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求人募集を出す際に注意が必要なこと

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 募集・採用については、事業主側には契約自由の原則から採用の自由が認められていますが、まったくの自由というわけではありません。法律で一定の制約が課されており、応募者個人のもつ適性・能力以外のことを採用の条件とすることは許されません。

1.求職者に示す内容

 ハローワークや求人媒体などに求人を出す際は、通常、以下の内容を表記します。
① 事業場の情報(事業所名・所在地・事業内容等)
② 労働条件(仕事内容・労働時間・賃金等、企業側の条件)
③ 応募条件(資格・学歴等企業が従業員に求める条件)
④ 採用選考方法に関する情報
 このうち②「労働条件」については、当然、労働基準法をはじめとする法令を遵守したものにしなければならず、実際の労働条件と相違のない条件を明示する必要があります。
 たとえば、近年、固定残業代にまつわる裁判例が増えていますが、求人票を出す段階から固定残業代の内容を明確にし、求職者に誤解を与えないようにすることが、企業側のトラブル防止策として求められています。
 「若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)」に基づく指針によると、固定残業代(名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金)の制度を導入している企業は、固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示することが求められます。
 また、賃金については、最低賃金法に定められる最低賃金を下回ることは認められません。最低賃金は各都道府県別に毎年9月に決定します。最低賃金を下回っていないか判断する基準としては、毎月支払われる通常の労働時間・労働日の賃金が対象であり、臨時で支払われる賃金や各種手当は除かれます。月給や週によって定められる基本給部分の賃金においても、すべて時給に換算して判断することとなります。

2.年齢制限を定めることは認められない

 現在、従業員の募集および採用の際に年齢制限を定めることは、一部の例外を除いて認められていません(雇用対策法10条)。
 これは、本人の能力・適性があるにもかかわらず、年齢のみをもって応募の段階で排除されることを防ぎ、一人ひとりに均等な働く機会が与えられることを目的としています。少子高齢化が急速に進展するなかで、今後もわが国の就業者数は減少が見込まれており、若者や高齢者など年齢に関係なく就業する機会を与えることが重要となります。

3.性別を理由とする差別は認められない

 男女雇用機会均等法では、従業員の募集および採用に係る性別を理由とする差別を禁止し、男女均等な取扱いが求められています。また、業務上の必要性など、合理的な理由がない場合に、募集・採用において従業員の身長・体重・体力を要件とすること、従業員の募集・採用、昇進、職種の変更をする際に、転居を伴う転勤に応じることを要件とすることは、間接差別として禁止されています。

執筆者情報

社会保険労務士法人A.I.Links

弁護士や司法書士、税理士等の幅広い連携と高い専門性で多くのクライアントと顧問契約を結ぶ「社会保険労務士法人」。
平成17年に設立後、近年、急増する労使トラブルからクライアント企業様を守るため、就業規則他各規程の見直し等をはじめ、種々の人事労務管理に関するコンサルティングサービスを行っている。

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2018.01.22 09:12:56