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契約書作成に伴う留意点など

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1 はじめに

 今回は契約書を作成する際に一般的に留意すべき点をご説明いたします。
 このコラムを読まれている税理士・会計士の皆様の多くは、顧客の税務等についての相談に乗るに際し、合わせて何らかの(特に税務には直接関係のない分野に関する)契約締結ないし契約書作成に関し質問等を受けた経験がおありと思います(弁護士であれば、逆に税務に関するご質問を受けることがあり、私の場合は、安易に回答するのではなく必ず税理士の先生をご紹介することにしています)。
 明らかに弁護士等へ相談すべき契約内容である場合はその旨伝えれば良いですが、問題はそこまでの労力や費用をかけるほどでもない、若しくはかけるべきか判断が困難な場合です。
 本コラムでは、このような場合に留意すべき点や弁護士等へ相談するか否かの判断のポイントを簡単にご説明いたします。

2 契約書が有する機能について

 契約書は、端的に言えば、契約当事者間の合意内容を書面化したものであり、特に書式等は法定されておりません。内容面についても、法定事項が記載されている場合以外は何を記載するのかも当事者の自由です。であるからこそ、どういった内容の契約書を作成するかが極めて重要になります。
 契約書は契約内容確認機能、紛争予防機能、(紛争化した場合の)立証機能等を有しており、契約書作成の際にも当該機能を意識すべきです。例えば、実際の契約内容と異なる内容の契約書は、どれほど労力をかけても無意味であるばかりか、特に紛争化した場合は上記立証機能により有害ですらあります。
 また、少なくとも契約書を作成する時点で、将来的に紛争が発生することを予見ないし期待することは基本的にないでしょうから、作成時点で特に重要なことは、契約内容を明確化し、紛争発生を防ぐ、すなわち契約内容確認機能、紛争予防機能であると考えます。

3 契約書作成の場面において留意すべきこと

 契約書作成の際には、一般的に最低でも以下の点に留意してください。

(1)契約当事者及び契約の目的が明確であること
(2)文章ないし文言の意味が平易かつ理解しやすいものであること
(3)内容が適正であること
(4)当該契約類型における法律上の要件を満たしていること

 これらは全てすでに述べた契約書の内容確認機能、紛争予防機能を十分に発揮するための留意点です。いずれについても不十分であると、契約書の作成がむしろ紛争発生に繋がってしまうことになりかねません。例えば、当事者間で契約書上の文言の意味が異なって認識されていれば、その時点ですでに将来的な紛争発生の兆しが芽生えていると言わざるを得ません(上記(2)の問題)。
 勿論、契約書の具体的な内容として、表題、印紙、権利義務の内容、条件・期限、解除・損害賠償、準拠法・合意管轄等の様々な要素を明確に定める必要がありますが、文量の関係で割愛させていただきます。

4 弁護士等へ相談するか否か判断する際のポイント

 契約書作成について、弁護士等の専門家に相談、依頼することを勧めるタイミングは非常に難しいと思います。ここでは、その際の判断基準となるポイントを簡単にご説明しますので、参考になれば幸いです。基本的には当該契約の複雑さや規模、特殊性、すなわち、

①定形的か非定形的か
②契約内容となっている金額等の大小
③契約内容が特殊ないし専門的なものか否か
④契約に関与する当事者の数の大小
⑤契約当事者間の関係が良好か否か(これまで紛争が生じたことがあるか)
⑥契約相手方の素養、能力

等の要素を考慮して判断していただければと思います。
 例えば、当該契約が、単純な売買契約ではなく、他の契約を組み合わせた複合的な契約である場合、おそらくは一般的な売買契約の書式では対応できません。また、そもそも業務委託契約のように、一般的な類型にすんなり当てはめるのが困難な契約もあります(いずれも上記①の問題)。また、過去に一度でも紛争が生じた経験のある相手方当事者との契約であれば、仮に定型的な契約類型であっても、基本的には弁護士等へご依頼された方が無難でしょう。
 勿論、ここで述べたことはあくまで一般論、形式論に過ぎません。将来的に紛争が生じた場合のリスク等と比較すれば、結局のところ、少しでも契約内容に特異な点、気になる点がある場合には、積極的に弁護士等へ相談されることをお薦めいたします。

5 さいごに

 誤解なきようにあえてお伝えすれば、本来、いかなる契約締結ないし契約書作成であっても、すべからく弁護士等へ相談すべきです。それだけ契約は千差万別で複雑なものであって、それによって生じるリスクを予測することも困難であり、場合によっては契約によって生じた損害が膨大なものになり得るからです。しかし、他方でそれはあくまで理想論に過ぎず、契約書作成にかかる費用や時間、労力を可能な限り抑えたいとの要望もまた事実であり、十分に尊重すべき価値観です。
 皆様は日々そういった相反する事情の狭間で、迷いつつ業務を行われていると思います。そのような皆様におかれて、本コラムが少しでも何らかのお役に立つことを切に願っております。

執筆者情報

代表社員・弁護士 関 五行

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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2017.05.25 11:18:51