相続時精算課税制度と小規模宅地の特例の関係
黒田さんの監査も終わり、リエちゃんと談笑しているところに田中社長がやってきました。
田中社長「黒田さん、個人的なことなのだけれど、少しだけ質問してもいいかな?」
黒田「はい。もちろんです。どのようなことでしょうか。」
田中社長「最近、自分の相続対策を考えていてね。セミナーに行く機会も多いのだけれど、相続時精算課税制度(以下、精算課税)というのがあるそうじゃないか? 検討しているのだけれど、注意点を教えてほしいんだ。」
リエ「精算課税は、贈与者ごとに2500万円の控除枠が設けられているので、一度に多くの財産を贈与できますが、贈与者の相続時には、対象となった財産を持ち戻したうえで相続税の計算を行うんですよね。」
黒田「その通りです。贈与時に課税が完結するわけではなく、贈与者の相続時までその影響を及ぼすため、注意をしなければなりません。」
リエ「えーと、他に気を付けるのは、精算課税に係る贈与者からの贈与については、その後は、暦年課税で計算することができない。とか、持ち戻し計算を行う際の評価額は、贈与があったときの価額で行う。などがあったと記憶しています。」
黒田「その通りです。そのほか、意外に見落とされてしまうのが、精算課税により贈与された財産には、小規模宅地の特例が使えないという点です。」
田中社長「それは、影響が大きいなぁ。」
黒田「はい。精算課税は、そもそも贈与に対しての課税方式です。相続時の持ち戻し計算では、相続又は遺贈により財産を取得したわけではありませんので、当該資産について小規模宅地の特例を使うことはできません。
もちろん、精算課税には、一度に多額の財産を贈与できるというメリットがあります。ただし、自宅や賃貸物件などに精算課税を適用する場合は、小規模宅地の特例との関係にも注意して、総合的に判断をする必要があります。」
田中社長「黒田さん、ありがとうございます。大変勉強になりました。じっくり検討してみます。」