健康保険の被扶養者についての注意点
今日は社会保険労務士守田先生の訪問日です。
リエ「先生こんにちは。早速ですがお聞きしてもよろしいでしょうか。」
守田「どうぞ。」
リエ「亀井工場長の息子さんが、昨年大学を卒業して就職したので、そのときに健康保険の扶養を外す手続きを行いました。『これで肩の荷がおりたよ』なんて言っていたのですが、勤めて1年ほどでその会社を退職してしまったそうなのです。工場長、残念がっていました。それはさておき、退職された息子さんを再度扶養に追加することは可能でしょうか。」
守田「条件を満たせば可能ですよ。健康保険の被扶養者の条件を確認しておきましょうか。」
リエ「お願いします。」
守田「被扶養者となるための条件は以下の3つです。
1. 主として被保険者の収入により生計を維持されている75歳未満の方
(後期高齢者医療制度の被保険者とならない方)
2. 対象となる家族範囲(3親等内の親族)の方
3. 被扶養者となるための収入要件を満たす方
このうち、2の家族範囲には被保険者との同居が条件の人と別居でもよい人に分かれますが、息子さんであれば同居でも別居でも大丈夫です。同居・別居については(※1)を参照してください。」
リエ「3の収入要件というのは年収130万円未満のあれですよね?」
守田「そうです。ただ、年収が130万円未満であっても、被扶養者であると認定されない場合もあります。被扶養者となるための収入要件を詳細に見てみます。
同居の場合 年間収入が130万円未満 かつ 被保険者の収入の2分の1未満
別居の場合 年間収入が130万円未満 かつ 被保険者の仕送りがその対象者の年間収入を上回ること」
リエ「ということは、同居の場合、被扶養者となる人の収入が130万円未満でも、被保険者の収入の2分の1以上ある場合は、条件を満たさないということになるのでしょうか。」
守田「そういうことになります。ただ、協会けんぽの場合は、このようなケースであっても被保険者の収入で生計を維持していると認められれば、被扶養者となることもあるとしている一方、健康保険組合の場合は厳格に判断されているようです。」
リエ「なるほど。」
守田「また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。工場長の息子さんは会社を退職されたということですので、失業保険を受給されるかもしれません。失業保険の日額が3611円以上(※2)である場合、受給中は条件を上回る収入があるとされるため、被扶養者となることはできませんので、注意が必要です。」
リエ「130万円未満の親族であれば被扶養者になれると思っていました。細かい条件についても確認が必要ですね。ありがとうございました。」
※1 日本年金機構HPの「従業員が家族を不要にするときの手続き」 http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-01.html
※ 2 130万円÷12ヵ月÷30日=3611円