HOME ニュース一覧 仮装・隠蔽の事実を否定、重加算税の賦課決定処分を取消し

税ニュース

仮装・隠蔽の事実を否定、重加算税の賦課決定処分を取消し

 法人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことを巡って、法人側に仮装又は隠蔽に該当する事実があったか否かの判断が争われた事件で国税不服判所は、法人側に仮装又は隠蔽に該当する事実はなかったと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

 この事件は、太陽光発電関連事業等を営む法人(審査請求人)が、法人税等及び消費税等の期限後申告書を提出したところ、原処分庁側が法人側に隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為があると認定、法人税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端。そこで法人側が、調査手続きに賦課決定処分の取消事由となる違法があり、また隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為はない旨主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 法人側が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて原処分庁側は、法人には、1)申告すべき所得金額が発生しており、申告が必要であるとの認識があった、2)事業に関する書類を段ボール箱に入れて保管していたにもかかわらず、税務調査の際に提示せず、法人の代表者が事業に関する帳簿や書類は破棄した旨申述した、3)多額の売上げが入金された預金口座に係る通帳を提示しなかった、さらに4)総勘定元帳等の帳簿を作成しなかった――ことなどを理由に挙げ、国税通則法68条2項(重加算税)に規定される「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張して、審査請求の棄却を求めた。

 これに対して裁決はまず、法人には利益が出ており、申告が必要であるとの認識があったことは認められるものの、帳簿を作成していなかったことそれ自体は隠蔽とも仮装とも言えない。また、法人の代表者は税務調査の際に一定の書類を提示しているところ、調査の際に提示しなかったという段ボール箱の中に特段重要な書類があったという証拠はなく、代表者の書類を破棄した旨の申述については、提示した書類以外にいかなる書類が存在し何を破棄したのか明らかではない。さらに、口座に係る通帳を提示しなかったことは認められるものの、その口座以外の5つの口座に係る預金通帳は提示しており、その中にはその口座と同じ銀行、支店の法人名義の別の口座が含まれていたことなどからすると、通帳の存在を失念するなどして提示しなかった可能性も否定できないと指摘した。

 これらの事情を踏まえれば、法人側に隠蔽、仮装と評価すべき積極的な行為が存在し、これに合わせた無申告行為があったとは認められず、また無申告行為が、当初から課税標準額及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合に当たるとも評価することはできないとして、法人側に「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

(2022.07.01 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



この記事のカテゴリ

関連リンク

インボイス登録申請書提出に当たり注意事項に留意!

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2023/img/img_kokuzei_01_s.jpg
 法人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことを巡って、法人側に仮装又は隠蔽に該当する事実があったか否かの判断が争われた事件で国税不服判所は、法人側に仮装又は隠蔽に該当する事実はなかったと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。 この事件は、太陽光発電関連事業等を営む法人(審査請求人)が、法人税等及び消費税等の期限後申告書を提出したところ、原処分庁側が法人側に隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為があると認定、法人税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端。そこで法人側が、調査手続きに賦課決定処分の取消事由となる違法があり、また隠蔽又は仮装及び偽りその他不正の行為はない旨主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。 法人側が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて原処分庁側は、法人には、1)申告すべき所得金額が発生しており、申告が必要であるとの認識があった、2)事業に関する書類を段ボール箱に入れて保管していたにもかかわらず、税務調査の際に提示せず、法人の代表者が事業に関する帳簿や書類は破棄した旨申述した、3)多額の売上げが入金された預金口座に係る通帳を提示しなかった、さらに4)総勘定元帳等の帳簿を作成しなかった――ことなどを理由に挙げ、国税通則法68条2項(重加算税)に規定される「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった旨主張して、審査請求の棄却を求めた。 これに対して裁決はまず、法人には利益が出ており、申告が必要であるとの認識があったことは認められるものの、帳簿を作成していなかったことそれ自体は隠蔽とも仮装とも言えない。また、法人の代表者は税務調査の際に一定の書類を提示しているところ、調査の際に提示しなかったという段ボール箱の中に特段重要な書類があったという証拠はなく、代表者の書類を破棄した旨の申述については、提示した書類以外にいかなる書類が存在し何を破棄したのか明らかではない。さらに、口座に係る通帳を提示しなかったことは認められるものの、その口座以外の5つの口座に係る預金通帳は提示しており、その中にはその口座と同じ銀行、支店の法人名義の別の口座が含まれていたことなどからすると、通帳の存在を失念するなどして提示しなかった可能性も否定できないと指摘した。 これらの事情を踏まえれば、法人側に隠蔽、仮装と評価すべき積極的な行為が存在し、これに合わせた無申告行為があったとは認められず、また無申告行為が、当初から課税標準額及び税額等を法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合に当たるとも評価することはできないとして、法人側に「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったとは認められないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。(2022.07.01 国税不服審判所裁決)
2023.04.10 16:17:23