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事業者に正当な理由は認められないと判示、控訴審判決を破棄

 事業者が消費税等の確定申告の際に課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことに、いわゆる「正当な理由」があるか否かの判断が争われた事件で最高裁(安浪亮介裁判長)は、法人側の正当な理由を認めた控訴審の判決内容を破棄、事業者としてはそうした取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったと認めることはできないとした控訴審の判決内容を破棄、正当な理由があるとは認められないとの判決を言い渡した。

 この事件は、不動産のいわゆる買取再販売等を行う法人が、3課税期間において転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物を購入し、これに係る消費税額の全額を各課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、原処分庁がその全額を控除することはできないとして否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分の取消し等を求めて提訴したのが発端となった。

 1審の東京地裁は法人側の請求を否定したものの、控訴審の東京高裁は更正処分を適法と判示する一方で、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなどの措置を講じているとは認められないことから正当な理由があると判断、過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。そこで、控訴審の判決内容を不服とした国側が、その取消しを求めて上告していたという事案である。

 上告審は、原審の判決は是認できないとして破棄した上で、自ら判決を言い渡したわけだが、まず税務当局は、遅くとも平成17年以降、各課税仕入れと同様の課税仕入れを、建物が住宅として賃貸されること(その他の資産の譲渡等に対応すること)に着目して共通対応課税仕入れに区分すべきであるとの見解を採っており、そのことは法人の申告当時、税務当局の職員が執筆した公刊物や、公表されている国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例を通じて一般の納税者も知り得たものということができると指摘。

 その結果、平成17年以降、税務当局が各課税仕入れと同様の課税仕入れを建物が住宅として賃貸されることに着目して共通対応課税仕入れに区分する取扱いを周知するなどの積極的な措置を講じていないとしても、事業者としてはその取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったということができるとも指摘した。

 そうであれば、各申告の際に、法人側が各課税仕入れに係る消費税額の全額を課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことについては、国税通則法65条4項が定める「正当な理由」 があると認めることはできないと判示して、法人側の請求を斥けた。
 結局、控訴審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決における国側の敗訴部分は破棄を免れないとした上で、賦課決定処分の取消請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、 その部分についての法人側の控訴を棄却すべきであるとの判決を言い渡した。

(2023.03.06最高裁第一小法廷判決、令和3年(行ヒ)第260号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 事業者が消費税等の確定申告の際に課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことに、いわゆる「正当な理由」があるか否かの判断が争われた事件で最高裁(安浪亮介裁判長)は、法人側の正当な理由を認めた控訴審の判決内容を破棄、事業者としてはそうした取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったと認めることはできないとした控訴審の判決内容を破棄、正当な理由があるとは認められないとの判決を言い渡した。 この事件は、不動産のいわゆる買取再販売等を行う法人が、3課税期間において転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物を購入し、これに係る消費税額の全額を各課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、原処分庁がその全額を控除することはできないとして否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分の取消し等を求めて提訴したのが発端となった。 1審の東京地裁は法人側の請求を否定したものの、控訴審の東京高裁は更正処分を適法と判示する一方で、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなどの措置を講じているとは認められないことから正当な理由があると判断、過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。そこで、控訴審の判決内容を不服とした国側が、その取消しを求めて上告していたという事案である。 上告審は、原審の判決は是認できないとして破棄した上で、自ら判決を言い渡したわけだが、まず税務当局は、遅くとも平成17年以降、各課税仕入れと同様の課税仕入れを、建物が住宅として賃貸されること(その他の資産の譲渡等に対応すること)に着目して共通対応課税仕入れに区分すべきであるとの見解を採っており、そのことは法人の申告当時、税務当局の職員が執筆した公刊物や、公表されている国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例を通じて一般の納税者も知り得たものということができると指摘。 その結果、平成17年以降、税務当局が各課税仕入れと同様の課税仕入れを建物が住宅として賃貸されることに着目して共通対応課税仕入れに区分する取扱いを周知するなどの積極的な措置を講じていないとしても、事業者としてはその取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったということができるとも指摘した。 そうであれば、各申告の際に、法人側が各課税仕入れに係る消費税額の全額を課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことについては、国税通則法65条4項が定める「正当な理由」 があると認めることはできないと判示して、法人側の請求を斥けた。 結局、控訴審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決における国側の敗訴部分は破棄を免れないとした上で、賦課決定処分の取消請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、 その部分についての法人側の控訴を棄却すべきであるとの判決を言い渡した。(2023.03.06最高裁第一小法廷判決、令和3年(行ヒ)第260号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2023.03.27 15:54:40