、黒田さんありがとうございました。」
黒田「どういたしまして。リエちゃんのように、ご近所の方から愛されるお店のようですから、今後も頑張ってほしいですね。」