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上場有価証券の評価損を損金経理できる場合とは

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リエ「黒田さん、お聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」

黒田「はい。もちろんです。」

リエ「当社は上場企業であるA社の株式を、長期保有目的で所有していますが、ここ1ヵ月で当該株式の時価は、大きく目減りしました。下落幅があまりにも大きく、評価損を損金に落としたいのですが、可能でしょうか?」

黒田「取引所売買有価証券等(企業支配株式を除く)について、その価額が著しく低下し、かつ、その価額が帳簿価額を下回ることになった場合には、評価換えをし、損金経理によりその帳簿価額を減額することにより、当該評価損を、税務上も損金として算入することができます。」

リエ「価額が著しく低下した場合とは、どの程度の下落なのでしょうか?」

黒田「はい。次の(1)と(2)を満たす場合には、価額が著しく低下したとされます。
(1)当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ること、(2)近い将来その価額の回復が見込まれない場合」

リエ「50%相当額の下落は、具体的で分かりやすいのですが、近い将来その価額の回復が見込まれない場合というのは、どう考えたらよいでしょうか。」

黒田「国税庁のQ&Aでは、株価の回復可能性に関する検証について、その判断のための画一的な基準を設けることは困難なことから、法人が過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、税務上その基準は尊重されるとしています。つまり、法人の回復可能性の判断が合理的であれば、その判断は尊重されることになります。」

リエ「ありがとうございます。資料を集めてよく検討してみます。」

黒田「ちなみにですが、回復可能性の判断はあくまでも各事業年度末時点において合理的な判断によって行うものです。よって、翌事業年度以降に株価の上昇等の状況変化があったとしても、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さん、お聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」黒田「はい。もちろんです。」リエ「当社は上場企業であるA社の株式を、長期保有目的で所有していますが、ここ1ヵ月で当該株式の時価は、大きく目減りしました。下落幅があまりにも大きく、評価損を損金に落としたいのですが、可能でしょうか?」黒田「取引所売買有価証券等(企業支配株式を除く)について、その価額が著しく低下し、かつ、その価額が帳簿価額を下回ることになった場合には、評価換えをし、損金経理によりその帳簿価額を減額することにより、当該評価損を、税務上も損金として算入することができます。」リエ「価額が著しく低下した場合とは、どの程度の下落なのでしょうか?」黒田「はい。次の(1)と(2)を満たす場合には、価額が著しく低下したとされます。(1)当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ること、(2)近い将来その価額の回復が見込まれない場合」リエ「50%相当額の下落は、具体的で分かりやすいのですが、近い将来その価額の回復が見込まれない場合というのは、どう考えたらよいでしょうか。」黒田「国税庁のQ&Aでは、株価の回復可能性に関する検証について、その判断のための画一的な基準を設けることは困難なことから、法人が過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、税務上その基準は尊重されるとしています。つまり、法人の回復可能性の判断が合理的であれば、その判断は尊重されることになります。」リエ「ありがとうございます。資料を集めてよく検討してみます。」黒田「ちなみにですが、回復可能性の判断はあくまでも各事業年度末時点において合理的な判断によって行うものです。よって、翌事業年度以降に株価の上昇等の状況変化があったとしても、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません。」
2018.09.14 16:03:01