タックスヘイブンに資産移転 富裕層一族が52億円申告漏れ 越境贈与に「ダブル課税」も
神戸市に住む男性と国外に住む親族らが、税率の低い海外に設立した会社で資産を運用した利益を申告していなかったなどとして、大阪国税局が約52億円の申告漏れを指摘していたことが分かった。過少申告加算税を含めた追徴税額は計約18億円に上り、すでに全額が納付されているという。
追徴課税を受けたのは、不動産関連の会社を経営している、神戸市に住む50代の男性と、台湾に住む親族ら数人だ。男性らは、亡くなった別の親族から相続した海外の上場企業の株式などの資産について、「タックスヘイブン」と呼ばれる海外の税率の低い国や地域に会社を設立し、移していた。男性らはこの会社を通して株式の配当金などを受け取っていたという。
男性らに適用されたのは、タックスヘイブンを通じて行われた税逃れを対象とする「タックスヘイブン対策税制」だ。同税制では、著しく税率の低い国に子会社を設立して利益を移転したときに、親会社の所得に合算されて課税される。
しかも男性は親族に資産を贈与したにもかかわらず、親族が贈与税の申告をしていなかったことも明らかになった。有価証券1億円以上を保有する国内居住者が海外の親族に贈与や相続をすると、「国外転出時課税制度」によって含み益に所得税が課される。また資産を受け取った側も贈与税の対象となり、一度の財産の移転に対して二度の課税がされてしまう。
国境を超えた資産移転が増えている現状を受け、国税当局は富裕層の国外資産に対する監視の目を強めている。今回の男性も、富裕層にターゲットを絞った調査の過程で、台湾にある上場企業の株式を相続し、国内外で多額の資産を保有していることを把握したという。
提供元:エヌピー通信社