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2つの処分の取消しを求めることに訴えの利益はないと判示

 特例民法法人から一般財団法人へ移行した法人の減価償却額の計上の誤りを理由とする更正の請求を巡って、更正処分の対象となった法人税等に係る通知処分の取消しを求めることに訴えの利益があるか否かの判断が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、同一の法人税の納税義務に関わる2つの処分の取消訴訟が別個に係属することにより生ずる審理及び判断の重複又は抵触を避けるためにも、別個に更正の請求に理由がない旨の通知処分を争う利益は有しないと判示、納税者側の訴えを斥けた。

 この事件は、特例民法法人から一般財団法人へと移行した法人が、法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁から有価証券譲渡益の計上漏れを理由とする更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたのが発端となった。

 そこで法人側が、増額更正部分及び賦課決定処分の取消しを求め、原処分庁に対して法人税等に係る減価償却額の計上誤りを理由とする更正の請求をしたところ、いずれについても更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、通知処分の取消しを求めるとともに、更正処分のうち有価証券譲渡益の計上漏れを理由とする増額更正部分及び減価償却額の計上の誤りを理由とする減額更正処分がされるべき部分並びに賦課決定処分の取消し、通知処分のうち更正処分の対象とされていない法人税等の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 法人側は、更正処分対象法人税等については更正処分等がされるとともに、各事業年度の法人税等の更正の請求に対して通知処分がされた結果、その双方の処分の取消しを求めているところであり、 更正処分対象法人税等通知処分の取消しを求めることについて訴えの利益が否定されることはないと主張した。

 これに対して判決は、増額更正処分と更正の請求に理由がない旨の通知処分は、手続的には別個独立の処分であるが、いずれも法人税の納税義務の確定に関わる処分であるところ、更正の請求に理由がない旨の通知処分は申告された税額の減少のみに関わるのに対し、増額更正処分は課税要件事実を全体的に見直し、申告に係る税額を含めて全体としての納付すべき税額の総額を確定するものであって、実質的には申告に係る税額を減額しないという趣旨も含むものであるから、両者が同一の法人税の納税義務について行われた場合、増額更正処分の内容が更正の請求に理由がない旨の通知処分の内容を実質的に包摂すると指摘。

 その上で、増額更正処分と更正の請求に理由がない旨の通知処分がされた場合、税額等を争う納税者はこれらの処分の前後を問わず、増額更正処分の取消しを求める訴えを提起して更正の請求に理由がない旨の通知処分の違法も併せて主張して争うことにより、更正の請求に係る税額を超える部分の取消しを求めることができ、税額の全体を争うことができるのであるから、別個に更正の請求に理由がない旨の通知処分を争う利益はないという解釈を示した。同一の法人税の納税義務に関わる2つの処分の取消訴訟が別個に係属することにより生ずる審理及び判断の重複又は抵触を避けるためにも相当であるという判断からだ。

(2023.02.17東京地裁判決、令和元年(行ウ)第539号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2023.08.28 16:12:34