役員給与に不相当に高額な部分はないと判断、原処分を取消し
特例有限会社が法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対して支給した役員給与の額に不相当に高額な部分の金額があるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、取締役の報酬金額に対する決定書に記載された金額は、取締役に対する給与の額の積算根拠にすぎず取締役の給与に係る形式基準限度額とは認められないと判断、原処分の全部及び一部を取り消した。
この事件は、いわゆる特例有限会社(審査請求人)が法人税の所得金額の計算上損金の額に算入した取締役に対する役員給与の額について、原処分庁がその給与の額には不相当に高額な部分の金額があり、その金額は損金の額に算入されないなどと判断、法人税等の更正処分等を行ってきたことから、請求人がその給与の額に不相当に高額な部分の金額はないと反論、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、各取締役が受けるべき報酬の割当額の決定を一任された代表取締役が作成した「取締役の報酬金額に対する決定書」に記載された報酬金額は、法人税法施行令(令和3年政令第39号による改正前のもの)70条(過大な役員給与の額)1号ロが定める「金銭の額の限度額」(形式基準限度額)に当たり、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対してこれを超えて支給された金額は不相当に高額な役員給与に該当する旨主張して、審査請求の棄却を求めた。
これに対して裁決は、取締役が法人税法上の使用人兼務役員に該当しないことについて互いに争いはないため、形式基準によって役員給与の額に不相当に高額な部分の金額があるか否かの判定に際しては、取締役に係る形式基準限度額が具体的に月額として定められた事実があるか否かに争いがあったため、その事実関係を検討した。
その結果、特例有限会社の代表取締役は、取締役に対する役員給与を取締役分と使用人分を勘案してその合計額を支給額として決定していると認定した上で、取締役の報酬金額に対する決定書に記載された金額は取締役に対する給与の額の積算根拠にすぎず、取締役の給与に係る形式基準限度額とは認められないことから、取締役に対する給与の額に不相当に高額な部分はないと判断、原処分庁側の主張を斥けた。
つまり、法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対する役員給与について、請求人である特例有限会社の代表者が作成した書面における取締役の役員報酬として記載された金額はその算出過程及び書面の作成過程から、その取締対する給与の積算根拠にすぎず、いわゆる形式基準限度額には当たらないと審判所側が判断したことがポイントになった事例である。
(2022.07.01国税不服審判所裁決)
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