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純山林評価

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 市街地山林は、相続税の財産評価上では、原則、近隣の宅地の価額を基に宅地造成費に相当する金額を控除して評価額を算出する「宅地比準方式」により評価します。
 しかし、不動産とはそもそも個別性の強い資産ですから、市街地山林もこれにもれず、高低差等の関係で宅地化が困難であるもののほか、いわゆる「開発残地」のように、急傾斜地等で宅地化が見込めず、開発行為そのものが物理的に不可能なものも存在し、宅地比準方式を適用すること自体に合理性が認められない場合、すなわち「宅地への転用が見込めないと認められる場合」があります。
 このような場合の山林の価額は、近隣の純山林の価額に比準して評価することとなります。

宅地化が見込めない市街地山林の判定

 宅地への転用が見込めない市街地山林か否かは、①経済合理性の観点から判断する場合②形状、高低差等の物理的な観点から判断する場合等が考えられますが、今回は税理士先生からの質問が多い①の経済合理性の観点から判断する場合についてご説明いたします。

【経済合理性の観点から判断する場合】

 原則、宅地比準方式により評価した市街地山林の価額(近隣の宅地の路線価に基づく価額を基に税務上の宅地造成費に相当する金額を控除して求めた評価額)が純山林としての価額を下回る場合には、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない市街地山林に該当すると考えられます。

 ただしこの場合、その判断に当たって採用する造成費は、国税庁が定める宅地造成費金額表(表2は東京国税局の平成27年分)のうち、市街地農地等の評価に係る傾斜地の宅地造成費となります。

 しかし、当該造成費は、土地の傾斜度によって一律に割り切って定められたものであることから、傾斜度20度以上の土地の場合であっても、表中で一番高い39,100円/㎡の造成費を採用せざるを得ないこととなります。よって、実際には、宅地比準方式により評価した市街地山林の価額(近隣の宅地の価額を基に宅地造成費に相当する金額を控除して求めた評価額)が純山林としての価額を下回ることは、特に、地価が高い首都圏においては、あまり見られません。従って、国税庁が定める判断基準によると、純山林評価に該当しない市街地山林もあります。

 しかしながら、当事務所においては、不動産鑑定士の立場から、「このような土地については鑑定評価上の宅地見込地としての評価手法を準用し、その結果、合理性がないと判断される場合には、純山林評価をすべきである」と考えています。現実に、当事務所ではこのような考えに基づき、財産評価の規定に基づく原則評価を行った結果、評価額が純山林としての価額を下回らない場合であっても、宅地見込地としての評価手法を準用し、経済合理性が認められないと判断されるものについては、純山林評価を行い、税務署から認められています。具体的には以下のように判断を行います。

①開発想定を行う

 まず、評価対象の形状、高低差、接道状況等を考慮し、宅地化するための開発想定を行います。当事務所では、下記図1のような開発図面を評価書に添付しております。
[図1]

②分譲収入の査定

上記開発想定を前提に、区画割後の各画地の形状、規模、方位、接道状況等を考慮し、宅地としての評価を行います。それらを合算して、分譲収入の総額を査定します。なお、この場合の分譲収入は路線価ベースではなく、あくまでも時価ベースとなります。

③造成費の査定

想定した開発計画に基づき、実際に必要とされる造成費を見積もります。評価額が純山林価額を下回るかどうかの判断で特に重要なのが造成費の査定ですので、当事務所においては、造成専門業者に依頼し、図2のような見積書等を評価書に添付しております。

④評価額の査定

 以上のように求められた分譲収入から造成費のほか、さらに、標準的と認められる販売費及び一般管理費並びに業者利益等を控除し、評価額に辿り着きます。この価額がマイナス又は、純山林価額を下回る場合には、純山林評価を行うこととなります。 
 市街地山林につき、純山林評価を行うと、その節税効果は絶大ですが(首都圏では、路線価評価の95%以上の減額となることが多いです)、仮に、税務署に否認された場合の過少申告加算税等のリスクも大きいので、特に「経済合理性の観点に係る判断」の結果、純山林評価を行う場合には、慎重を期す必要があります。判断に迷われる場合には、当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。

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執筆者情報

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沖田豊明

沖田不動産鑑定士・税理士事務所

埼玉県川口市にて平成11年に開所して以来、不動産オーナー様の相続案件に特化してまいりました。土地評価についてお悩みの税理士先生のための税理士事務所として、税務のわかる鑑定士として、同業者の皆様方と協業して、不動産オーナー様の相続問題解決に日々取り組んでおります。

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2017.06.29 10:49:22