4.金融機関の企業評価基準


 以上を総括すると、金融機関としては法律の期限が到来する、しないに係わらず、金融監督指針という「指導要領」に基づき取引企業を厳格に評価する体制に変化するのは確実であるが、本音の部分では「如何に対応すべきか」明確な指針が定まっていないというのが現状であろう。つまり、金融円滑化法により何等かの方法で「貸出金に対して優遇措置を設けた取引先」に関しては、今年度内中に、「図−3」の基準により具体的な対応方針を定めなければならない状況にあるのだ。


【図−3】
図−3


 金融機関は、経営者が主体的に経営改善努力を行っているか、結果として、将来改善する兆しが見えるかを評価するが、その際に経営者との信頼関係ができているか否かが重要な判断ファクターとなる。金融円滑化法による支援を受けている企業は第一に金融機関との関係見直しを図ることが重要であり、経営者自身で改善する方法論を考えなければならない時がきている。

 金融機関による業績不振企業に対する対処方法として考えられるものには大きく「再生型スキーム」と「クローズ型スキーム」に分類され、企業の置かれている状況によって手法は異なるが、金融機関側が「支援するか」「支援を見直すか」を判断する際のポイントとしては「図−4」のとおり4つの要因が考えられる。


【図−4】
図−4


 第一の事業実態とは、事業により黒字化を実現できるか否かが重要となる。本業による収入と支出の差がプラスになる経営を実現できることが大前提であり、まずは営業キャッシュフロー(CF)をプラスにする改善計画を立案できるか否かが判断ポイントいえる。最終的には営業CF+投資CFがプラスになることが理想であるが、まずは本業での資金収支がプラスになる事が必要であり、事業計画立案の上では最も重要視されるポイントである。

 第二の経営者意欲とは、経営者が会社を存続させるという強い意志を持っているか否かがポイントなる。特に、業績が低迷している場合、その要因を的確に見極め経営者自身が率先して改善する方策を考え実践しているか否かが問われる。業績悪化の原因を「景気が悪い」「業界が低迷している」「ロケーションが悪い」「所詮事業規模が小さい」「大きな企業には敵わない」等外的要因のせいにする経営者は評価されない。自助努力をする姿勢を示すことが重要である。

 第三の信頼関係とは、メインバンクかそうでないかには関係なく、金融機関とのリレーションが出来ているか否かが重要であり、金融機関が必要とする情報に関しては適宜適切に開示する努力をする事が大切となる。業績低迷を克服するための改善策を考える上でも、正確な情報が無ければ金融機関側としては適切に評価しアドバイスを行う事もできない。常日頃から、会社の方針やビジョン、業績に関する情報を提供するとともに、金融機関側の運営方針や考え方を入手する事が重要である。

 第四の銀行経営への影響度とは、企業側の努力というより金融機関側の都合が大きく影響する。融資金額が大きればそれだけ金融機関の決算に与える影響も大きい為、金融機関側の支援も必然的に厚くなるが、反面、決算に与える影響が小さい場合は、あまり重要視されないケースもある。また、企業としての地域経済への影響度や、経営者の地域行政や経済活動への係わり度合いという観点から間接的に重要性を評価するケースもあるが、自社の金融機関経営への影響度はどれだけあるのか見極めておくのも重要な要素と言える。

 基本的に、第一、第二、第三の要素が満たされていれば、金融機関経営への影響度が低くても相談に対する姿勢は良好なものになるのが一般的である。経営者自身が「業績低迷の要因」を明確に理解し説明できるとともに、経営改善する方針を明確に打ち出すことが大事で、それを理解してもらうためにも日頃からの取引関係を良好にする対応を心掛けている姿勢を示すべきであろう。
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