2.金融監督指針による指導


 しかし、金融業界を監督する金融庁が金融機関の経営内容を指導するものに「金融監督指針」という指導要領があり、地域金融機関は中小企業金融の役割を円滑に担う事を目的に「企業を評価する基準」と「支援の方法」について定められているが、昨年、金融円滑化法の期限延長に関連して内容の一部が改訂されている。

 この改訂により考慮すべきポイントとなるのが、金融機関が中小・小規模企業を支援する際の目安である「ソリューション提案(図−2)」を実施する基準の捉え方として、対象とする企業の事業内容を「持続可能性があるか否か」見極めなさいという点が追加されたことである。


【図−2】
図−2


 事業の持続可能性が見込まれない取引先に対しては、慎重かつ十分な検討を行ない債務者に理解を得た上で債務整理を前提とした対応策をとるようにと指導された点で、いわゆる「クローズド型の支援スキーム」と言われるもので「出口戦略」といわれる所以であろう。

 金融監督指針の中で謳われている「出口戦略」の本来の考え方は「経済環境の悪化により経営が厳しく借入金の返済が困難な中小企業については、経営の抜本的改革を実現することで再生を図る、そのために必要な再建計画を策定し、借入金の返済負担が大きい場合は優遇することで、再建計画の実行を側面支援し企業の再生を図る」ことであるはずだが、今般示されているソリューション提案の方法論については、ある意味、マーケット市場において、存続していい企業と存続することが難しい企業があった場合、メリハリをつけて対応し、延長された1年間の期間内に企業実態を見極め厳正な対応をとるよう求められている。

 「信頼関係の構築が困難な債務者(企業)」、「金融機関からの真摯な働きかけにもかかわらず財務内容の正確な開示に向けた誠実な対応が見られない債務者」等は債権保全の必要性を検討し、適切かつ速やかな対応を実施することという点も指摘されており、「企業の実態を適切に評価し、持続可能性のある企業に対しては積極的に支援を行う」というスタンスよりも「回復の見込のない企業は市場から退場するよう選別を行う」スタンスに変化する可能性が高い点が最大の問題といえる。
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