HOME コラム一覧 迷走する競馬の馬券の払戻金の所得区分 その2

迷走する競馬の馬券の払戻金の所得区分 その2

post_visual

 国税庁は、現在、競馬の馬券の払戻金の所得区分(一時所得か雑所得か)に関してパブコメを実施しており、その後所得税基本通達34-1を、もう一度改正する予定とのことである。

 本稿では、これに関係する所得税法の成立ちや現行法の規定ぶりを概観した上で、筆者の所感を述べることとする。

2 現行所得税法の規定ぶり

 現行法の所得分類に関する規定ぶりは、昭和22年の税制改正の後、昭和25年及び昭和27年に追加的改正が行われた以後は、基本的に変化していない。要点は、次のとおりである。

イ 事業所得とは、各種の事業から生ずる所得をいい、事業とは、対価を得て継続的に行うものをいうこととされている。営利性については、明文の規定はないが、列挙された事業の種類からして営利性を有することが前提になっているようである。臨時・偶発的なものであっても、事業に関するものは事業から生ずる所得に含まれると解されているが、不動産所得、山林所得及び譲渡所得は他の独立した所得区分があるため、事業所得に含めないこととされている。

(注)雑所得は、当初「事業等所得」に含まれていたが、昭和25年改正により雑所得として独立した所得区分が設けられた。この改正により、対価を得て継続的に行う業務で事業的規模でないものは雑所得に含まれるという解釈が定着したと考えられる。

ロ 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうこととされている。

 要するに、一時所得を定義するに当たって、利子所得から譲渡所得までの各種所得が先取りされている。その上で更に次の2項目に該当するものが除外されている。
① 営利を目的とする継続的行為から生じた所得(一時の所得であっても当該行為から生じたものはその行為に係る所得に含まれる。)
② 労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有する所得(一時の所得であっても対価性を有するものは他の所得に含まれる。)
(注)一時所得から除外される①及び②に該当する所得は、雑所得に含まれる。

 上記①及び②について留意すべき点は、「営利性」及び「対価性」のあるものを除外していることであり、中でも「営利性」についての問題は、「営利を目的としない」継続的行為から生じた所得が存在するとしたら、それは一時所得に属することになるのではないかという点である。何があるか。公益事業による所得の他には、賭博、パチンコ、競馬などによる所得を連想する。これらは儲からないことを前提にすべて家事費として支出していることになるのだろうか。これらの所得であっても、営利を目的とする所得に該当するケースがあるのか否かが問題となる。

 迷走する競馬の馬券の払戻金の所得区分 その3 は5月31日掲載予定です。

執筆者情報

profile_photo

税理士 小田 満

 国税庁勤務22年の後、町田・横浜南・板橋の各税務署長を経て、平成19年税理士登録。
 主な著書は、「図表でわかる新税制による金融商品課税の要点解説」、「Q&A プロ選手・開業医・芸能人等の特殊事情に係る所得税実務」など多数。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

会計人 税金コラム

記事の一覧を見る

関連リンク

迷走する競馬の馬券の払戻金の所得区分 その1

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2018/img/thumbnail/img_31_s.jpg
 国税庁は、現在、競馬の馬券の払戻金の所得区分(一時所得か雑所得か)に関してパブコメを実施しており、その後所得税基本通達34-1を、もう一度改正する予定とのことである。 本稿では、これに関係する所得税法の成立ちや現行法の規定ぶりを概観した上で、筆者の所感を述べることとする。
2018.05.23 16:18:13