住宅ローン控除と居住用財産の3000万円特別控除の選択
リエ「今度、知り合いの方が今の自宅を売却して、住宅ローンを組んで新しい住まいを買うようなんです。それで、どうやら旧自宅の売却で譲渡益が出るらしく、この譲渡益に対して3000万円特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例)を適用して税金(所得税、住民税)を抑えるのか、それとも新しい住居について住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を適用して毎年(平成31年適用開始の場合、控除期間10年)の税金を抑えるのかで迷っているらしいんです。」
黒田「なるほど~。3000万円特別控除と住宅ローン控除は併用適用ができませんからね。そのお知り合いの方は勉強されていますね。」
リエ「そうみたいです。それでどちらの控除を適用したほうが有利か聞かれたんですけど、どう判断したら良いのか分からなくて。」
黒田「う~ん、個々の状況をよく聞かないと簡単には判断がつきませんが、一般的な説明で言いますと、今回の譲渡益に対して3000万円特別控除を適用した場合に軽減される税額と、住宅ローン控除を適用して今後一定期間軽減される見込税額の合計金額を比較してみて、より節税効果があるほうを選択することになります。」
リエ「税額のシミュレーションか~。3000万円特別控除を適用して譲渡益に係る税金を抑えて、住宅ローン控除の適用を受けないか、それとも、3000万円特別控除を適用せず譲渡益に係る税金を支払い、住宅ローン控除の適用を受け一定期間の税額を抑えるかの選択をするわけですね。」
黒田「はい。ただ、そのシミュレーションの際に3000万円特別控除による減税額ははっきり分かりますが、住宅ローン控除を適用しての減税額については、毎年の所得の多寡等により減税額が変動する可能性があるため、将来的な減税見込額の合計をはっきり見通すのが難しい場合があります。ですので、収入の見通しや将来設計を考えた上でどちらが有利になるかを判断しないといけないですね。」
リエ「5年、10年先が同じ状況とは限らないですからね。」
黒田「そうなんです。余談ですが、今日の併用適用できないという話は、住宅ローン控除を適用する年(居住の用に供した年)とその前後2年ずつの計5年間は3000万円特別控除を適用できないとしているものなので、あまりケースは少ないと思いますが、例えば、住宅ローン控除適用後、3年目に旧自宅を売却して3000万円特別控除を適用するなど、それぞれ控除適用の期間をずらした場合には両方の控除を受けることは可能です。」
リエ「そっか~。でも通常は自宅の買換えでそんな間をあけることはないですもんね。確かにあまりケースとしては多くなさそう。黒田さん、今日はありがとうございました。」