小規模宅地等の課税特例制度の趣旨と概要
[1] 規定創設の趣旨
被相続人からの相続又は遺贈により取得した財産(宅地等)の中には、当該財産を承継した相続人等の生活基盤となるべきものでその処分に相当の制約や困難が伴うものが存することが想定されます。一方、宅地等の評価額がいわゆる地価公示価格の80%水準相当額で評価(平成4年以降)されることとなりますので、このような宅地等については、当該評価水準による相続税評価額に基づいて相続税額を算出することは納税資金の欠如等相当の問題を生じさせる原因にもなりかねません。
そこで、被相続人の相続財産である一定の宅地等については、その処分の制約性をしんしゃく配慮して一定のしんしゃく配慮(減額措置の適用)をしてこれを相続税の課税価格に算入するという規定(措法69の4)が設けられています。
この規定は、当初、昭和50年に個別通達(「事業又は居住の用に供されていた宅地の評価について」(昭50.6.20直資5-17通達、昭58.3.31直評4、直資2-95通達により廃止))により設けられた評価上のしんしゃく配慮に関する定めが昭和58年に租税特別措置法の規定に昇格し、その後、数次の改正を経て今日に至っています。
(注) 当初は、措置法第69条の3として規定されていましたが、平成12年度の税法改正により条文番号が変更となり、現在では措置法第69条の4とされています。
[2] 規定の概要
個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます。)の事業(事業に準ずるものとして相当の対価を得て継続的に行う不動産(土地等又は建物等)の貸付けを含みます。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない一定の事由により相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかった場合(一定の用途に供されている場合を除きます。)における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含みます。)に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。)で一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもので一定のもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限ります。以下「特例対象宅地等」といいます。)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得した特例対象宅地等又はその一部でこの特例の規定の適用を受けるものとして選択したもの(以下「選択特例対象宅地等」といいます。)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」といいます。)に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次に掲げる小規模宅地等の区分に応じて、それぞれに定める割合を乗じて計算した金額とされています。(措法69の4①)
番 | 小規模宅地等の区分 | 課税価格算入割合 |
[参考] 限度面積(最大) |
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① | 特定事業用宅地等である小規模宅地等 | 20% | 400㎡ |
② | 特定居住用宅地等である小規模宅地等 | 20% | 330㎡ |
③ | 特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 | 20% | 400㎡ |
④ | 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 | 50% | 200㎡ |
このコンテンツの内容は、平成31年2月1日現在の法令等によっています。