株式会社新規設立のポイント
リエ「黒田さん。私の知人が個人事業主として編集の仕事をしているのですが、これからは株式会社を設立してやっていきたいそうなのです。株式会社を新規設立するのって何をどうすればいいのでしょうか?」
黒田「それはおめでとうございます。株式会社の設立登記手続き自体は司法書士に任せるにしても、定款の内容はご自分で決めなければなりません。」
リエ「定款の内容とはどういったものを決めるのですか?」
黒田「まずは会社の顔となる商号ですね。株式会社〇〇、〇〇株式会社どちらでも構いません。ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、アラビア数字が使えますが、ローマ数字やアルファベット以外の外国語は使えません。記号も使えるものと使えないものがあります。」
リエ「商号は大分前から考えていたみたいで、既に決まっているそうです。それよりも資本金をいくらにしたらいいかで悩んでいるみたいです。」
黒田「資本金は少額でも構いません。極端な話、1円でも会社設立は可能です。ただ、資本金はその会社の信用にも関わってきます。会社の登記簿謄本には資本金の額が記載されており、誰でも見ることができます。」
リエ「たしかに、新たな取引先が登記簿謄本を見た時に、資本金1円の会社と取引したいとは思いませんよね。」
黒田「税金面でみてみますと、資本金が1000万円未満の会社は第1期目・2期目の消費税納税義務が原則的には免除されます。(*注1)それから資本金が1000万円以下の会社ならば、都道府県や市区町村に納付する均等割が最低金額で済みます。ですから、100万円~900万円の範囲で資本金を決めるのが妥当ではないでしょうか。」
(注1)第1期目開始の日以後6ヵ月間の課税売上高または給与支払額が1000万円を超えた場合、第2期目の消費税納税義務は免除されません。
リエ「なるほど。ところで取締役は何名必要ですか?」
黒田「取締役会を設置する場合は、3名以上の取締役と1名以上の監査役が必要になります。ただ、発行済み株式の全てを譲渡制限付き株式(株主総会の承認を得なければ持株を他へ譲渡出来ない株式)にすれば、取締役会を設置しなくてもよいので、取締役1名でも会社設立は可能です。取締役の任期は原則2年です。取締役に変更がなくても2年ごとに重任登記が必要になり、その都度費用が発生します。ただ、これも譲渡制限付き株式にすることで取締役の任期を最長10年まで伸ばすことが可能です。」
リエ「株式に譲渡制限を付けた方が都合よさそうですね。」
黒田「はい。よくわからない人が株主になるのを防ぐこともできますので、非上場会社のほとんどが株式に譲渡制限を付けています。」
リエ「決算月は何月がいいのでしょうか?」
黒田「決算月を決めるにあたっては、その業種の繁忙期を避けるという考え方があります。理由としては、繁忙期は利益の変動が大きくなるため、事前の決算予想が難しく、思いがけず利益が大きくなってしまうこともあります。また、業務が忙しくなるため、節税対策等の時間が取りづらくなるからです。先程話した消費税納税義務の免除期間を最大限活用したいのなら、決算月を設立月から最も遅い月にすることです。例えば、8月に設立した会社は7月決算にすることで最大24ヵ月が免除期間となります。」
リエ「ありがとうございました。知人に教えてあげますね。」