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契約者と保険料負担者が違う場合の死亡保険金の受取

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リエ「黒田さんにお聞きしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか。」

黒田「どんなことですか。」

リエ「両親の生命保険契約に関することです。保険契約者が母、被保険者は父で、死亡保険金の受取人を母としている保険契約ですが、実際は父の口座から保険料の支払いをしています。仮に父に死亡事故が発生した場合には、死亡保険金の取扱いはどのようになるのですか。」

黒田「保険金は保険料を誰が負担しているかによって課税される税金が変わります。そして保険契約は『契約者』が保険料の支払義務を負うことになります。ご両親のケースで、契約者であるお母様が保険料を負担しているのであれば、保険金はお母様の一時所得となり、所得税が課せられることになります。しかしリエちゃんのお話しでは、被保険者であるお父様の口座から保険料を支払っていますので、税務上では実際の契約者はお父様であるとみなされてしまいます。」

リエ「たしかに父が負担していますので、『契約者』が母ではなく父と判断されると、父が亡くなった場合は、母が受け取った保険金の課税が変わりますよね。」

黒田「はい、お母さまが受け取った保険金に対して相続税が課せられます。」

リエ「保険金は父の相続財産として、母に対して相続税がかかるということですね。」

黒田「そうなります。今回のケースから、違ったもうひとつの考え方もできると思います。」

リエ「どんな考え方ですか。」

黒田「契約者はあくまでもお母様で、保険料は支払の都度お父様からお母様に贈与しているという考え方です。」

リエ「え~、頭の中を整理しますと、母は保険料の負担者に変わるわけですね。そうしますと最初にお話になっていた所得税がかかるということですね。ところで、どちらでも選択できるということですか。」

黒田「いえ。選択するには実体がどうなのかを判断する必要があります。」

リエ「どんな実体ですか。」

黒田「例えば、保険契約をするにあたって、お母様が必要と判断して契約を交わし、保険料の支払が難しいため、お父様に援助してもらうことを了承してもらった。そして、お母様が管理されている名義口座から保険料の引落しをしていること、その口座にお父様から保険料相当額を振り込んでいる形跡があること、さらにお父様もご自分が契約した保険ではないという認識をお持ちになり、年末調整などをする際にこの保険を生命保料険控除に使用していない事実などがあれば、お母様が契約者であると主張できると思います。この場合、贈与税の心配をされると思いますが、お父様から年間振り込まれる金額が贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内であれば贈与税がかかりません。」

リエ「なるほど、これとは反対に父が契約を交わすことを決め、母は父に言われるままに契約書に印鑑を押しただけで、保険料も父が管理している口座から支払っていて、父は年末調整で生命保険料控除に使用しているような状況だと実質的な契約者は父ですよと判断されるのですね。」

黒田「その通りです。所得税と相続税のどちらが有利となるかは、他の所得や相続財産の金額によって異なりますので、どちらが有利になるかを試算して、有利な方に実体を合わせるということもできますので。」

リエ「途中で契約者などを変更することができるのですか。」

黒田「できますよ。その場合は変更前と変更後の保険料を按分して、それぞれ所得税や相続税が課せられることになりますので、負担した保険料の額を明確にしておく必要があります。」

リエ「なるほど分かりました。今のお話を両親に伝え、今後どうするか考えてみます。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さんにお聞きしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか。」黒田「どんなことですか。」リエ「両親の生命保険契約に関することです。保険契約者が母、被保険者は父で、死亡保険金の受取人を母としている保険契約ですが、実際は父の口座から保険料の支払いをしています。仮に父に死亡事故が発生した場合には、死亡保険金の取扱いはどのようになるのですか。」黒田「保険金は保険料を誰が負担しているかによって課税される税金が変わります。そして保険契約は『契約者』が保険料の支払義務を負うことになります。ご両親のケースで、契約者であるお母様が保険料を負担しているのであれば、保険金はお母様の一時所得となり、所得税が課せられることになります。しかしリエちゃんのお話しでは、被保険者であるお父様の口座から保険料を支払っていますので、税務上では実際の契約者はお父様であるとみなされてしまいます。」リエ「たしかに父が負担していますので、『契約者』が母ではなく父と判断されると、父が亡くなった場合は、母が受け取った保険金の課税が変わりますよね。」黒田「はい、お母さまが受け取った保険金に対して相続税が課せられます。」リエ「保険金は父の相続財産として、母に対して相続税がかかるということですね。」黒田「そうなります。今回のケースから、違ったもうひとつの考え方もできると思います。」リエ「どんな考え方ですか。」黒田「契約者はあくまでもお母様で、保険料は支払の都度お父様からお母様に贈与しているという考え方です。」リエ「え~、頭の中を整理しますと、母は保険料の負担者に変わるわけですね。そうしますと最初にお話になっていた所得税がかかるということですね。ところで、どちらでも選択できるということですか。」黒田「いえ。選択するには実体がどうなのかを判断する必要があります。」リエ「どんな実体ですか。」黒田「例えば、保険契約をするにあたって、お母様が必要と判断して契約を交わし、保険料の支払が難しいため、お父様に援助してもらうことを了承してもらった。そして、お母様が管理されている名義口座から保険料の引落しをしていること、その口座にお父様から保険料相当額を振り込んでいる形跡があること、さらにお父様もご自分が契約した保険ではないという認識をお持ちになり、年末調整などをする際にこの保険を生命保料険控除に使用していない事実などがあれば、お母様が契約者であると主張できると思います。この場合、贈与税の心配をされると思いますが、お父様から年間振り込まれる金額が贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内であれば贈与税がかかりません。」リエ「なるほど、これとは反対に父が契約を交わすことを決め、母は父に言われるままに契約書に印鑑を押しただけで、保険料も父が管理している口座から支払っていて、父は年末調整で生命保険料控除に使用しているような状況だと実質的な契約者は父ですよと判断されるのですね。」黒田「その通りです。所得税と相続税のどちらが有利となるかは、他の所得や相続財産の金額によって異なりますので、どちらが有利になるかを試算して、有利な方に実体を合わせるということもできますので。」リエ「途中で契約者などを変更することができるのですか。」黒田「できますよ。その場合は変更前と変更後の保険料を按分して、それぞれ所得税や相続税が課せられることになりますので、負担した保険料の額を明確にしておく必要があります。」リエ「なるほど分かりました。今のお話を両親に伝え、今後どうするか考えてみます。」
2018.08.06 16:20:23