HOME コラム一覧 所得拡大促進税制の改正

所得拡大促進税制の改正

post_visual

リエ「黒田さん。今年の税制改正で所得拡大促進税制が大きく変わったと耳にしたのですが、どのように変わったのでしょうか。」

黒田「所得拡大促進税制ですね。中小企業においては、今回の改正によって、所得拡大促進税制の適用要件が簡素化され、税額控除割合も増加しました。」

リエ「そうなんですか。」

黒田「まず、中小企業における従来の所得拡大促進税制の適用要件は、(1)雇用者給与等支給額が基準年度の雇用者給与等支給額の103%以上であること、(2)雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額以上であること、(3)平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額を超えていることの3つの要件を満たす必要がありましたが、今回の改正によって、適用要件が『平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の101.5%以上であること』のみとされ、簡素化されました。」

リエ「適用の要件がわかりやすくなりましたね。」

黒田「そうですね。また、平均給与等支給額の算定の基礎となる継続雇用者の範囲についても改正されました。従来は、当期及び前期でそれぞれ1回以上給与等の支給がある国内雇用者とされていましたが、改正後は、当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとされましたので、継続雇用者の範囲も絞りやすくなりました。」

リエ「従来の平均給与等支給額の算定は手間がかかりましたが、継続雇用者の範囲が絞られることで負担が減りそうですね。」

黒田「そうなるかと思います。ただし、継続雇用者がない場合には、適用要件を満たさないものとされ、所得拡大促進税制の適用を受けることができません。また、従来の所得拡大促進税制は、設立したばかりの法人の場合、その法人は基準年度がないことから、設立事業年度の雇用者給与等支給額の70%相当額を基準年度の雇用者給与等支給額とみなして、所得拡大促進税制を適用することができましたが、改正後は、設立事業年度について適用を受けることができなくなりました。」

リエ「基本的には、会社を設立して2期目以降から適用を受けることができるんですね。」

黒田「そのようになります。次に所得拡大促進税制の税額控除割合ですが、従来は、雇用者給与等支給増加額の10%とされ、平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の102%以上である場合には、最大12%が上乗せされ、10%~22%の税額控除を受けることができました。改正後の税額控除割合は、給与等支給増加額の15%とされ、一定の要件を満たす場合には、給与等支給増加額の25%の税額控除を受けることができるとされました。この給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。なお、控除税額の上限は法人税の20%であり、従来と変更はありません。」

リエ「給与等支給増加額の25%の税額控除の適用を受けるための要件はなんでしょうか。」

黒田「給与等支給増加額の25%の税額控除の適用を受けるためには、2つの要件を満たす必要があり、(1)平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の102.5%以上であること、(2)教育訓練費が前期の教育訓練費に対して110%以上であること、又はその事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたことのいずれかを満たすこととされています。」

リエ「教育訓練費とは、どのようなものが範囲とされるのでしょうか。」

黒田「国内雇用者の職務に必要な技術又は知識の習得又は向上のための費用とされ、具体的には、教育訓練等のために、自ら教育訓練等を行う場合の外部への講師謝金や施設等使用料など、外部主催の研修等の参加費用などとされています。」

リエ「なるほど。今回の改正で、所得拡大促進税制の適用要件の計算が簡素化されて、税額控除割合も増加しますし、賃上げや教育訓練等に力を入れる中小企業も多くなりそうですね。うちの会社も所得拡大促進税制の適用を受けるために賃上げ期待しちゃいます。」

黒田「ははっ。そうなるといいですね。」

執筆者情報

アサヒ・ビジネスセンター

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

OLリエちゃんの経理奮闘記

記事の一覧を見る

関連リンク

事実婚は扶養に入れる?

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2018/img/thumbnail/img_07_s.jpg
リエ「黒田さん。今年の税制改正で所得拡大促進税制が大きく変わったと耳にしたのですが、どのように変わったのでしょうか。」黒田「所得拡大促進税制ですね。中小企業においては、今回の改正によって、所得拡大促進税制の適用要件が簡素化され、税額控除割合も増加しました。」リエ「そうなんですか。」黒田「まず、中小企業における従来の所得拡大促進税制の適用要件は、(1)雇用者給与等支給額が基準年度の雇用者給与等支給額の103%以上であること、(2)雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額以上であること、(3)平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額を超えていることの3つの要件を満たす必要がありましたが、今回の改正によって、適用要件が『平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の101.5%以上であること』のみとされ、簡素化されました。」リエ「適用の要件がわかりやすくなりましたね。」黒田「そうですね。また、平均給与等支給額の算定の基礎となる継続雇用者の範囲についても改正されました。従来は、当期及び前期でそれぞれ1回以上給与等の支給がある国内雇用者とされていましたが、改正後は、当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとされましたので、継続雇用者の範囲も絞りやすくなりました。」リエ「従来の平均給与等支給額の算定は手間がかかりましたが、継続雇用者の範囲が絞られることで負担が減りそうですね。」黒田「そうなるかと思います。ただし、継続雇用者がない場合には、適用要件を満たさないものとされ、所得拡大促進税制の適用を受けることができません。また、従来の所得拡大促進税制は、設立したばかりの法人の場合、その法人は基準年度がないことから、設立事業年度の雇用者給与等支給額の70%相当額を基準年度の雇用者給与等支給額とみなして、所得拡大促進税制を適用することができましたが、改正後は、設立事業年度について適用を受けることができなくなりました。」リエ「基本的には、会社を設立して2期目以降から適用を受けることができるんですね。」黒田「そのようになります。次に所得拡大促進税制の税額控除割合ですが、従来は、雇用者給与等支給増加額の10%とされ、平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の102%以上である場合には、最大12%が上乗せされ、10%~22%の税額控除を受けることができました。改正後の税額控除割合は、給与等支給増加額の15%とされ、一定の要件を満たす場合には、給与等支給増加額の25%の税額控除を受けることができるとされました。この給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。なお、控除税額の上限は法人税の20%であり、従来と変更はありません。」リエ「給与等支給増加額の25%の税額控除の適用を受けるための要件はなんでしょうか。」黒田「給与等支給増加額の25%の税額控除の適用を受けるためには、2つの要件を満たす必要があり、(1)平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額の102.5%以上であること、(2)教育訓練費が前期の教育訓練費に対して110%以上であること、又はその事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたことのいずれかを満たすこととされています。」リエ「教育訓練費とは、どのようなものが範囲とされるのでしょうか。」黒田「国内雇用者の職務に必要な技術又は知識の習得又は向上のための費用とされ、具体的には、教育訓練等のために、自ら教育訓練等を行う場合の外部への講師謝金や施設等使用料など、外部主催の研修等の参加費用などとされています。」リエ「なるほど。今回の改正で、所得拡大促進税制の適用要件の計算が簡素化されて、税額控除割合も増加しますし、賃上げや教育訓練等に力を入れる中小企業も多くなりそうですね。うちの会社も所得拡大促進税制の適用を受けるために賃上げ期待しちゃいます。」黒田「ははっ。そうなるといいですね。」
2018.04.30 16:18:38